「白秋」に想ふ―辞世へ向けて

人生の第三ステージ「白秋」のなかで、最終ステージ「玄冬」へ向けての想いを、本やメディアに託して綴る。人生、これ逍遥なり。

失われゆく「自然」としての「闇」―『本当の夜をさがして―都市の明かりは私たちから何を奪ったのか』:「ブクログ」より移行

2019年11月10日 | Ecology
☆『本当の夜をさがして―都市の明かりは私たちから何を奪ったのか』(ポール・ボガード・著、上原直子・訳、白揚社)☆

  数年間ツンドク状態だった本。忘れていた訳でも興味を無くした訳でもなく、むしろ反対で美味しい物を後に取っておいた感じだ(やや言い訳気味だが)。実際“食して”みて、思っていた以上に味わい深く、正しく“闇”を照らしてくれる本だった。20年ほど前に『夜は暗くてはいけないか』を読んで感銘を受けたが、それに匹敵するか、あるいはそれ以上のおもしろさだった。
  主題は光が持つ「光と闇」の物語。主張の焦点は「闇」にあるが、夜や暗闇の価値だけを賞賛したり、過去に還れなどとありがちな主張を繰り返したりする内容ではなく、例えば照明と犯罪(安全)との関係についても建設的で興味深い議論が展開されている。論点は「No Darkness」ではなく、むしろ「Know Darkness」である。
  天文書ではないので天文の知識は必要ないが、本当に星好きの(コンピュータシュミレーションなどにだけ興味があるのではない)天文学者や天文愛好家ならば、まちがいなく読むに値する本であると思う。
  現代人のほとんどは「満天の星」空を見たことがない(もちろん評者も)。過去には夜空を見上げればそこにあった星空という自然が次々と失われている。光の功罪だけでなく、星空のない環境下で育つ子どもたちは、星空の喪失によってその成長にどのような影響を被っているのか、環境問題の一環として、さらに人間・人類の未来を考える上でも現代人は危機感を持つべきである。
  ちなみに章立てにもある仕組み(工夫)が施されているので、見逃さないようにしたい。

  


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