きみの靴の中の砂

聞こえるかも知れない




 ここひと月半程、いち日の摂取カロリーを1,600kcal に抑えて生活している。当初は飢餓感と直面した。これが気にならなくなるまでには、長い場合だと、およそ三ヶ月程かかるようだ。それさえ乗り切れば、リバウンドの確率は大分低くなると言われている。ところが、健康人は、この三ヶ月が我慢できないらしい。途中で馬鹿食いして玉砕する例が少なくないようだ。
 今のところ、飢餓感には負けずに済んでいる。しかし、旬の食材の話を耳にすると、さすがに食欲が湧く。今の時期なら断然鰹だ。

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 これからの話は、断酒、節食中の身としては、残念ながら白昼夢でしかないのだが.....。

 まず、尺五寸の大皿に土佐造りにした鰹をたっぷりと盛りつける-----この夜、口に入れる食べ物は、これのみ-----江戸時代(醤油出現以前)のように辛子酢や辛子味噌で食べると風情がある。
 これに合わせる酒は、旬の魚を味わうのだから、季節の香りを台無しにしてしまう大吟醸は避け、地味で味わい深い純米酒にしたい。もし、適当な酒が見つからなければ、せめて辛口の酒にだけはこだわりたい。出来たら常温がぬる燗が良い。ここ十年ほど、僕は岐阜・笠原の『三千盛』と決めている。これを小洒落た青磁や白磁の酒器ではなく、会議室などの備品によくある、水玉柄のチープな玉湯飲みで飲みたい。
 気持ち良く酔って身体が揺れれば、波間に浮かぶ小船に乗る土佐漁師の追体験はできないにせよ、船底を叩く波の音くらいは空耳で聞こえるかも知れない。

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 初鰹の句としては、芭蕉の友人・山口素堂(やまぐち・そどう 1642~1716)の『目には青葉.....』が断トツに有名だが、現俳人協会会長・鷹羽狩行氏の

水はじき鉄のごとしや初鰹

も「今から、その旨そうな鰹一本、食べ尽くしてやるぞ」という意気込みが感じられる好きな一句だ。季節が巡ってくると決まって思い出す。


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“There's No Other Like My Baby” The Crystals


FINIS
 

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