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証券アナリスト対監査法人?  ―監査法人を「監査」したレポートに思う

2006-05-26 | 会計・株式・財務
いつもご覧下さり誠に有難うございます。

最近、勤務先で私のしょぼい顔を見て「ははぁ、ネタに困っているな」と
気を利かせていろいろネタを持ち込んでくれる人が増えて、有難い限りです。
でも、しょぼい顔はいつものことですのでご安心を。


そんな中、仕事の頼りになる相棒、通称「ハカセ君」(オバQに出てくるキャラに
似ているから)がどこから手に入れたのか「このレポート面白いですよ」と見せて
くれたのが、本日ご紹介する外資系証券会社作成の監査法人の分析レポート。


そのうち日経金融新聞の「スクランブル」あたりで取り上げるとは思いますが、
サクッと概要をまとめてみました。その後、コメント。

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5月25日 ドイツ証券レポート
『過去データから監査法人を「監査」してみよう』-

■仮説:監査法人は企業経営者が発表した次期予想利益についても、
公正な見積りをしているかどうかを判断する立場にあるはず

■方法:過去の財務データを利用し、期初の会社計画の経常利益から期末に上方
修正したのか下方修正したのかを調べ、下方修正の発生した企業数の割合
を監査法人別に算出。 
→リビジョン・インデックス(※)を監査法人別に算出

(要は、下方修正のウエイトの高い監査法人は、期初計画時点の予想利益
を余りチェックしてないのではないか、ということ)

 (※)ある年度の個別銘柄の経常利益の修正額(=期末実績-期初計画)を算出
       プラスなら「上方修正」、マイナスなら「下方修正」
    リビジョン・インデックス
       ={(上方修正企業数)-(下方修正企業数)}÷企業総数
    
■検証結果①:2002~2004年度 3年累積
   
監査法人  リビジョンインデックス  下方修正会社数 上方修正会社数 有効データ社数

中央青山  ▲5.2%     815       735       1,550
トーマツ  ▲4.1%     820       755       1,575
4大以外   ▲2.7%     796       754       1,550
新日本    3.5%     764       819       1,583
あずさ    6.1%     600       678       1,278
合計    ▲0.7%    3,795      3,741       7,536



■検証結果②:今年はどうだったのか?

監査法人  リビジョンインデックス  下方修正会社数 上方修正会社数 有効データ社数
4大以外     6.1%     178      201       379
中央青山    8.2%     153       209      362
トーマツ   11.2%     190       238      428
新日本    13.7%     195       257      452
あずさ    15.5%     153       209      362
合計     10.9%     912      1,136     2,048

■結論
 過去4年分の結果を勘案すると、相対的に下方修正の比率が高いグループ
(中央青山、トーマツ、ビッグ4以外)と低いグループ(あずさ、新日本)に
 2分できるようだ。
 銘柄選択の際、「予想の信頼度」という観点を利用することで超過リターンの
 獲得やリスクの事前回避に役立つかもしれない。
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(コメント)

①いつかはこういうレポートが出ると思っていました。
 結果は・・・・・やっぱり、と思われた方も多いと思います。

②ただ、どうなんでしょう?
 「この監査法人だから、下方修正のリスクが少ない/高い」っていう議論には
 少々違和感を覚えます。
 見方次第では、「この監査法人は、業績予想を保守的に入れる会社を
 多くクライアントに抱えている」と言うこともできますからね。

 そもそも、次期利益予想に監査法人はどれだけ口出しできるものなのでしょうか
 ねぇ? ここら辺、実務にお詳しい先生方からコメント頂ければ幸甚です。

③私ならどうするか?
 これを書くとまた企業さんから怒られそうですが、
 
 決算短信の右上に「財務会計基準機構」のマークが「ついていない」会社を
 監査法人別に集計してみる、ってのはどうですか。

 東証でも「上場会社にとっては、適時開示資料に会員マークを掲載することで、
 会計基準の重要性を真摯に考えている会社であることをマーケットにアピール
 する機会」としてマーク掲示を推奨しております。
 
 ですので、折角ですからそれを活用しようってワケです。

 新興企業には非会員が多いと思われますので、このウエイトの高い監査法人に
 とってはつらい結果になるかも。
 確かに新興企業にしてみれば法人会員の年会費20万円は痛いかもしれませんが、
 社会的コストを負担するって姿勢は大事だと思いますけどね。


④まぁ、今回のネタ。多方面から怒りのコメントが来そうですので、
 予め謝っておきます。
「お気を悪くさせて申し訳ありません」。



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8 コメント

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Unknown (ぐうたら)
2006-05-31 08:06:39
最近の状況は知りませんが、次期予想について、特に監査法人がチェックをするというようなことはないのではないかと思います。何か仮定に違和感を感じます。



まあ、明らかな誤植に気付けば会社に伝えることはすると思いますが。

返信する
コメント有難うございました。 (dancing-ufo)
2006-05-31 23:52:39


ぐうたら様



貴重なコメント有難うございました。

やはり、そうでしたか・・・。



となるとこの証券会社のレポート、

勇み足、ってことになるんでしょうね・・・。





でも、そういうアバウトさが許されるのが、

株式アナリストの世界。



ずぼらな私にとって、

うらやましい世界でもあります。









返信する
Unknown (八重洲白黒)
2006-06-01 12:26:11
管理人様ご指摘の通り、

スクランブルではありませんが、今日の日経金融10面に出てましたね。
返信する
Unknown (Unknown)
2006-06-02 11:10:30
将来の事象を監査するというのは不可能に近いんじゃないでしょうか。

最近、退職給付、減損など将来予測を伴わざるを得ないものが増えていますが、特定の項目につき一定の仮定をおいているものと割り切っていると思います。

会社の行動全般の予測となると、仮定が多岐にわたりすぎるのでは?
返信する
コメントありがとうございます。 (ぐうたら)
2006-06-03 00:03:26
dancing-ufo様



ここ半月ぐらいですが、毎日楽しく拝見させていただいています。



実は私も、証券アナリスト&公認会計士です。



もっとも、最近では監査に関与していないので、会計や監査の知識は結構(相当?)アヤシイです。



また、証券アナリストの方がされるような企業分析もした事がありませんので、両方とも単に名刺に書いてある「肩書だけ」みたいになってしまっています。
返信する
Unknown (Unknown)
2006-06-06 23:24:28
遅ればせながら・・・



私も証取監査をやっていますが、決算予想については基本的に監査対象外というスタンスです。

ですが、決算に織り込まれている条件(例えば不振子会社の再建計画や税効果におけるスケジューリングなど)と食い違うような場合は、指摘して修正を迫ったりします。

ま、それもパートナー次第ですが・・・。



ですが、あるクライアントが下方修正を連発して、正直困っています。経営者の見積り能力が欠如しているのではないかと・・・(リスク情報に載せたいぐらいですわw)
返信する
Unknown (Unknown)
2006-06-06 23:31:51
あ、忘れてましたが、



ご存知とは思いますが、

決算短信自体が丸々監査対象ではないですよね。

なんで決算予想も当然に監査対象ではないですよね。



といっても、結局、有報なみにチェックしてますけねw

返信する
貴重なご意見有難うございます。 (dancing-ufo)
2006-06-07 00:33:26


ぐうたら先生

Unknown先生



貴重なご意見有難うございました。





で、ぐうたら先生

私の会計・監査の知識なんて

もっと怪しいですので、ご安心?下さい。



ブログを書きながら勉強している、っていうのが実態でして

我ながら実に情けない。

でも、ブログもCPEの単位の対象にしてくれたらいいんですけどね。





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