父が亡くなり、母は一人暮らしを始めました。
それまで自他ともに認める我がままな父を
支えながら生活してきました。
亡くなる頃は認知症が進みかなり
母は精神的にも体力的にもかなり大変でした。
その父が亡くなり、急に一人暮らしになりました。
一人暮らしだと自分の事だけをすればよくて
身体は楽なはずなのに
急に体力と気力が無くなったのです。
ぽっかりと穴が会いたような感じでした。
私が実家へ帰っても、私の顔が分からず
「あなた、誰?」
という事もありました。
その場面を今でも覚えています。
怖かったのです。
「わ〜。どうしよう。」
私は、これからの母の生活をどうすればいいか分かりませんでした。
私が引き取り、一緒に住もうかとも考えた事もあります。
でも、この街には母の友達は誰もいません。
私が会社に行ってから、
マンションで母ひとりで過ごす事は、田舎育ちの母には無理です。
実家で、母が元気に生活し
何か希望を持つことができないかと色々考えました。
これというものがありません。
それに、町に住んでいるのなら、サークル、習い事など色々あるでしょうが
私の実家は、テレビの人気番組
「ポツンと一軒家」
に引けをとらないくらいの山の中です。
母が歩いて行けるような娯楽施設や習い事の教室はありません。
そこで考えました。
ペン習字の通勤教育はどうかしら?
母は昔から文字を書くことが大好きです。
好きな事なら、その気になってなるかも…と思ったのです。
半年以上経って、一人暮らしがある程度落ち着いた頃に
母に勧めてみました。
想像通り
「それは私には無理よ…」
との返事。
でも、私は勝手に通信教育の申込をしました。
申込み時に、
母は一人暮らしの為、手続は娘の私が行う事
お手本等は、実家に送って欲しい事
などを伝えました。
こうして、母の手習い、ペン習字の通勤教育が始まりました。
母はその時、83歳。
83歳からの通信教育が始まりました。