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金融危機・・・・ならばあの新財務スキーム、脚光あびるかも?

2008-09-18 | 会計・株式・財務
すいません。
ほとんど中身が無いネタが続いているのに昨日は、1,143名様も・・・・。
有難うございます。

ただ、私の海外ネタは競争力が全く無いことを自覚しておりますので、
敢えて国内系のネタを。


まずはAIG。
事実上、米国の国有化ということでおめでとうございます。
かんぽ生命の民営化とは真逆の流れですね・・・。

アリコの保険の新商品で「はいれます」ならぬ「はらえません」
とかギャグを考えていた矢先でしたので、ちょっと残念。


ふと、先日ご紹介したエコノミスト水野和夫氏のいう「日本の転倒性」、
つまり日本がアメリカの後追いではなくて
実はバブルでは17年先行していてアメリカが日本を追いかけている!
という言葉を思い出しました。
一連の動きを見ておりますと、当たってますね。



さて本題。
国内の建設・不動産業者の信用不安に加えて、米国金融危機も飛び火して・・・・と
国内企業さんの資金調達は今後ますます厳しくなるかも。



そんな中、忘れてはいませんか?

いろいろ問題があるとの理由で1年間導入が先送りになった、
あの新制度が確か2008年9月30日に日本でも可能になるはず。
本日はこれをご紹介。



そう、「自己信託」または「信託宣言」。

自己信託とは、委託者が自ら受託者となる信託のこと。

委託者が自己の財産を他人のために管理処分することを宣言
(信託宣言)することによって信託を設定するもの。

平成19年改正で認められましたが、
債権者詐害、分別管理等の問題があり新信託法施行後1年間凍結の憂き目に。



企業や個人が財産を自分に信託できる「信託宣言」に
事業の資産と負債をセットで信託できる「事業信託」をセットすると、
たとえば、こんなこともできるとか。

「企業の不採算部門をリストラする際、一時的に自社に信託して
本体の財務と切り離し、経営が改善したところで信託契約を解消して
本体に復帰させれば事業を再拡大するスピードが高まる。」


この他、理屈の上ではいろんな使い道があるようです。
こちらの方のサイトで分かりやすく図示しております。ご参照ください。

  
税務解説集 自己信託(自己信託の活用)


しかーし、甘い話ばかりではありません。

2年前の拙稿で、自己信託の懸念点をまとめた論考を紹介しておりましたので、
再掲します。


拙稿06年10月6日「集団投資スキーム」を巡る「重大な懸念事項」に思う 
<「企業業会計」2006年11月号 橋上徹氏
「集団投資スキームの法律・会計・開示・監査を巡る動向と課題」論文より>

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■「自己信託」の懸念点

①資産の消滅要件を満たさない可能性が高い

・ 日本の信託では委託者=受託者のケースが通常となっているだけに、
  信託への資産の譲渡については、資産への継続的関与が遮断されない
ことから、支配の移転が認められず、資産の消滅要件を満たさない
と考えられると。

・ しかも、自己信託では財産の移転そのものもない
  (現行法では財産権の移転が信託成立要件であるが、
   改正案では財産移転無くても信託成立)。


②財務諸表の見方が大きく変わりうる

・ 「自己信託宣言」をすることにより、会計対象企業の財産が信託勘定に
転換され、その財産を裏づけとして信託受益権(金融商品取引法上、
有価証券となる)が発行される。

・ この場合、仮に、「資産の消滅要件を満たす」という整理が行われたとし、
 さらに、発行された信託受益権を財務諸表提出会社・連結子会社が引受ける
場合を想定すると、その場合、会計監査の対象となる開示財務諸表には、
 「信託受益権勘定」(金融商品取引法施行後は、有価証券勘定)
として計上される。

 現行、「信託受益権勘定」については、
何が裏づけ財産になっているかについては開示する義務が無い。 

 したがって、例えば、不良資産が裏付け資産となっている場合など、
その実態が開示されず、
 「自己信託」制度の導入により財務諸表の信頼性が損なわれるおそれがある。

 また、信託受益権を、例えば関連会社やその他の関連当事者に
 保有させた場合などで、不良債権・不良在庫や不適切な集団投資スキームが
 その裏付け資産である場合、連結財務諸表には「有価証券信託」と表示される
 のみで、開示の実態を不透明にする。


③信託勘定には会計監査が無い

・ 自己信託における信託勘定には会計監査に関する規定が無く、
  会計監査の対象外。
  仮に、資産の消滅要件を満たすという整理が行われたとすると、
  次の懸念点あり。

・ 改正信託法案99条では受益権の法規を可能としており、
 企業が不良債権など不良資産を自己信託した場合、
 受益権の放棄により、ある日突然、会計監査の対象となる開示財務諸表に
 大きな欠損が表示される可能性がある。

 信託勘定につき会計監査を行い、受益権放棄の可能性を見ながら、
 固有勘定に引当金などを計上することが必要であるが、
 信託勘定への会計監査が制度化されていないため
 問題が生じる可能性ありと。

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その後の制度改正でどこまで問題が解消できたのかは改めて確認する必要が
ありますが、景気悪化などで粉飾のインセンティブは高まるばかり。
新たな粉飾ツールとして乱用される危険性は
ある程度覚悟しておいた方が良いかも知れませんね。

企業さんには失礼ながら、当面、性悪説に立って見るべきでしょうね。
この制度は。



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さて、本日の1曲。


リーマンの経営破綻について、与謝野馨経済財政担当相は

「日本にももちろん影響はあるが、ハチが刺した程度。
 これで日本の金融機関が痛むことは絶対にない。」

と言っておりますが、
蜂アレルギーの人ですと亡くなってしまうケースもあるとか。
この発言、取り消すことにならなければいいのですが。

そんな私には「これが絶対なんて絶対ない!」というフレーズが印象的な、
この曲が浮かんできましたので、ご紹介。


湘南乃風「黄金魂」 <画面は動きませんので、あしからず>  


とにかく「上がれ!」というフレーズが頻繁に出てきます。
証券マンにゲンの良い歌かも。


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1 コメント

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笑ってはいけないけど、笑いました (温故知新)
2008-09-18 14:07:07
アリコの保険の新商品で「はいれます」ならぬ「はらえません」
とかギャグを考えていた矢先でしたので、ちょっと残念。

のパートに大爆笑して、隣のアシスタントから「どうしたんですか?」と聞かれてしまった温故知新です。座布団五枚!
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