きみの靴の中の砂

夏の陽が西にやや傾き始める頃





 庭の掘井戸が市の災害時緊急飲料水の指定を受けていて、その定期水質検査で、ここ一両日中に保健所から委託された担当者が来るという。しばらく流した後の水を採取するので、今日から一日一時間、水を流したままにしておいて欲しいという。

 昨日、イチ子さんが、自転車で友人の家まで行って借りてきたという小さなビニール・プールをタライ代わりに、その流水を溜め始めた。やがてプールから水が溢れ出すと、彼女は用意していた小玉西瓜とトマト、瓜の古漬け、清酒の四合瓶をそれに浸した。
「冷やして、すぐに食べるには冷蔵庫は冷え過ぎてダメね」とイチ子さん。
 確かに子供の頃、キャンプで食べた ----- 海や川の水で冷やした程度の ----- 西瓜の方が、しっかり味が判ったものだ。

 さて、二時間ほどして夏の陽が西にやや傾き始める頃、庭先から声がかかる。なにやら特別な饗宴が始まるかのようだ。

                            

 ふたり縁側に並んで、少しひんやりした瓜の古漬けと塩をしたトマトで半時間ほど岐阜の地酒を飲み、いくぶん身体が火照ったところで、いよいよ小玉西瓜の登場だ -----「おいしいね」と、半分ずつ食べた。

 『昔の味』が思い出された。




Jess Lewis / Happy as Larry


 

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