「十日ぐらい経ってから、「あぁ、あれは良かったな…。」と、なり、つまり、一個の存在として心の内に残っている。生まれつき自分の単語、言語でしか言えない上に、そのフレーズフレーズの合わせ目をめかしこんで、滑らかに整えようとする気が更々なく、裸のまま並べて、それでよしとする潔癖性が、生理的にあるらしい。従って、判り難くなって損だが私は好きである。一見、筋も話もない、描写だけの短篇であるが、意味するところは人間の生の姿。理性でも思考でもなく、その原始的な重い姿の直写である。」【藤枝静男 → 小川国夫】
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