<姫辛夷>
このごろよく口にする
「ゆ」ではじまる言葉。
ゆるむ。
会う人会う人にご挨拶のように
私の口をついて出てくる言葉。
「今日は寒さがゆるんでよかったですね」。
寒さがゆるむ。
優しい言葉です。
そう思って悦に入っていたら
「全国的に寒さゆるみ、落雷で死亡事故」
「寒さがゆるみ、屋根から落下した雪の下敷き」
などと新聞の見出しが目にはいり、
そうとばかりは言ってはおられぬと気色ばみます。
寒さがゆるむを言いかえれば、
寒さが和らぐ
寒さが薄らぐ
寒さが衰える
寒さが遠のく
でしょうか。
ただ、「衰える」と「遠のく」は
もう寒くはならないというような感ありき。
まだまだ寒さは油断できない不敵な相手。
やはり、
寒さがゆるむがこの季節にはぴったりです。
水ゆるむ。
と言うも、優しげ。
キシキシと音をたてそうなくらい冷たくて
気が張っているような水面が
ウグイスの下手っぴな初鳴きをきいて
思わずちょっと笑って小さな波紋ができた。
というような、和やかな春先。
そろそろウグイスの下手っぴな初鳴きが聞こえて
きそうですね。