いつもご覧下さり誠に有難うございます。
さて本日のネタですが、週刊エコノミスト2006.6.20号に掲載されていた
福島大学・阿部教授による論稿のご紹介と簡単なコメント。
折りしも、東洋経済で「台頭!JR百貨店」というテーマで知られざる
流通ビジネス=「駅ナカ」の大特集をしてましたっけ。
――――――――――――――――――――――――――――――
駅ナカと郊外大型店の「課税格差」(荒っぽい抜粋)
・4月中旬、東京都がJRの駅ナカビジネスに対し、固定資産税の課税強化、
との報道。
この趣旨は、鉄道施設として低額に抑えられている固定資産税を、
周辺の商店街並みに引き上げるというもの
・しかし、公平性を問うのなら、駅ナカよりも郊外大型店への課税強化が
重要で先決すべき課題。
・すなわち、 駅ナカ←→駅周辺の小売店
郊外大型店←→中心市街地
といった競合関係を税負担の視点から比較してみると、次の点が言える。
①既存小売店への恩恵。
・駅ナカの回転でマイナスを受けている周辺小売店も、
駅が存立の基盤であり、駅から恩恵を受けている、
・一方、中心市街地の小売店は、新たに出現した郊外大型店に
顧客を奪われるだけ。
②単位面積あたりの宅地評価の格差
・駅ナカは周辺商業施設の3分の1程度との報道
→駅周辺の小売店にとって、格差3倍
・中心市街地は、郊外大型店と数十倍という格差がある場合が少なくないと。
③更地評価の格差
・駅ナカは商業と鉄道の複合用途で、更地の商業用地ではない。
一般的な更地評価でなく、建物などの存在を前提とした「建付地」
と呼ばれる評価が相応しく、更地に比較してかなり減価する。
・郊外大型店にはこのような減価はない。
④建物評価の格差
・駅ナカの施設は構造がしっかりしており
(=経年減価の進行が遅い=評価額が高めに出る=課税額が高めに出る)、
駅前商店街の建物もいろいろなので、格差は余り問題にならない。
・一方、郊外大型店はほとんど鉄骨造り。これは建設費がさほど必要では
なく、耐用年数が鉄骨鉄筋や鉄筋コンクリートよりも短いので、
評価が低めに出る。しかも投資を早く回収でき、撤退も容易。
これに対して、中心市街地は、土地が狭く地価が高い。しかも鉄骨鉄筋
コンクリート造りや鉄筋コンクリート造りが主体。
このため、建物の評価額が郊外よりも5割程度高いと推定。
⑤都市計画税にも格差
・都市計画税は原則として、市街化区域の不動産に課税。
・駅ナカは駅前商店街と条件が同じだが、郊外大型店の中には市街化調整区域
に立地するものがあり、中心市街地との税負担の格差がさらに拡大。
・この後、著者は改正まちづくり3法も切り札にならない、税額格差を放置した
ままの競争は悪平等になる、として「郊外大型店に新税」(例えば駐車場1台
当たり10万円)を課すべき、など主張されております。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
(簡単なコメント)
①税金の観点から郊外大型店の問題を浮き彫りにした点でユニークだと
思いました。
「郊外に進出する」=「地域貢献への意思の薄さ」と手厳しい。
ただ、郊外大型店は地域の雇用の受け皿という側面もあり、住民税の面で間接的
な貢献などがあるもの事実。
ですので、固定資産税などに限定した議論が果たして適切なのかやや疑問は
残りました。
②今回ご紹介した論点から郊外出店規制の賛成派がさらに勢いづく可能性も
あるので留意が必要かもしれません。
というのは、著者は福島大学教授。福島といえば、「商業街づくり条例」など
独自の対策で有名ですよね。ブレーンの方なのでしょうか。
③皆さんがよくご利用される商業施設。
かかっている固定資産税に思いを馳せるのも一興かも。
さて本日のネタですが、週刊エコノミスト2006.6.20号に掲載されていた
福島大学・阿部教授による論稿のご紹介と簡単なコメント。
折りしも、東洋経済で「台頭!JR百貨店」というテーマで知られざる
流通ビジネス=「駅ナカ」の大特集をしてましたっけ。
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駅ナカと郊外大型店の「課税格差」(荒っぽい抜粋)
・4月中旬、東京都がJRの駅ナカビジネスに対し、固定資産税の課税強化、
との報道。
この趣旨は、鉄道施設として低額に抑えられている固定資産税を、
周辺の商店街並みに引き上げるというもの
・しかし、公平性を問うのなら、駅ナカよりも郊外大型店への課税強化が
重要で先決すべき課題。
・すなわち、 駅ナカ←→駅周辺の小売店
郊外大型店←→中心市街地
といった競合関係を税負担の視点から比較してみると、次の点が言える。
①既存小売店への恩恵。
・駅ナカの回転でマイナスを受けている周辺小売店も、
駅が存立の基盤であり、駅から恩恵を受けている、
・一方、中心市街地の小売店は、新たに出現した郊外大型店に
顧客を奪われるだけ。
②単位面積あたりの宅地評価の格差
・駅ナカは周辺商業施設の3分の1程度との報道
→駅周辺の小売店にとって、格差3倍
・中心市街地は、郊外大型店と数十倍という格差がある場合が少なくないと。
③更地評価の格差
・駅ナカは商業と鉄道の複合用途で、更地の商業用地ではない。
一般的な更地評価でなく、建物などの存在を前提とした「建付地」
と呼ばれる評価が相応しく、更地に比較してかなり減価する。
・郊外大型店にはこのような減価はない。
④建物評価の格差
・駅ナカの施設は構造がしっかりしており
(=経年減価の進行が遅い=評価額が高めに出る=課税額が高めに出る)、
駅前商店街の建物もいろいろなので、格差は余り問題にならない。
・一方、郊外大型店はほとんど鉄骨造り。これは建設費がさほど必要では
なく、耐用年数が鉄骨鉄筋や鉄筋コンクリートよりも短いので、
評価が低めに出る。しかも投資を早く回収でき、撤退も容易。
これに対して、中心市街地は、土地が狭く地価が高い。しかも鉄骨鉄筋
コンクリート造りや鉄筋コンクリート造りが主体。
このため、建物の評価額が郊外よりも5割程度高いと推定。
⑤都市計画税にも格差
・都市計画税は原則として、市街化区域の不動産に課税。
・駅ナカは駅前商店街と条件が同じだが、郊外大型店の中には市街化調整区域
に立地するものがあり、中心市街地との税負担の格差がさらに拡大。
・この後、著者は改正まちづくり3法も切り札にならない、税額格差を放置した
ままの競争は悪平等になる、として「郊外大型店に新税」(例えば駐車場1台
当たり10万円)を課すべき、など主張されております。
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(簡単なコメント)
①税金の観点から郊外大型店の問題を浮き彫りにした点でユニークだと
思いました。
「郊外に進出する」=「地域貢献への意思の薄さ」と手厳しい。
ただ、郊外大型店は地域の雇用の受け皿という側面もあり、住民税の面で間接的
な貢献などがあるもの事実。
ですので、固定資産税などに限定した議論が果たして適切なのかやや疑問は
残りました。
②今回ご紹介した論点から郊外出店規制の賛成派がさらに勢いづく可能性も
あるので留意が必要かもしれません。
というのは、著者は福島大学教授。福島といえば、「商業街づくり条例」など
独自の対策で有名ですよね。ブレーンの方なのでしょうか。
③皆さんがよくご利用される商業施設。
かかっている固定資産税に思いを馳せるのも一興かも。