先日、会計士業界を震撼させるニュースが飛び込んできました。
(週末時間をかけてコメントしようとしたため遅れてしまいました)
私イチオシのIFRS本を書かれた中島先生が所属されている「新日本有限責任監査法人」で
大きな動きがあったようです。
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日経新聞 7月25日 新日本監査法人、会計士ら早期退職者400人募集
監査法人で国内最大手の新日本監査法人は、所属する公認会計士と会計士試験合格者を対象に400人の早期希望退職を実施する方針を固めた。2008年秋のリーマン・ショック以降、外資系企業の相次ぐ日本撤退などで収入が落ち込んでいる。大手監査法人が数百人規模の希望退職者を募るのは珍しい。
9月末にかけて募集する。対象は金融部など一部の部署や若手を除く会計士と会計士試験合格者約4800人。応募者には面談を経て原則10月末までに退職してもらう。基本給の6~10カ月分にあたる割増退職金を支払うほか、再就職支援も実施するという。
関係者によると早期退職募集に先立ち、パートナーと呼ばれるベテラン会計士や企業の監査を直接手がけない事務職員の早期退職も実施した。
監査法人は金融危機後の景気低迷で収益が低迷した。会計士試験合格者の採用を絞り込んだため「就職浪人」が増える一因となっていた。監査法人の経営悪化は金融庁が進めている公認会計士試験制度の見直し作業にも影響を与えそうだ。
(以上、引用終わり)
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(コメント)
新日本監査法人の決算は6月。まだ決算の開示がなされておりません。
そこで以下は、批判を覚悟の上で邪推に基づくワーストシナリオに基づき、
新日本監査法人のH22/6期決算がどういう状況になった可能性があるのか、
そして今回のリストラ効果がどの程度期待できるのか、考えてみました。
あくまで邪推です。関係者の方、怒らないでください。
【1】基礎データの確認
■H21年6月期 決算書
-----------------------
↓↓↓
計算書類
■H21/6期 主要損益項目(実績)
----------------------------------
売上 104,309百万円
------------------------------------
報酬給与 56,030
賞与 9,859
退職給付費用 1,146
社員退職引当金繰入 4,693
法定福利費 6,361
福利厚生費 2,064
諸会費 4,693(協会費も立て替えてので)
人件費等 合計 84,846①
------------------------------------
経常赤字 ▲1,306百万円
■人員構成(H22/3末)-----------------
公認会計士 社員717 名、職員2,029 名 合計2,746 名
公認会計士試験合格者等 合計2,081名 ←多すぎる!!
その他 社員18名、職員1,611名 合計1,629 名
合計 6,456 名②
ベテラン会計士の退任、大量合格世代の台頭・・・・・。何故か、グレシャムの法則(悪貨は良貨を駆逐する)が連想されました。
①÷②により、
人員1人当たりのコスト1,314万円!
【2】H22/6期業績予想(あくまで邪推に基づくワーストシナリオ)
売上高2.5%減少と想定(任意監査の減少、企業サイドの監査報酬節約志向の高まりからざっくり推定。根拠薄いです。)
↓
前期比▲2,607百万円の減益要因。
この想定はやや厳しいと思われるので、経費は人員増にもかかわらず前期並みだとしましょう。
前期の経常赤字は▲1,306百万円だったので、
H22/3期の経常赤字はそれでも▲40億円・・・・・①
400人希望退職に伴う割増退職金引当金 400人×500万円(ざっくり)=▲20億円・・・②
2期連続赤字ってことで繰延税金資産の全額取り崩し▲49億円・・・・・③
最終赤字は①+②+③=▲109億円(あくまで最悪のケース)
一方、自己資本は118億円!
あくまで邪推の話ですが、最悪の場合、債務超過寸前まで追い込まれている可能性はあるのではないでしょうか。
(大ハズレであってほしい)
ただし、これまでの利益の蓄積からキャッシュは潤沢。
実質無借金ですのですぐにどうなるワケではありませんし、あくまでワーストケースですのでご容赦下さい。
こうしてみますと、当法人の決算がどう着地したのかが、会計士業界の重大関心事となるかも知れませんね。
そして決算数値として特に注目したいのは、繰延税金資産49億円の回収可能性。
監査を担当する東陽監査法人さんがどこまで収益回復を許容されるか注目です。
なお、結果如何では、クライアントさんから、
「・・・・・それをいうなら貴法人の繰延税金資産の回収可能性はどうなっているんですか?」
と交渉材料にされるかもしれないですね。
【3】H23/6期業績予想(これも邪推に基づくワーストシナリオ)
<コスト削減効果>
400人削減×1,314万円(1人当たりコスト)×8か月/12か月=35億円。
(通年効果では53億円)
H22/6期のワーストケースでの経常赤字(邪推ですよ)は▲40億円でしたから、
人員削減だけでは黒字転換できない計算となってしまいます。
↓
さすがに3期連続赤字は避けるでしょうし、今回のリストラは
まさにこれが狙いであったと推察されますから、先の▲40億円というのは厳し過ぎる数字となる。
↓
となると、H22/6期の経常赤字は▲35億円以内ということになるのでしょうか。
だとしても以前のような利益水準に戻ることは厳しいかも。
というのも、会計士試験合格者が2,081名も控えております。
徐々に会計士に昇格されるのでしょうから当面コスト的に厳しい。
財務体力の回復を待って第二、第三弾の希望退職募集もあるかもしれませんね。
会計士の場合、退職してもその専門性ゆえ、失業保険が出ない可能性がありますし、
協会ホームページを見ても人材募集は少なく、狭き門でのサバイバル競争。
とても退職金の割増期間6~10カ月では足りないではないでしょうか。
でも監査法人としても無い袖は振れないし、一般的に割増退職金は1回目が一番条件が良い。
去るも地獄、残るも地獄の様相を呈してきました。
最後に・・・・・
退職される400人の会計士の方々の中から有志が集って新団体を立ち上げることになるのでしょうが、
それってなんとなく往年の「プロレス」っぽいです。
(ところで、「のれん分け」となるとリストラ効果ってほとんど意味が無いですよね。コストも減りますが、クライアントが流出・売上も減りますから。)
因みに新日本プロレスを脱退したメンバーはUWF、CTU、ビックマウス、GBH、NWOなどを
立ち上げております。新監査法人の名称にいかがでしょうか。
・・・・ただし、ビックマウス監査法人は、営業開始と同時に、業務停止を食らいそうな・・・・・・・。
(関係者の皆様へ:失礼な試算と表現の数々、お赦しください。これが私の芸風なので・・・・orz)
またいきます。
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(週末時間をかけてコメントしようとしたため遅れてしまいました)
私イチオシのIFRS本を書かれた中島先生が所属されている「新日本有限責任監査法人」で
大きな動きがあったようです。
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中島 康晴 | |
日本経済新聞出版社 |
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日経新聞 7月25日 新日本監査法人、会計士ら早期退職者400人募集
監査法人で国内最大手の新日本監査法人は、所属する公認会計士と会計士試験合格者を対象に400人の早期希望退職を実施する方針を固めた。2008年秋のリーマン・ショック以降、外資系企業の相次ぐ日本撤退などで収入が落ち込んでいる。大手監査法人が数百人規模の希望退職者を募るのは珍しい。
9月末にかけて募集する。対象は金融部など一部の部署や若手を除く会計士と会計士試験合格者約4800人。応募者には面談を経て原則10月末までに退職してもらう。基本給の6~10カ月分にあたる割増退職金を支払うほか、再就職支援も実施するという。
関係者によると早期退職募集に先立ち、パートナーと呼ばれるベテラン会計士や企業の監査を直接手がけない事務職員の早期退職も実施した。
監査法人は金融危機後の景気低迷で収益が低迷した。会計士試験合格者の採用を絞り込んだため「就職浪人」が増える一因となっていた。監査法人の経営悪化は金融庁が進めている公認会計士試験制度の見直し作業にも影響を与えそうだ。
(以上、引用終わり)
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(コメント)
新日本監査法人の決算は6月。まだ決算の開示がなされておりません。
そこで以下は、批判を覚悟の上で邪推に基づくワーストシナリオに基づき、
新日本監査法人のH22/6期決算がどういう状況になった可能性があるのか、
そして今回のリストラ効果がどの程度期待できるのか、考えてみました。
あくまで邪推です。関係者の方、怒らないでください。
【1】基礎データの確認
■H21年6月期 決算書
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↓↓↓
計算書類
■H21/6期 主要損益項目(実績)
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売上 104,309百万円
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報酬給与 56,030
賞与 9,859
退職給付費用 1,146
社員退職引当金繰入 4,693
法定福利費 6,361
福利厚生費 2,064
諸会費 4,693(協会費も立て替えてので)
人件費等 合計 84,846①
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経常赤字 ▲1,306百万円
■人員構成(H22/3末)-----------------
公認会計士 社員717 名、職員2,029 名 合計2,746 名
公認会計士試験合格者等 合計2,081名 ←多すぎる!!
その他 社員18名、職員1,611名 合計1,629 名
合計 6,456 名②
ベテラン会計士の退任、大量合格世代の台頭・・・・・。何故か、グレシャムの法則(悪貨は良貨を駆逐する)が連想されました。
①÷②により、
人員1人当たりのコスト1,314万円!
【2】H22/6期業績予想(あくまで邪推に基づくワーストシナリオ)
売上高2.5%減少と想定(任意監査の減少、企業サイドの監査報酬節約志向の高まりからざっくり推定。根拠薄いです。)
↓
前期比▲2,607百万円の減益要因。
この想定はやや厳しいと思われるので、経費は人員増にもかかわらず前期並みだとしましょう。
前期の経常赤字は▲1,306百万円だったので、
H22/3期の経常赤字はそれでも▲40億円・・・・・①
400人希望退職に伴う割増退職金引当金 400人×500万円(ざっくり)=▲20億円・・・②
2期連続赤字ってことで繰延税金資産の全額取り崩し▲49億円・・・・・③
最終赤字は①+②+③=▲109億円(あくまで最悪のケース)
一方、自己資本は118億円!
あくまで邪推の話ですが、最悪の場合、債務超過寸前まで追い込まれている可能性はあるのではないでしょうか。
(大ハズレであってほしい)
ただし、これまでの利益の蓄積からキャッシュは潤沢。
実質無借金ですのですぐにどうなるワケではありませんし、あくまでワーストケースですのでご容赦下さい。
こうしてみますと、当法人の決算がどう着地したのかが、会計士業界の重大関心事となるかも知れませんね。
そして決算数値として特に注目したいのは、繰延税金資産49億円の回収可能性。
監査を担当する東陽監査法人さんがどこまで収益回復を許容されるか注目です。
なお、結果如何では、クライアントさんから、
「・・・・・それをいうなら貴法人の繰延税金資産の回収可能性はどうなっているんですか?」
と交渉材料にされるかもしれないですね。
【3】H23/6期業績予想(これも邪推に基づくワーストシナリオ)
<コスト削減効果>
400人削減×1,314万円(1人当たりコスト)×8か月/12か月=35億円。
(通年効果では53億円)
H22/6期のワーストケースでの経常赤字(邪推ですよ)は▲40億円でしたから、
人員削減だけでは黒字転換できない計算となってしまいます。
↓
さすがに3期連続赤字は避けるでしょうし、今回のリストラは
まさにこれが狙いであったと推察されますから、先の▲40億円というのは厳し過ぎる数字となる。
↓
となると、H22/6期の経常赤字は▲35億円以内ということになるのでしょうか。
だとしても以前のような利益水準に戻ることは厳しいかも。
というのも、会計士試験合格者が2,081名も控えております。
徐々に会計士に昇格されるのでしょうから当面コスト的に厳しい。
財務体力の回復を待って第二、第三弾の希望退職募集もあるかもしれませんね。
会計士の場合、退職してもその専門性ゆえ、失業保険が出ない可能性がありますし、
協会ホームページを見ても人材募集は少なく、狭き門でのサバイバル競争。
とても退職金の割増期間6~10カ月では足りないではないでしょうか。
でも監査法人としても無い袖は振れないし、一般的に割増退職金は1回目が一番条件が良い。
去るも地獄、残るも地獄の様相を呈してきました。
最後に・・・・・
退職される400人の会計士の方々の中から有志が集って新団体を立ち上げることになるのでしょうが、
それってなんとなく往年の「プロレス」っぽいです。
(ところで、「のれん分け」となるとリストラ効果ってほとんど意味が無いですよね。コストも減りますが、クライアントが流出・売上も減りますから。)
因みに新日本プロレスを脱退したメンバーはUWF、CTU、ビックマウス、GBH、NWOなどを
立ち上げております。新監査法人の名称にいかがでしょうか。
・・・・ただし、ビックマウス監査法人は、営業開始と同時に、業務停止を食らいそうな・・・・・・・。
(関係者の皆様へ:失礼な試算と表現の数々、お赦しください。これが私の芸風なので・・・・orz)
またいきます。
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CTU、GBH、NWOはユニットなので基本的には新日所属です。
UWF、ビッグマウスは団体なので、おっしゃるとおりです。
すみません、本筋以外のツッコミで。