照れ臭くって描けるもんか
夏休み。 水泳部でプール当番中の水口イチ子がフェンス際を歩いていたぼくを見つけ...
きみがするとおり
朝。前夜に残った味噌汁にミルクを入れる。きみの得意なスープだ ----- 少量の塩と胡椒...
トロントまで150マイル
オンタリオ州との国境にも近い、この街の八月の午後は、静寂の広がる沼地を思わせる。 ダルシマーを抱えた、若いインディアンらしい風貌の女が、シティホールの正面階段に座って...
ターコイズ・ブルーのインク
今年も一緒に夏の休暇を過ごせなかったと、きみの不満げな文面。いつになったら二人で...
いったい誰に話しかけているのか?
八月、濡縁から見上げる高気圧。 きみは、秋の花柄の浴衣も涼しげに 「この赤いのが和金、こっちのお腹の白いのが羽衣...」 いったい誰に話しかけているのか? ...
今年最後の西瓜になるかもしれない
かなだらいに浮かべた笹の葉を突っつきながら、今年は夕立が少ないとイチ子が言う ----...
静かな雨が降り続く頃まで
こうして残暑が往くと長かった夾竹桃の季節もようやく終わり、また来年の夏の初め、梅...
古いアルファ・ロメオで
県道732号線。 古いアルファ・ロメオで ----- もはや排気音も大きい ----- 登り詰め...
誰でも考え付きそうな
日曜日の昼下がり、食器棚の前に脚立を立て、 「いよいよ白菜が旬よ」とイチ子が新聞紙にくるんだ土鍋を食器棚の上からおろしながら言う。 「今夜、鍋なの?」とぼく。 「そうよ...
永遠の夏
わずか半年前のことだ。 強い陽射しを背に、霞んだ海をふたり並んで見ていた夏の初め...