きみの靴の中の砂

ボートネックのボーダーシャツ

 

 

 今年の春先に服飾のブランド・メーカー勤めのY.に会った時、この夏は何を流行らせようとしているのかと聞くと、昔なつかしいボートネックのボーダーシャツだと言う。

                    

 後日、ぼくにはひと回り以上大きいサイズの、ブルーのボーダーシャツが送られてきた。

 タグにポストイットが貼られてあって、ジャストサイズじゃなく、ダボッと着るモノだからサイズは大分大きめにしてあると書いてあった。早めの誕生日プレゼントだという。

 夏、やけに晴れて暑い日に何度か袖に腕を通した。

 そんな或る日、都内のカフェテラスに座っていると、ちょうど同じブランド、同じ色柄のシャツを着たお嬢さんが交差点で信号待ちをしているのが目にとまった —— お互い、至近距離で目が合っていたら多少恥ずかしかったかも知れない。

 しかし、色は違えど同じブランド柄のシャツを着た人には、ついぞ彼女以外には見ることもないまま八月が終わった。
 Y.が企んだように、あのシャツはこの夏本当に流行っていたのだろうか。他の人達は、いったいどの辺りで着ていたのだろうか。
 
 

 

【The Fortunes - Here Comes That Rainy Day Feeling Again】
 
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