“The Secret Life of Words” という2005年にスペインが製作した全編英語の映画がある。監督イザベル・コイシェ、主演サラ・ポーリーという、2003年の話題作『死ぬまでにしたい10のこと(My Life Without Me)』でも監督・主演した二人による作品である。
さて、“The Secret Life of Words” は、『旅行中にクロアチアで内戦に巻き込まれ、不良兵士に陵辱され、心に深い傷を負い、心を閉ざし、言葉を忘れた女子工員』と『火災事故による火傷で、しばらくの期間視力を失う羽目に陥った石油採掘所の作業員』の心の交流を軸に話は進んでいく。
彼女は看護師の資格を持っていたために、偶然にも、視力を失った男の介護をすることになる。男と話すうちに、彼女は閉ざしていた自分の心を開き、人との会話を徐々に取り戻していく。男は、見えない彼女に介護されるうちに、前妻に裏切られた心の傷を癒し、彼女への純粋な愛に目覚めていく。
詰まるところ、お互いに介護を通じ、知らない間に心理カウンセリングをし合っていたということだ。そんな話である。
決して暗い色調の映像ではない代わりに、扱われている内容が重苦しいので、観終わった後の気持ちはひたすら暗い。最後まで観ても、大して救いもない。昔読んだ伊藤整の新聞連載小説『氾濫』同様、話が進むにつれて、どんどん気持ちが沈み込んでいく嫌な作品だ。友人に、出来れば観ない方が精神衛生上良いと言われたし、僕も同様のことを、これから観ようと思っている人にアドバイスしたい。
なのに、なぜここでこのコラムを書いたかというと、二人がお互いに心を開いた瞬間の会話が僕の琴線に触れたからだ。
愛と視力を失っている男 「今、ずっと君の夢を見ていた。あっ、でも心配しないで.....。決してエッチな夢じゃないから.....」
人間への信頼と言葉を失っていた女 「あら、そう? それは残念だったわね」
この台詞がなかったら、この映画、誰がここで扱うもんか。
この作品、邦題は『あなたになら言える秘密のこと』。配給元・松竹宣伝部の名訳が嬉しい。
FINIS
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