静かに降り続いたパリの雨が日暮れにあがると霧になった。
クリッシーの盛り場に赤や青のネオンがにじみ、歩道や建物のぬれた顔が薄紅色に上気している。
水銀灯の光をさし入れた街路樹の緑が、木の下道を染め、恋人遠の散歩が夜霧にひたされている。
びっしりと並んだ駐車の列に、更に割り込もうとする車や押しのけて出ようとする車のエンジンの音が、盛り場の騒ぎに輪をかけている。
濡れた歩道を七色に染めて、どれだけの人を飲み込んだネオンか、人いきれで充電し、更に新しいお客さんを誘い込み、霧の中で妖しい光を放つ、欲望の胸飾りのように見えたが…。
【夜霧のピガール / 堀内茂男】
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