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消費税増税論議に思う -トヨタと輸出免税規制-

2005-08-21 | 会計・株式・財務
総選挙に向けて各党のマニュフェストが公表されたが、2大政党のそれを見ると、やはり「消費税増税は避けられない」のであろう。


もし増税となれば、国内景気悪化などが懸念される一方、逆に恩恵を受ける業界・企業群もある。自動車を中心とする輸出企業である。


現行消費税法では、輸出については、ゼロ%税率という手法により、輸出企業に対して消費税の還付を行っている。
この消費税の輸出還付は、GATT - 般協定第3条2項「いずれかの締約国の産品で他の締約国の領域に輸入されるものは、同種の国内産品に直接又は間接に課せられるいかなる種類の内国税、その他の内国課徴金も直接であると間接であるとを問わず課せられることはない」という規定に基づき制度化されたもの。


余り知られていない話であるが、日本を代表する輸出企業は、輸出により多額の消費税の還付を受けている。

企業名    年間還付額(02年)
トヨタ自動車 1,551億円
本田技研工業  864億円
日産自動車   693億円
ソニー     791億円
松下電器産業  669億円
キャノン    479億円
日立製作所   293億円
東芝      375億円
富士通     280億円
三菱重工    239億円
10社合計   6,234億円

この金額は支払をされたもので、全額がそのまま利益となるものではないが、税率が上がれば間違いなく還付額は上昇する。


そういえば数年前、日本経団連は「奥田ビジョン」を公表して、消費税率を2004年度から毎年1%ずつ引き上げ、2014年度までに16%にするように提言している。やはり増税はウエルカムなのである。

しかもトヨタは九州などに新たな製造拠点を設置。輸出にも拍車がかかろう。
税率の上昇とあいまって、還付消費税収入を増やしていく戦略が容易に想像できる。


消費税の視点からだけでも、企業の戦略が読み取れてしまう好例であろう。
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