きみの靴の中の砂

アメリカの河の名前と人生の半分近い時間





 昔を過ごした部屋の本棚の前で、ぼくは、これを手に取るがどうか、しばらく迷っていた ------ まさに今夕のことだ。

 この本がぼくのもとにやって来たのは、数えて今から三十数年前の夏のあと先のこと。
 当時はなんとしても理解し難い小説だった。最後まで目を通したかどうかも今ではもう思い出せない。

 あの頃同様に理解が及ばなかったら ------ という危惧 ------ それがその躊躇のわけだ。

 著者二十五歳の作品。翻訳を手がけた訳者も同じ二十五歳。ぼくは二十二歳だったか、三歳だったか...。

 今、本を前にして、わずか数時間前の予感が的中しつつあるのに気づきはじめている。ぼくの人生の半分近い長い時間と、訳者の丁寧な翻訳をもってしても、この作品が難解であることについては、変わるところは少しもなかったようだ。


 

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