・田作り たづくり
師走のこの時期なんとなく落ち着きませんが、お正月のおせち料理のひとつ田作りについていわれ、作り方、栄養成分についてお伝えします。
田づくりは、米作りで田んぼの肥料として用いていたことから豊作を願う祝いの魚としてきました。日本近海で大量に捕獲でき庶民、農民の味覚として多くの人が口にすることができ、小さいながらも尾頭(おかしら)付きで正月の祝いごとに使われるようになったといいます。
つくり方
材料
田作り(カタクチイワシの乾燥品):適量
水+酒(みりん)+ざらめ(砂糖)+醤油≒(田作りの3倍強)
1.尾頭付きの、ごまめの腹わたの苦い部分を取り除き厚手での鍋、またはフライパンで香ばしく炒ります。あまり火力が強すぎると水分がよく抜けきらないうちに表面だけが焦げてしまいますので強火から弱火にして気長に、かりかりに炒り上げます。焼け焦げの粉を取り除くのに網でこして振るい落としておきましょう。
2.鍋に水、酒(味醂)、ざらめ(さとう)をいれ煮詰め過ぎて硬くなり過ぎないよう煮溶かします。時間と共にとろみが出てきたら醤油を加え、好みの味付けにし、炒ったごまめを入れ、さくっとからませませてでき上がりです。あまり長い時間かき回し過ぎると砂糖が白くなりとろみが無くなるので気をつけます。
炒ったくるみ、ごまを入れるとより豪華にみえます。
田作りは、「ごまめ」ともいい、当初は「こまめ」といわれ、小さい群れを表す「細群(こまむれ)」が語源で身体が丈夫という意味のマメと合わさり、さらに接頭語の「ご」がついて濁音となったといいます。
ごまめには田作り同様、豊作への祈願に加えて健康に過ごせるようにという願いもこめられています。ごまめは、もともとは田作りよりも小さな「カタクチイワシ」を呼ぶ言葉でしたが、昨今では田作りと同じものを指すようになっています。
正月のお祝いらしさが感じられるように田作(でんさく)・鱓・五万米・五真米・古女という漢字が用いられることもあります。お米がたくさんできるということを表します。
さらに、田作りが片口いわしの稚魚をたくさん使っている料理で、田作りは子だくさん、子孫繁栄を願う料理とも言えます。
田作りという名前より「ごまめ」という言葉からの「まめ」は、もともと「元気に」とか「息災に」とか「達者に」という意味がありますので、「体が丈夫である」ことを、あらわしています。
そのため田作り・ゴマメには、今年一年、まめ(健康)に暮らせますように、豊作祈願、子孫繫栄の願望が込められています。
1つのレシピでもたくさんの願いが込められている、田作りのおせち料理です。それぞれの意味を考えながら日本の食文化として大切にしたいですね。
五穀豊穣・健康を祈る目的で取り入れられる田作りは、おせち料理に欠かすことのできない庶民にとって主役級の存在といえるでしょう。
◇片口鰯Anchovy かたくちいわし
カタクチイワシ科、日本全国の海域、20~25度の水温に群遊(ぐんゆう)、春に北上、秋に南下します。生後1年半頃から3~7月に産卵、3日前後で孵化(ふか)し1ヶ月後に35mm(しらす)、2ヶ月で6cm、1年で15cmほどになり寿命は5年位で20cmに成長します。
幼魚はオキアミ類や貝類、植物プランクトンを餌とし日中に活発で群れをなし行動しています。
名前の由来としてカタクチイワシの口元は上あごが突出していることによります。
鰯中、カタクチイワシが最も多く水揚げしていますが、体長15cmの小型であり傷み易いので産地以外では生食には適しません。
12月から翌年の2月に漁獲量が多く旬の季節を迎えています。
加工品に煮干(10cm)、たずくり(ごまめ、5cm程のものの素干し)、シラス干し(初夏から晩秋を旬とし素干し、煮干がある)、みりん干し、オイルサーデン(アンチョビーAnchovy)があり利用します。
食用以外に釣り餌としてもよく使われています。生100g中に脂肪(12.1%:飽和脂肪酸3.79g、一価不飽和脂肪酸2.65g、多価不飽和脂肪酸2.78g)が多く、青魚でEPA(血流改善),DHA(脳の活性化)を含みます。傷みが早いのが難点ですが、網の上で焼きながら大根おろしで食べるのが最もおいしいく骨もその場で焼いて食べられるのでカルシュウムの摂取にもよいです。一般に身が柔らかいので手開きで調理します。
田作りは、カタクチイワシ5cm程度の新鮮なものを水洗いした後、そのまま天日で乾燥して干し上げています。形の崩れていない表面が銀光しているつやのあるのがよいでしょう。
田作り100g中でエネルギー336kcal、タンパク質66.6g、脂質5.7g(飽和脂肪酸1.18g・一価不飽和脂肪酸0.45g・多価不飽和脂肪酸1.01g)、炭水化物0.3g、灰分12.5g、カルシウム2,500mgで佃煮にするとエネルギー量等少し異なってきます。一度の可食量10gとしてカルシウムの給源としてよいでしょう。
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ランキング
1位 栗きんとん; 2位 数の子; 3位 伊達巻き; 4位 黒豆; 5位 かまぼこ; 6位 昆布巻き; 7位 エビ; 8位 田作り(ごまめ); 9位 紅白なます・10位 筑前煮
となっています。
今回の、お節に、庶民の味方、田作りは、必要不可欠と言えるかもしれませんね。
ご愛読戴きましてありがとうございます。よりよい情報をお届けしてまいります。
(初版:2020.12.28)