2025/1/10
・暴力刑事の吾妻が、薬物取引の事件で死んでしまった同僚の仇を討とうとする話。
・北野映画は好んで観ていたのに、ある意味、一番大事な作品が未見だった。
・その暴力刑事を演じるのは北野武。35年前の作品なのでかなり若々しい。暴力にも説得力がある。
・一方でクセのある歩き方や、くだらないジョークでニコリとしたり、ギャップ起因の愛嬌もある。
・もう長いことテレビを見てなくてテレビタレントとしての印象が薄くなっているぶん、俳優としての魅力を直接感じることができる。
・映っているいるだけで画面の見栄えがよくなる。
・警察の同僚たちは暴力に慣れているし、何なら仕事ができる男という印象さえ持っているように見える。
・酷いけど、暴力に対する認識が今と比べてはるかに甘い時代の話なので、フィクションならありそうな範囲ではある。
・最短距離で事件の解決に至るダークヒーロー的な魅力を感じさせる冒頭。実際はヒーローでも何でもなかったし、許容している悪事の範囲も広い。
・一方で暴力を良きものとは描かず、作中できっちり帳尻を合わせてくる。派手ではなく、静謐な地獄。
・コメディ要素も一応ある。取り残される男娼の表情や、急に結納の話をするところなど。
・直接的な笑いと言うより、生々しさを中和して、共感ではなく、出来事を突き放して見せる効果があるように思う。
・正確な引用ではないけど、佐野史郎演じる署長が、真顔で「犯人つかまえるのに二度も轢くやつがいるか」と説教しているのがおもしろかった。そりゃそうだ。
・冒頭のホームレスからストップモーションを多用している(映像効果ではなく生身で)。何か特別な表情をしているわけでなくても顔の情報量は案外多く、変な味わいがある。
・何かのインタビューで尺が足りなかったという話を読んだけど、103分あるから短いというほどでもないし、これでそんなに伸びたんだろうか。
・全体的に画面がきれい。絵画的。倉庫の決戦シーンも最低限の情報量で、ぱきっとした構図ができている。
・巷でキタノブルーと言われる前のキタノブルーが見られる。観光地化する前の自然な良さという感じ。
・岸部一徳の部屋。でかいデスクにバインダー一冊だけ置いて、いったい何の仕事をしていたんだろう。
・処女作でしか感じられない魅力があるし、思いのほか古い印象を受けなかった。北野映画のベストに本作を挙げる人は一定数いると思う。