この尋常ならざる暑さの中、何故にぼくは吉田一穂なんぞを読むのか。 一穂が亡くなった時の各誌追悼号での盛り上がりが彼の生涯最後のブレイクとなった。あの時から、もう四十年以上経つんだなとしみじみしつつ、汗を拭いながら重い一巻本の頁を繰る。 彼に似たスタイルの後進は世の中に五万といるが、彼が如き天才の詩風でない限り、暑さを忘れる程、のめり込むのは尋常なく困難である。 【Musica Piccolino / You Can't Hurry Love】