遠藤雷太のうろうろブログ

何かを観たら、とにかく400字または1000字以内で感想を書きつづるブログ。

ドストエフス キー『罪と罰』(35~70P)

2025-02-28 21:14:47 | 罪と罰

 

2025/2/26

最初の30Pで落ち着くかと思ったら、まだまだ人物名が出てくる。何となく読んでいたらすぐに迷子になる。

○セミョーン・ザハールイチ:たぶんマルメのこと。

○コーゼル:錠前屋。金持ち。

○ナスターシャ:ラスコーリニコフの住む下宿の女中。

○プラスコーヴィヤ・パーヴロヴナ:ナスターシャ曰く、ラスコーリニコフを警察に訴えようとしているらしい。

○アファナーシイ・イワーノヴィチ・ワフルーシン:商人。ラスコーリニコフの母に金を貸した。

○ドゥーニャ:ドゥーネチカ。ラスコーリニコフの妹。家庭教師もしていて浮気の冤罪をかけられた。

○スヴィドリガイロフ:ドゥーニャを乱暴に扱った挙句、言い寄ってきた。のちに反省。

○マルファ・ペトローヴナ:スヴィドリガイロフの妻。ドゥーニャが夫をたぶらかしたと噂を広める。街中の人と知り合い。のちに反省。

○ピョートル・ペトローヴィチ・ルージン:ドゥーニャの婚約者。七等文官。45歳。財産を抱えている。

○プリヘーリヤ・ラスコーリニコフ:ラスコーリニコフの母親。主人公のラスコーリニコフは姓らしい。母親は息子のことをロージャと呼んでいたので、ロージャ・ラスコーリニコフなのか。ソーニャ=ソーネチカくらいはわかるが、この呼称の違いは結構読書の負担になる。

マルメの家族が気の毒。マルメが元凶。叱られると喜んじゃうのは手が付けられない。

罪と罰みたいな重厚な作品に、こんなはっちゃけた人物が登場して良いんだろうかと不安になる。

奥さんのことをフルネームで呼ぶのは、そういう習慣なのかな。

ソーネチカは仕送りをしていてえらいけど、根本的なところで解決に向かっていないのが気の毒。

後半は母親の長い手紙が載っている。ラスコーリニコフの生活を思うと、母親の仕送りへの熱意が痛々しい。このあたり、自分自身と重なる部分もあって呻いてしまう。

大学のころ、たくさん仕送りしてもらったけど、それに報いるようなこと何かしていたのだろうか。辛い。

中学生みたいな犯罪の妄想をしながら仕送り生活してきた学生のもとに、母と、娘と、娘の優秀な婚約者がやってくるかもしれないという現実が急襲してきた。どうする半ニート。

30Pずつ読むつもりが35P読んでた。

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ドストエフスキー『罪と罰』(~35P)

2025-02-27 22:15:51 | 罪と罰

 

2025/2/25

何度目か忘れたがまた『罪と罰』を読み始めた。

忘れた序盤に戻って読み返すのがもう嫌になってきたので、30ページずつ感想を書いていくことにする。

テキストは工藤精一郎訳の新潮文庫。

本編は5ページから始まるので、5~35Pまで。

登場人物が結構出てくる。覚えたつもりでも読み進めていくうちに忘れてしまい、無理やり進もうとすると話についていけなくなる。まずはその点を何とかするべく、ここまでの登場人物をメモしておく。

○ラスコーリニコフ:本編の主人公。学生。

○アリョーナ・イワーノヴナ:質屋の老婆

○リザヴェーダ:(おそらく)アリョーナの妹

○マルメラードフ:九等官。官吏崩れ。酒場の酔っ払い。「貧は罪ならず」というこの人が言ってさえいなければ名言。マルメ。

○カテリーナ・イワーノヴナ:マルメの妻

○レベジャーニコフ:ソーネチカをばかに侮辱してカテリーナを殴った。

○アマリヤ・フョードロヴナ・リッペヴェフゼル:マルメ家が住む家の家主。

○ソーニャ・セミューノヴナ:マルメの娘。娼婦。ソーネチカ。

○イワン・イワーノヴィチ:マルメの話に出てきた五等官。

○ダーリヤ・フランツォヴナ:性悪のゴロツキ女

○カペルナウモウ:仕立屋。ソーニャが住んでいる。

○イワン・アファナーシエヴィチ閣下:マルメにとって神のような御方。

書き出してみると、マルメが意外と重要人物。

わからくなったら、ここに戻れば思い出せるだろう。

かなり雑な人物紹介なので、頃合いを見て更新したい。

ラスコーリニコフは、何か大それたことをしようとしているが、なかなか決心がつかないらしい。

うすらぼんやりとしたあらすじは記憶にあるので、彼が何をしようとしているかは知っている。

要するに芥川の『羅生門』のようなことだ。

屋根裏部屋のようなところに住んでいるし、質屋で金を借りては、質を流す流さないでグダグダ言っているので、裕福ではないのは明らかだが、学生らしく、働いている様子もない。

召使いのような女中はいる。今の日本人から見ると奇妙。

社会全体が貧しい感じなので、近未来の日本はこんな感じなんじゃないかと思ったりする。

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デビッド・リンチ監督『マルホランド・ドライブ』

2025-02-26 01:45:00 | 映画を見てきた

2025/2/23

・女優になるべくハリウッドにやってきたベティが、マルホランド通りの追突事故で記憶を失ったカミーラと出会い、行動を共にする話。

・デビット・リンチ作品は初めて。古典感はあるけど2002年の作品。わりと最近。

・好きな人の感想ですら、難解とかよくわからないとか言われがちで、自分には合わないなと避けていた。

・見てみると、話の筋のようなものもあるし、身構えていたほどは混沌としていない。

・考えてみると、成功しているのか失敗しているのかもよくわからない小劇場系の観念的な作品と比べれば、巨匠の代表作という一定の評価があるぶん安心感はある。

・オープニングの事件に事故を重ねて混沌を上塗りしていく感じも、うまく機能している。

・とはいえ、ベティとダイアン(+ファミレスの店員)の関係性とか、わからないことも多かった。というか、余韻を残すための意図的な不整合はあるのかも。抽象画として見たほうがおもしろいんだと思う。

・序盤は色々なシーンが脈絡なく出てくる。適当に見えてのちのち意味が出てくる感じ。まさに布石なんだけど、出来上がるのが抽象画なので結局よくわからない。

・wikiには監督自らによる作品を理解するためのヒントが掲載されていた。公式サイトにも載っていたらしい。

・とりあえず『パーフェクト・ブルー』みたいな感じだったのかなと一応の理解をする。ダイアンにとっての理想の自分。

・誰も頼んでない、まずいとわかっているのに頼んで、案の定まずいエスプレッソ。

・ドジっ子の殺し屋の仕事ぶりが、唯一のわかりやすいコミカルなシーン。めちゃくちゃ。

・アメリカでも身近な鈍器と言えばゴルフクラブなのか。

・役者さんの演技に価値を置いているように見える。オーディションの時の演技や歌はもっと記号的にやったほうが見やすいはずだけど、そうしていない。

・現実社会であのオーディションやリハーサルを見て勘違いする監督や演出家はいそう。

・役者さんの肉体を通した表現を信用しているのか、たまたま出てきた演技に作品を合わせているのか。

・おじおばコンビがダイアンに迫っていくところ、怖いと言えば怖いけど、撮影現場はたぶん楽しそうだなと思いながら見てしまった。

(サツゲキ)

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THEATRE MOMENTS『フランケンシュタイン/怪物』

2025-02-24 00:43:12 | 観劇三昧

2025/2/23

・ビクター・フランケン博士が、自身の生み出した怪物によって大切な人々を次々と失っていく話。

・前説でお客さんを交えてシアターゲームが始まる。

・本作は本編への導入も担っていたけど、作品によっては、客席の空気作りのために取り入れてもよさそう。

・ただ、インプロ以外ではあんまり見たことないから実際にやろうとすると難しいのかな。

・舞台装置としての人体の使い方がおしゃれ。

・実際に物を用意するよりフットワーク軽く色んな場所を表現することができる。深い森の表現も他の方法では難しい再現力とスピード感がある。

・ただ人体の椅子は、拷問感と言うかなんというか、別の意味が生まれてしまってソワソワしてしまう。

・椅子→怪物になるところもズルいと思ってしまう。

・他には透明なボックスとロール状のフィルムを使用。

・実際、よくわからないところもあったけど、ポイントになるシーンで印象的に使われている。

・複数の人体にフィルムを巻き付けることで、うまく醜い怪物を表現していた。肉塊感。

・ウィリアムの死体を見つけるところ。箱を取ると時間が動き出す感じはおもしろい。

・複数の人体でひとつの怪物を表現するのは珍しくないと思うけど、本作の場合は死体の寄せ集め感があって一際フィットしている。

・盲目の老人を相手にしている時は一人で演じて、目の見える人たちの前に出ると複数名集まって怪物感を出す見せ方もうまい。

・孤独な存在には名前は不要という、フランケンの誤解を逆手に取った視点。本作のオリジナルなのかな。

・自ら生み出した怪物が知性を身に着け、人々の脅威になっていく様子は、科学の色んな側面に置き換えられる。今ならAIの高度化。

・実際、科学者たちの積み重ねた研究の成れの果てが醜い怪物だったという見方もできそう。

・かと思ったら、最後のナレーションでフランケン博士の研究の成果が現実とリンクして肯定的に語られる。

・どちらかというと科学の負の側面が語られる話だし、現実は現実でコロナ禍が大変なことになっている時期。どちらにもリンクしてなくて戸惑ってしまった。

 

◎詳細(観劇三昧HP)

■公演時期 2020/10/18

■キャスト
今野健太
中原くれあ(以上、THEATRE MOMENTS)
青木まさと
大窪晶(演劇集団円)
ちょびつき雨宮
友野翔太
豊田可奈子
三橋俊平

■スタッフ
原作:メアリー・シェリー
脚色・演出:佐川大輔 Creator:All members+札内茜梨
衣装:有島由生(斧頭会)
照明:宇野敦子
音楽:越川徹郎
楽曲提供:井ノ上孝浩
舞台監督:服部寛隆
宣伝美術:印田彩希子
宣伝写真:Basigrapher
音声ガイド:NPO法人シニア演劇ネットワーク
字幕・ウェブサイト翻訳:中井奈々子(英語)・YU DU(中国語)
演出助手&字幕制作:三石美咲
演出助手&小道具制作:鹿又由菜
映像撮影・編集:株式会社キャット

■あらすじ
スイス、ジュネーブの名家に生まれた天才科学者ビクター・フランケンシュタイン。
幸せな幼少期を過ごしていた彼だったが、母の死をきっかけに「生命の真理」を解き明かそうと、大学で研究に没頭していく。墓場の死体を集め、新しい生命を誕生させようと考えたビクターは研究の末、新しい生命の創造に成功する。しかし、孵化し動き出したその生命体はあまりに醜く、彼はその怪物を受け入れることが出来ず、研究室に放置して逃げ出してしまう。数年後、ビクターの前に怪物が現れる。怪物は驚くべきことに言葉をしゃべりだす。ここに至るまでの迫害された境遇を語る怪物は、孤独な自分にお似合いの伴侶を作って欲しいと懇願するのであった。
ビクターは悩みながらも、怪物の要求を受け入れ、伴侶を作り始める。しかし、完成目前に、自らの手でその伴侶を破壊してしまう。それを目撃した怪物は「お前が幸せの絶頂の時に復讐してやる」と、その場を去って行った。
数か月後、ビクターは幼馴染のエリザベスと結婚をすることになるのだが、結婚式の初夜に怪物は現れ、新妻のエリザベスを惨殺し逃亡。ビクターは怪物へ復讐すべく、怪物の後をどこまでも追っていくのであった。

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岡本喜八監督『EAST MEETS WEST』(1995年)

2025-02-23 00:29:14 | NETFLIX/PrimeVideo/UNEXT/Apple TVで観た

2025/2/21

・1860年、使節団の一員としてサンフランシスコにわたってきた武士の上條健吉が、強盗に父親を殺されたサム少年の敵討ちを手伝う話。

・チャンバラと西部劇、東洋文化と西洋文化の融合と言うとわかりやすいけど、そんな単純な構図ではない。

・色々あって上條自身も追われる立場になるので、追っているのが少年の仇なのか、強盗に盗まれた三千両なのか、追っているのか、逃げているのか、案外複雑。

・忍者の為次郎や、原住民の女、元士官の教師、街のゴロツキたちもそれぞれの思惑で行動を共にする。仲間とも言い難い属性の違う人たちが、真の悪党と戦うというのがおもしろい。

・上條役が真田広之。立っているだけでもかっこいいし、喋っても動いてもかっこいい。白人の老婦人が「いい男だ」と言っても、違和感がない。

・江戸時代末期の話なので、武士と言えども実際に人を斬ることはほとんどない。

・鍛錬だけはしていて、実際に戦うと強い。人を斬ったあとは腕が震える。このバランスがいい。

・のちにバディっぽい扱いになる為次郎は竹中直人。

・幕末の世なのに侍に憧れる忍者で、のちの展開も含めてとても味わい深い役柄。歌声の説得力はさすが。

・ただ、自分の感覚ではかなりオーバーアクトで、受け入れにくい。セックスしたら相思相愛になるという展開もなんかイヤだ。

・19世紀の話だからそういうこともあるんだろうし、作品自体も30年前だから倫理観がゆるいのはわかるけど、それにしても。

・ジョン万次郎の指導が適当すぎるのも悪い。

・岸部一徳の声で、日本語の中にネイティブに近い外国語がまざっていて楽しい。

・何気にサム少年の演技が上手い。演者はスコット・バッチッチャ。聞いたことないけど、真田広之と横並びになってしっかり絵になる。

・本来なら、タイトル通り、上條の刀と少年のピストルで戦うのがバランス良いように思える。

・あちこちで馬が躍動している。今こういうのを日本で作るのは難しいというか、たぶん無理。

・荒っぽいところも見られるけど、製作的にかなり難しい題材だと思うので、しっかりエンタメ作品として捌き切ったのはすごいことだと思う。

(U-NEXT)

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劇団なのぐらむ『SPARE ME』

2025-02-16 20:23:25 | 観劇三昧

劇団なのぐらむ『SPARE ME』

2025/2/16

店主が亡くなった小さなバーに、閉店を惜しむ人々が集まる話。

こじんまりとした題材のわりに登場人物が多い。店員、元店員、建物のオーナー、遺族など、90分強で15人。

話の進展よりも新しい登場人物が出てくるほうがはやい。役者さんの起用方法がとても贅沢。

あらすじを見る限り、しみじみ方向の話なのかなと思ったら、それぞれが話したいことを話すし、人の話を遮りがちだし、デリカシーもないし、わりとギスギスしている。

奥様連中が、関係性の近い人が集まっている場所で、亡くなったばかりの人のゴシップを想像してニヤニヤしている。

残された彼女が、店を続けるのを固辞するのも当然だなと思ってしまう。

たかが三十路で年齢マウントを取られるのも面倒すぎる。

タイトルは「勘弁して」だけど、「予備としての私」の意味もかかっているのかな。今後は自分自身のための人生を歩んでほしい。

結構最後のほうまで、店主が亡くなったのは客と店員から受ける心労が原因だったのではと勘繰りながら見てしまった。

 

《詳細》(観劇三昧HP参照)

■キャスト
染谷綾子
藤﨑啓
杉山朱里
古川日菜子
ヤスススム
棗田淳耶
安曇野やよい
小林妙子
北原華瑠那
水上あやみ
岩崎理沙(エヌ・クリエイション)
森川芽衣
濵田創
だんだー
西山晴香

■スタッフ
戯作・演出:鈴木実
舞台監督:わたなべひでお
照明:山岡茉友子
音響:ひのだい
舞台美術:猫侍
動画撮影・編集:平井将人
宣伝製作:ヤスススム
制作:劇団なのぐらむ
衣装・小道具:劇団なのぐらむ
企画・製作:劇団なのぐらむ

■あらすじ
田舎のバーを切り盛りしていた京子さん。
突然亡くなっちゃって…悲しいけど、みんなで店じまいをしよう。

京子さんの作る料理、おいしかったなぁ…。
でも京子さんってどんな人だったのかな?
私たち、京子さんのことあまり知らなかったかもしれないね。

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札幌座『民衆の敵』

2025-02-14 14:03:59 | 動画で演劇を見た(観劇三昧以外)

札幌座第62回公演「民衆の敵」

2025/2/12

・街の温泉施設の危険性を訴えた学者が、実の兄である町長らの反感を買い、集会で民衆の敵と認定される話。

・作者は『人形の家』で有名なイプセン。

・1882年に書かれた。140年以上前の作品なのに、扱う題材が完全に現役。イプセンがすごいのか、世間が進歩していないのかはよくわからない。

・本作は主に学者だけど、大手マスコミの記者とか、違法建築を目の当たりにした技術者とか、パンデミックを予見する医者とか、いくらでも今の構図に置き換えられる。

・一般的な民衆には、学者とインチキ学者の対立があった場合に、なかなか判別できない。

・そういうときって、学者は油断しているし、インチキ学者は必死だから、逆転現象も起きやすい。

・町長の主張も正直妥当性がわからない。

・この傾向はSNSのある今のほうが先鋭化している。

・民衆の敵を押し付け合う集会の様子は既視感しかない。

・いかにも翻訳劇という重厚なセリフのやり取り。

・登場人物もれなく存在感が強い。声の圧も強い。

・たまに変なポーズしたり、突飛な行動をする人もいるんだけど、コミカルな演技にすら迫力が伴う。

・町長役のクドクドした言い方にイライラさせられる。出てくるたびに、「またお前か!」と思わされる。敵役として理想的。杖と帽子が良く似合っている。演者は笠木誠さん。

・今すぐ健康被害が出ているわけではないようだし、あの兄弟、もう少しずつ妥協しあえば、あれよりはマシな結論出せたんじゃないかなと思ったりする。

・町長は結論ありきで話すから難しいか。

・結局、人事権を握っていると強い。

・温泉の配管モチーフと思われる舞台美術。

・広い空間を使い切っている。高さもある。工場萌え分野の人でも結構満足できそう。

・幕間で見せる、広義で言えばダンスのような人々の動き。脈絡のないダンスの挿入は嫌われがちだけど、具象と抽象の距離感が丁度よく馴染んでいるように見える。

・舞踏と演技のどちらかなら、演技なんだと思う。

・『人形の家』も人間100年くらいじゃ進歩しないんだなと思ったので、他のイプセン作品も気になってきた。

・まずは本作の戯曲にもあってみたい。

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田中慎弥『共喰い』

2025-02-11 23:34:43 | 読書感想文

2025/2/10

表題作と『第三紀層の魚』の二作品。

『共喰い』は、川辺の町で暮らす青年が、暴力と性欲で生きているような父親の影響下にいることに悩む話。

田中慎弥作品は初めてだし、現代作家の純文学もほとんど読んでいない。

年代的に作者の青年時代の実体験もそれなりに入っているんだろうなと思いつつ、描写の細かさと事象の非現実感とのギャップに戸惑う。

陰鬱とした話だなと読んでいるうちに、後ろから表題が追いかけてくるような構成。

文字だけでここまで描けるのはすごい。説明と描写はだいぶん違う。

『第三紀層の魚』は、同じように少年と曾祖父との交流と別れの様子を描いた話。

交流と言っても心温まるようなものではなく、他の家族との距離感の違い、人を亡くしたときの心の動きが細かく書かれている。

作者=主人公ではないにしても、鏡をしっかり見た、ごまかしのない自画像のような作品だった。

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アリ・アッバシ監督『アプレンティス ドナルド・トランプの創り方』

2025-02-10 10:55:10 | 映画を見てきた

2025/2/10

・青年ドナルド・トランプが辣腕弁護士のロイ・コーンとの出会いをきっかけに不動産業界で成功していく話。

・たくさんの人が行き交うなかで微動だにせず、トランプへ視線を向けてくるロイ・コーン。いかにも運命の出会いという感じ。

・こういう強調の仕方、ヒッチコックの『見知らぬ乗客』にもあるらしい。観てないけど。

・最初はオドオドしていたトランプ青年が、彼の三か条の教えにどんどん感化されていく。「攻撃攻撃攻撃」「絶対に非を認めない」「勝利したと主張し続ける」(大意)

・トランプが賢そうに描かれているし、特に批判的な表現も多くないので、結果、一昔前の伝記マンガのような印象。

・一回だけ「自分に都合の悪い科学は信じない」と言い張ったり、女性の扱いはほんと酷いけど、今さら過ぎて、それくらいではイメージダウンになりそうにない。

・表舞台の陰で周囲の人々の表情が曇っているのも「彼にとっての敵役」くらいの位置づけだし。

・優しい映画に影響を受けて実社会でも他者に優しくなる人がいるように、この映画を見て実社会で攻撃的になる人もいると思う。

・実際、この三か条が流行ってるのかと思うほど、似たような方針で行動をする政治家やインフルエンサーは、日本でもすでに多く見かける。

・なので、トランプが成功していく様子を無感情に眺める時間がどうしても多くなってしまう。

・ロイ・コーンの気の毒な顛末にも全然心が動かない。

・気になるのは、彼がどうしてトランプのためにここまで尽くしたのか。単純に好みだったのかな。そんなに浅い理由なんだろうか。

・トランプが今の感じになっているのは、かつて父親から軽んじられていたこと、家賃の取り立てで困窮者との付き合いを経験していることが、悪い方向に影響したように見える。

・彼が大統領になる前に終わるとは聞いていたので、どういう風にまとめるのかなと思っていたけど、納得できるように締めていた。汎用性高そうな構成。

・学びは多く見て損したとは思わないものの、自分の感覚では楽しい映画ではないので時間が長く感じる。終盤に突然直接的な外科手術シーンを入れるのも勘弁してほしい。

・経年変化していく二人を演じた俳優さんの卓越した演技に集中することで、何とか最後まで見ることができた。

・たぶんトランプが再選してなかったら、もう少しいいバランスで見られたと思う。

(2025/2/9 サツゲキ)

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ジェシー・アイゼンバーグ監督『リアル・ペイン~心の旅~』

2025-02-08 22:13:14 | 映画を見てきた

2025/2/7

・アメリカ在住でいとこ同士のデヴィットとベンジーが、ポーランドにあるかつての祖母の家を訪ねる話。

・ざっくり言うと、堅物の人間と奔放な人間が同じ時間を過ごすことで影響を与え合うかもしれないという、よくある話ではある。

・祖母がホロコーストのサバイバーで、二人はアウシュビッツの収容所をめぐるツアーにも参加する。

・ベンジーが奔放担当。とにかく自分に正直。その奔放さで、他のツアー参加者との距離を軽々と縮めていく。

・一見、細かいところは全然ダメだが、本質をとらえるタイプのように見える。

・ただ、それにしても雑なところが多すぎるし、たくさん失敗して傷ついて、このバランスに落ち着いたんだろうなという感じがする。

・実際、隣にいたら楽しいけど、面倒を見ろと言われたらとてもイヤ。

・その面倒を見る役が同行するデヴィット。そして、ツアーガイドの人。

・記念写真のところ、「敬意に欠けるのでは」と心配する気持ちはとても共感できる。

・ガイドの人がベンジーの指摘で機嫌を損ねている。

・彼の言うことはそこまで変なことではないし、むしろ貴重なご意見の範囲だけど、そういう言い方をしなくても…という葛藤しながら対応している様子。

・アウシュビッツのガイドだから、事務的であっていいはずはないし、そんなことは百も承知だろうけど、それでも言われないと気付けないこともあるようだ。

・ルワンダから来た青年。傾聴の姿勢が好き。

・デヴィットとベンジーはよく口論になるし、よく険悪な感じにもなる。

・この危うい関係性が作品の緊張感を保っている。

・決定的に決裂すれば、話のクライマックスにはなるんだけど、そういう話の作り方はしていない。

・最後、デヴィットの突飛に見える行動も、人付き合いの苦手な彼なりに、相手のことをよく見て感じて最善だと思った結果なんだと思う。

・若干、芯を外している感じもほほえましい。

・ベンジーは変わっていないという感じもするけど、大丈夫だと言わせることができたのはこの旅の成果だと思う。

・話の大枠は想像の範囲内でも、二人や他者との関係性、言葉や行動、情報の出し入れで、十分成立している。脚本と俳優の腕を感じる作品だった。

(2025/2/7 札幌シネマフロンティア)

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