きみの靴の中の砂

午前中の時間割り





 もはや観ることの出来ない映画 —— その最大の理由は、駄作だからとしか分析のしようがない。あえてもうひとつ理由を挙げるなら、今の時代がその作品を資料として以外、必要としていないから...。

 上に掲げたスチル写真は、その作品『午前中の時間割り(1972)』のロケ中のスナップである。中央がドキュメンタリー作家である監督の羽仁進。左右が主演女優。右が国木田独歩の曽孫・国木田アコ(今木草子・いまきくさこ役)、左がシャウ・スーメイ(山中玲子役)。

 御伽草子の草子に通じる役名・草子(くさこ)と玲子は、8ミリ・カメラを持って、十七才の夏休みに二人で旅に出る。しかし、戻ってきたのは玲子だけ。草子は謎の死を遂げる。残された証拠らしい証拠は、草子が撮影していたと思われる8ミリ・フィルム以外にない。

 果たして草子の死の理由は明かされるのか? いや、それには大した意味はない。なぜなら彼女は、現実ではなくファンタジーの中に生きていたのだから...。

 確かなのは、そのあやふやな事件が起きたのは、草子の人生が、まだ『午前中の時間割り』にしか過ぎない、十七才の夏であったということだけ。

 もはや誰も観ることの出来ない映画の話をするのは、おとぎ話をするようなものかもしれない。






【メーブル・リーフ - 草子の散文詩】

 

 

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