昭和18年(1943)。太平洋を席巻しつつあった帝國海軍の報道班員として、多くの文学者達が戦域に散開、従軍した。その中に、佐官待遇の久生十蘭もいた。 ほとんどの作家は、半ばお気楽な海外旅行だったが、十蘭は(勿論、彼もその例外ではなかったが)、委託された仕事は仕事としてちゃんとこなし、大部の日記を残した。