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「国家を滅ぼす医学の進歩」に思う

2016-03-15 | 会計・株式・財務
週刊ダイヤモンド3月19日号で「1人年間3,500万円!新抗がん剤が医療を滅ぼす?」という興味深い記事をみつけました。記事に登場する國頭英夫医師は、『新潮45 2015年11月号』で特別寄稿記事「医学の勝利が国家を滅ぼす」を書いた臨床医・里見清一氏と同一人物です。

新潮45 2015年 11 月号 [雑誌]
新潮社


ネット検索をしたところ、里見氏が「デイリー新潮」で概ね「45」と同じような主張をされておりましたのでこちらをご紹介しましょう。

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 【ノーベル賞】「大村博士」受賞は「巨大製薬企業」荒稼ぎへの警鐘――里見清一(臨床医)  <抜粋>

がんの新薬は、一定のペースで認可され続けている。月当たりの平均薬価は、80年代前半が430ドルだったのに対し、2010年代前半は9905ドルと、この間、20倍以上に暴騰したことになる。(中略)
それにしてもがんの薬価はあまりに高くなりすぎた。その凄まじさゆえ、この数年で問題提起を行う医療関係者の声が急速に高まった。

薬価の暴騰が各国にもたらす影響は、保険制度の内容によって異なる。国民皆保険制度のある日本は大変だ。しかも高額な医薬品に対しては、「高額医療負担制度」による還付も受けられる。だから大部分は公費負担である。

 そんな中、肺がんなど多くのがんに効用が認められる大型新薬「オプジーボ」(小野薬品工業が開発)が、日本で承認されつつある。この薬は「キートゥルーダ」と同様の作用を示す免疫療法剤だが、負けずに値段が高く、体重60キロの肺がん患者が1年間使用すれば、3500万円もの費用がかかると計算されている。日本に肺がん患者はおよそ10万人いる。仮にその半分が使用すると仮定しても、1兆7500億円!

 たった一種類の薬を一種類の疾患へ使用するだけで2兆円近くを費消するのだ。現在、日本の国家予算は約100兆円、医療費は約40兆円というのを考えても、とんでもない数字である。もちろんこれで終わりではない。こういうのが次々と出て来るのである。
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こうなってくると単純比較すべき話ではないことは重々分かりつつも、「新国立競技場問題」や「保育所落ちた、日本死ね」どころじゃないですよね。次元が違いすぎます。

もし身近に肺がん患者の方がいらしてお気を悪くされたら大変申し訳ないのですが、誤解を恐れずに申し上げれば、5万人の、数年の延命のために1.7兆円も国家予算を使います? 
限られた国家予算、医療費の中でお金の使い方、ホント、今のうちに抜本的に見直さないとマズくないですか?

翻ってそれは、自己負担増、高額療養費制度の見直し、延命治療の是非、安楽死問題、そして死生観という、
これまでタブーとされてきた問題に向き合わざるを得ないことを意味するのかもしれません。

里見氏は新潮45寄稿をこう締めくくっております。
突き詰めると、我々は、「人間はいつまで生きる(生かされる)権利があるのか」、「人間はいつまで生きる(生かされる)義務があるのか」という問題に直面しているのである。そしてこの難問を我々に突きつけたのは、人類の進歩による「医学の勝利」に他ならない。だから、我々に逃げ道はない。覚悟を決めるときである。

今度の選挙の争点、やはり社会保障のあり方をもっと前面に出すべきではないでしょうか。


参考までに、開発した小野薬品のIR資料を見てみましょうか。
同社初の抗がん剤の上市ということもあって、業績は好調です。

・2015年上期 TOPICS 
・開発パイプラインの進捗状況
業績予想上方修正(収益の牽引役はズバリ、オプシーボ)

しかし、それに反比例するように、気持ちが重たくなっているのは私だけでしょうか。
昔、松任谷由実の曲に「悲しいほどお天気」というのがありましたが、
今後、一部のメガ医薬品メーカーでは「悲しいほど好業績」と揶揄されるのかも知れませんね。

少なくとも「オプシーボ」については、今後もフォローしていきましょう。
またいきます。








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