・和食Japanese food わしょく
「和食」がユネスコの無形文化遺産に2013年12月4日に登録となっています。正式な登録名は「和食 日本人の伝統的な食文化」となります。
世界では自国の食に関する分野をユネスコの世界無形文化遺産として登録する動きがあり、2010年にフランス美食術、地中海料理(スペイン、イタリア、ギリシャ、モロッコの4カ国)、メキシコの伝統料理、2011年にトルコの伝統料理(ケシケキ[麦がゆ])といった食文化が社会的慣習として登録され、和食は5例目となります。
日本の食文化については、世界的に見ても特徴的であり、これが無形文化遺産と認められることは世界の文化的多様性を豊かにすることともなり、非常に大きな意義を持ちます。
このようなことから、日本食文化の無形文化遺産登録を目指し調査、検討を重ね、平成24年3月に「和食;日本人の伝統的な食文化」と題してユネスコへ登録申請を行い、ユネスコの検討、審査を経て、平成25年(2013年)12月に登録が決定したのです。
ユネスコ無形文化遺産に登録申請した「和食;日本人の伝統的な食文化」とは
南北に長く、四季が明確な日本には多様で豊かな自然があり、そこで生まれた食文化もまた、これに寄り添うように育まれてきました。
このような、「自然を尊ぶ」という日本人の気質に基づいた「食」に関する「習わし」を「和食;日本人の伝統的な食文化」と題して、ユネスコ無形文化遺産に登録申請しています。
「和食」とは、今回の「和食=WASHOKU」の特徴、定義は、次の4点に絞り
1)多様で新鮮な季節の食材を使い、その持ち味をいかす
日本の国土は南北に長く、海、山、里と表情豊かな自然が広がっているため、各地で地域に根差した多様な食材が用いられています。また、素材の味わいを活かす調理技術・調理道具が発達しています。
2)バランスがよく、健康的な食生活をつくる
一汁三菜を基本とする日本の食事スタイルは理想的な栄養バランスと言われています。また、「うま味」を上手に使うことによって動物性油脂の少ない食生活を実現しており、日本人の長寿、肥満防止に役立っています。
3)自然の美しさ季節の移ろいを表現する
食事の場で、自然の美しさや四季の移ろいを表現することも特徴のひとつです。季節の花や葉などで料理を飾りつけたり、季節に合った調度品や器を利用したりして、季節感を楽しみます。
4)年中行事とかかわっている
日本の食文化は、年中行事と密接に関わって育まれてきました。自然の恵みである「食」を分け合い、食の時間を共にすることで、家族や地域の絆を深めてきました。
この定義にあてはめ、いわゆる老舗の懐石料理など、洗練を極めた一部の高級料理に限られることはなく、日常食としての日本国民の食文化まで含むものとなります。
現代日本人の食生活は、一汁一菜(主食のごはん、汁物、おかず一品、そして漬物)や一汁三菜(三菜は、主菜一品と副菜二品)といった言葉もあいまいになってきています。
背景には、食の欧米化により飲食業や流通業の発展による外食や中食(調理済みの食品の購入)の浸透や、家族の存在の変化があります。和食は確かに正月料理など、年中行事との関わりが大きいですが、そうした祭事や儀式を支えてきた地域社会も、各地で衰退ぎみです。
伝統の「和食」としては一汁一菜は、元は鎌倉時代(1192年~1333年)の禅寺の質素な食事が世間に広まったものです。
食物史に関する資料は、平安時代(794年~1192年)以降より飲食に関係することを詳細に記述することを忌避(きひ)する風潮があったのではないかと推測され、さらに、明治以前は食物についての栄養に対する知識はなく、本能に任せた食生活であったようにも思われます。
古来より年中行事に必ず付いてまわる行事食としてハレの日の食事でした。
このハレの日の食事が、そして昭和30年代以降の栄養バランスの取れた日常食が「和食」としての価値を見出し世界遺産としての登録がなされたものと考えられます。
日本文化の特徴は、四季の織り成す自然の豊かさを彩(いろど)る繊細な感性にあります。その表現力に多様な食材を活かしているのです。
そんな日本の食文化の歴史は、土器にも見られ最古の縄文土器は16,000年前といわれ世界最古の土器のひとつです。文様からも日本人の「ものづくり」の伝統がいかに古いかを知ることができます。
事例が茶の湯にも現れています。客人に一杯の茶を点(た)てる主人の「おもてなし」は究極の食文化ともいえます。一期一会(いちごいちえ)という言葉があります。生涯に一度限りかもしれない縁のために心を込めて茶を点てるのです。
掛け軸を飾り、一輪の花を飾り、さりげなく客人への思いを語り、近くの山で採ってきた季節の食材で料理を作ります。質素ですが趣味の良い茶室で、洗練された器に料理を盛り付け、茶懐石料理に舌つづみを打つのです。
今日における我が国には、多様で豊富な旬の食材や食品、栄養バランスの取れた食事、食事と年中行事や礼儀作法との密接な結びつきなどといった特徴を持つ素晴らしい食文化であり、諸外国からも高い評価を受けています。
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