遠距離介護日記 人生で今日が一番若い日 母も私も

60代、一人暮らしです。
母の遠距離介護。働きながら続けています。

年を取って分かったこと その3

2021年05月18日 | 思うこと

私は祖父が大好きでした。

離れて暮らしていたのですが、

私の記憶の中の祖父は、いつも穏やかでニコニコしていて

怒った顔を見た事がありません。

 

その祖父が、素敵な茶器を持っていました。

今思うと、中国茶の茶器だったのじゃないかと思います。

それは、子供の手に入るくらいの、小さなモノでした。

 

小学生の時、祖父の家に行くと、

いつもその茶器で、お茶を入れてくれました。

子供の私にも、大人と同じようにお茶を入れてくれました。

 

大人と同じように素敵な茶器でお茶を入れてくれる祖父が

私は大好きでした。

お茶の味は、良く分かりませんでしたが

祖父が入れてくれたお茶は、私に取って特別でした。

 

ある時、祖父に

「このお茶碗が惜しい」

と、ねだりました。

すると祖父は

「おじいちゃんが死んだら、これをあげよう」

と言ったのです。

 

「えっ〜」

大好きなおじいちゃんが死ぬなんて、考えるだけでもゾッとします。

小学生には、「死ぬ」という言葉は衝撃の言葉だったのです。

 

それで私は

「そしたら、いらない!!」

と、強く言い返してしまいました。

祖父は寂しい顔をしていました。

私は、その意味が分かりませんでした。

 

「私が茶碗を貰わなければ、おじいちゃんは死ぬ事はない」と

私がおじちゃんの死を先延ばしにした…と

なんだか良くわからない理屈ですが、

そう思っていました。

 

でも何十年経っても祖父の寂しい顔が、ずっと気になっていたのです。

 

そして、年を取ってやっと分かりました。

自分が大事にしているモノを、

自分が死んだ後に、好きな家族に託す事

それが、できる事は本当に幸せな事なのです。

 

今なら、分かります。

でも、あの時は分からなかった…。

ごめんね。おじいちゃん。

いつか、天国で会う事があったら、謝ろうと思います。


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