好きな作家を問われたとき、誰もが知っていそうな名を挙げれば、その場の話が弾んでいいようなものだが、弾みすぎるのも良し悪しで、周知の話題をひねくり回して面倒臭くなるのもまっぴらだ。なまじコチラに知識があるのもいけなくて、ついつい長々とウンチクを語りたくなるのが人情 ------ いや、そんなのはオレだけか。
互いに等しく博識であれば、今更暇つぶしにしかならない文学の話なんかせずに、もっと実のある話の方がお互いのためになる ------ 例えば「最近どこかでいい女に会ったか?」みたいな...。
話を冒頭に戻して『好きな作家』を問われても、長々とウンチクを語りたくないときは、ここ三十年程は船知慧(ふなちさとし)と答えることにしている。まぁ、ほとんどの人が知らないうえに、作家の個人情報もほとんどないのでオレがウンチクを語ろうにも語りようがない。唯一かどうかは知らないが『ハードカバー』で上梓された彼の著作に『スペインわが愛』というのがあるが、版元が三一書房だけに事情通には特殊書籍の認識もあるかもしれない。
『スペインわが愛』を手に入れたのは初版が出たばかりの76年春。それ以来その角背の本を散々読んで遂に背表紙からバラバラになり、つい先達て根負けして製本し直した。それでいて船知慧について知っている2、3の事柄と言えば、誰の評価か知らないが、『(ジャン・)ジュネを自称するスペイン帰りの異形の作家。長い海外生活体験からにじみ出る文体はドライで、リアルなセックス描写と粋な筋立ては女性の間でも人気を呼んでいる(女性に人気があるなんてことは聞いたことがない)。雑誌小説はほとんど手がけることがなく、現代の出版状況のなかで、知る人ぞ知るの評価を保っている(これは正しい)』 ------ たったこれだけ。年齢もわからない。
【Foxes and Fossils - Don't Worry Baby】
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