きみの靴の中の砂

この夏に撮った古い思い出のような写真

 

 

 表紙に青カビが生えた古いアルバムが押し入れの奥から何十年振りかで出てきたりすると、思い出は美化されて記憶に留まるものなのか、いずれの写真も記憶と比べるとパッとしないのが口には出さない本音。

 過去の記憶は、形も色彩も朧気でハッキリしない。その場面の写真が残っていれば、それが記憶そのものに取って代わることもあるだろう。

 フィルムは、生鮮品同様の生もの。なので冷暗所に置かれるべきだが、それでも品質が安定しているのは製造から二、三年で、それがインスタント・フィルムとなると条件は更に厳しくなり、出たとこ勝負で写してみないと分からない代物となる —— 現像液が乾いてしまうと黒つぶれになって全く写らないこともある。
 辛うじて、薄く赤みがかっていても写っていれば御の字で、そんな効果を狙って、わざと期限切れフィルムを買い漁る写真家もいるくらいだ。
 その写真は、そのままだと状況は更に悪化していくが、今はそれをデジタル化できるテクニックがあるので、『古い思い出のような写真』のまま生き続けていける時代になった。

 この夏の写真を古い思い出のような写真にして残すのが楽しいのは、誰も撮れない写真を撮っているという変態感にゾクゾクするからなのかも知れない。

 



【中島雄士 - もしもビートルズがマライア・キャリー『恋人たちのクリスマス』をカバーしたら】

 


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