きみの靴の中の砂

古いカセットテープ

 

 

 昔、自分が倉庫代わりに使っていた階段下の物置部屋で、何を詰め込んだか、もうすっかり忘れてしまったダンボール箱を見つけた。
 開けてみると、分解された現像機やトランジスタラジオ、赤い小さなラジカセなど、古道具が詰め込んである。四十年くらい前のもののようだ。見れば、ラジカセにテープが一本入ったまま...。見覚えがある。

 当時、乗っていた中古のアルファ・ロメオにはラジオしか付いてなく、遠出のときなど好きな曲を聴きたいときは、好きな曲をカセットテープにダビングして、ラジカセを車に持ち込んで聴いていたのが懐かしい。

 ラジカセのハンドルに結んだままのコードをほどいてコンセントに繋いでみる。

 ラジカセも中のテープも、まだ生きているだろうか...。

 スイッチを入れる —— 最初の曲が聞こえてきた。
 このテープをいつ、誰のために作ったのか、すぐに思い出すことができた。

 

 

 

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