【ブロガー殺人事件 第５０話】

頑張ろう！広島！！

頑張ろう！日本！！

過去の【ブロガー殺人事件】各話は コチラから→→→☆


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『ヨシさん、すまんな。ホントは酒だったのが、コーヒーで』

赤賀がそう言い石原の前にコーヒーを置くと、石原は軽く会釈した後コーヒーを口に含み

『わかってましたよ、警部。どうしても言いたいことが、いや・・・

確信はあるけど自信が持てないと言う葛藤を私に話したかったんでしょ？』

赤賀は頭をかきながら

『参ったね・・・ヨシさんにはお見通しだったってことか』と笑った。

石原も『でしょう』と言い、笑いながらコーヒーを口に運んだ。

『で、私に話しておきたかった事とは何ですか？』

石原がコーヒーをそっと置き、問いかけた。

『うん・・・ヨシさんも言ってたように、確信を持てそうなんだが、果たしてそれが正しいかどうか自信はないんだよ』

『私はこの考えが正しいとも思うし、間違ってるかも、とも思う』

『だから、ヨシさんに素直な意見を聞いてみたいと思ったんだ』

『私の意見が警部の心の曇りを晴らすことが出来るとは思いませんが・・・』

赤賀は石原の謙虚と言うか、そう言う姿勢が大好きなのだ。

今回のように『結論に対して自分の意見が生きるとは思わない』と言いながらも、

石原の意見によって事件が大きく解決に傾いたことは数多あるからだ。

そんな事を考えながら、コーヒーを一口飲み、

『ふぅっ』

と息を吐き、石原をまっすぐ見つめてこう言った。

『岩津のことなんだ』

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【ブロガー殺人事件 第４９話】

頑張ろう！広島！！

頑張ろう！日本！！

覚えていらっしゃいますか？

当ブログ内で『ブロガー殺人事件』と言うチープで大したことない推理小説をアップしていた事を。

・・・覚えてない？

それも仕方ありません。

ほぼほぼ２年前のアップで止まってますから。

久々に『降りてきた』ので、アップさせてもらいます！

あ！

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赤賀が捜査員全員分の縦線を引き、石原がそこにランダムに横線を入れ、

他の捜査員たちも自分の好きなように横線を加えていった。

そして最後に赤賀が３本の線を足し、さらに星印を２つ書き足した。


『さぁ誰からでもいいぞ！好きなところを選べ！』


赤賀のその声で、捜査員が一人また一人と『ここだ』と思うところに自分の名前を書き始めた。


最後に石原が『残り物には福があるっていうからな』と言いながら名前を書いた。



『よし！全員書いたな！じゃあ結果を発表するぞ！』


そう言った赤賀は、あみだくじの書かれた紙をホワイトボードに貼り、星印の一つを辿って行った。



『おい、お前じゃないのか？』
『バカ言え！お前が当直しろよ』
『こんな機会ないからな』


捜査員たちの顔に、ひさびさに笑顔が生まれていた。

赤賀は『やはりやって良かった』と感じていた。
緊迫し続ける事で疲労は倍増する。
息抜き、ガス抜きは大事なのだ、と改めて感じた。


そして赤賀が言った。



『残ってもらう者の名を言うぞ！』
『申し訳ないが残ってもらうのは・・・・・・』





『ヨシさん・・・・・・と』



『私だ』

実は赤賀は、自らが残る事を前提としてこの飲み会を提案していたのだ。

自分だけは本部に絶対に残る。

そう言うつもりでいたから、誰が当直になろうと1人は自分が・・・と思っていた。



『ヨシさん、悪いな』


赤賀の言葉に石原は

『いえ、逆に警部と私で良かったと思ってます。若い奴らのガス抜きをしなきゃ、とは私も思ってましたし、

他の奴が当直になってたら無理を言ってでも自分にやらせてもらってましたから』

と言った。


赤賀は溢れ出しそうな笑顔を抑え

『そうか』

とだけ答えた。

若い刑事たちは、トップ2人が残ると言う事実にちょっと戸惑いを隠せない感じはあったが、

赤賀の

『ほら！早く行ってこい。店が閉まるぞ！』

と、若手を促してコーヒーを２つ、淹れに行った。

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【 ブロガー殺人事件 第４８話 】

頑張ろう！広島！！
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県警に戻ると、赤賀は石原に

『ヨシさん！ちょっと先に本部に戻っててくれないか？ちょっと寄りたいところがあるんだ。そこに寄って本部に顔を出すから』

そう言って赤賀は本部のある会議室とは反対方向へ歩いていった。

捜査本部は依然として重苦しい空気が漂っていた。

石原に遅れること１０数分後、赤賀も本部に戻ってきた。

赤賀は本部のドアを閉めるやいなや

『みんな、お疲れ。どうだ？今からあみだくじでもしないか？？』

石原をはじめ、本部にいた全員がキョトンとして赤賀を見ていた。

そのうちに誰かが言った。

『警部、あみだくじって・・・急に何を？』

おそらく本部にいる全員が同じ質問をしたかったに違いない。

全員一斉に赤賀の方を見た。

『いやなに。今日は一旦切り上げてみんなとちょっと一杯飲みに行こうかと思ってな。もちろん私の奢りだ』

『だが、本部を空っぽにするのは流石に気がひけるんで、あみだで当直と言うか留守番と言うか、

ここに残ってもらう者を決めようかな？と思ってな』

本部がにわかにザワつきはじめた。

『みんなの言いたいことはよく分かる。解決したわけでもないのに飲みに行くのはどうか？と思っていることは』

『だが、気持ちと頭を一度良い意味でリセットするのも、一つの手だと私は思うんだ』

『本部に閉じこもっていては見えないもの、感じないもの、思いつかないものも、一瞬でいい、

それを忘れて酒を飲めば、ひょっとしたら何か浮かんでくるかも知れないしな』

『しかし警部、流石にこの状況で飲みに行くと言うのは、松田課長に怒られてしまうのでは？』

赤賀は待ってましたとばかりにニヤっとして

『心配しなさんな。ついさっき松田課長に会って、ちゃんと了解を貰っている』

そう。赤賀は県警に帰ってすぐ石原と別れ、松田課長のところへ行き、今回の飲み会に関して納得してもらうよう説得していたのだ。

『大丈夫だ。飲み会の最中に万が一有事となれば、責任は全て私が負う。課長にもそう伝えてある』

赤賀はまるでドラマのように、右手で自らの左胸をドンと叩いて見せた。

これにはさすがの石原も

『そこまで警部が仰るなら・・・』と言い『おい！藤井！紙とペンを持って来い』と若手に指示を出した。

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【ブロガー殺人事件 第４７話】

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鑑識の井生によると、咲村の死因は頸部圧迫による窒息死。

『背後から首を絞められてますね。しかも、相当な力のようです』

『殺人・・・と見て間違い無いかと』

井生はそう言いながら、その場なら離れようとしたが、不意に立ち止まり

『短絡的ではなく、殺意を持った人間でないと、ここまで強く締め付けることはないと思います』

井生はそう言い残して現場を去っていった。

赤賀は井生の言い残した言葉をじっくりと考えていた。

（そこまで咲村に対し殺意を抱く人間とは・・・）

自分の中で少しずつこの事件に対する、解決の糸口が見つかりかけていたが

今回の咲村殺害で、少しずつそれが揺らぎ始めていた。

顎に手をやり、少しだけ俯き、赤賀は自分の中の情報を整理しようとしていた。

気づけば数分間同じ体勢、同じ格好で過ごしていた。

その様子を見ていた石原が、赤賀に声を掛けた。

『私は咲村は多加田殺害の犯人では無いと思っていました。でも、まさか殺害されるとは思ってもいませんでしたよ』

『もちろん、多加田殺害事件と今回の咲村殺害事件が関連があるか無いかは分かりません。

ひょっとしたら全く別の案件、別の事件に巻き込まれただけかも知れませんし』

『ただ、もしも多加田殺害と咲村殺害に関連があるとしたら、不謹慎ですが解決の糸口的な何かがあるんじゃないですかね？』

赤賀は石原の慰めにも似た口調に、フッと肩の力が抜け、顎にやった手をスッと下ろした。

そして

『そうだよな。我々が呼ばれたからと言って、咲村殺害と多加田殺害が関連があるとは言い切れないんだよな』

『それにヨシさんの言うように、もしも多加田殺害と関連があるのであれば、本当にそれは不謹慎だが咲村殺害はあるきっかけになり得るしな』

赤賀は自分でもおかしなことを言っている、不謹慎だと思いながらも、石原の慰めにも似た言葉に

救われた気がしてならなかった。

『うん。ヨシさん。本部に戻ろう。』

赤賀はそう言って、パトカーに乗り込んだ。

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【ブロガー殺人事件 第４６話】

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少しだけ秋の気配が強まってきた感じのある広島港。

そこから１１０番通報があった。

男の水死体が上がったとの通報だった。


赤賀と石原は現場に急行した。

人だかりをかき分けるようにして、２人は規制線の中へと進んでいった。

そこには、数人の警官と鑑識、そして第一発見者の男がいた。

赤賀は警官から現状を聞き、第一発見者に話を聞くことにした。

その男は恰幅のいい６０代の男だ。

赤賀がその男に話を聞く。


『 東広島の帰りに、久々にフェリーが見とぉてここに寄ったんよ 』

『 ほしたら丁度フェリーは出港した後で・・・』

『 仕方ないけぃ帰ろうか思いよったら、なんか浮いとるのに気づいてね 』

『 最初はゴミか思うたんじゃけど、よぉ見たら人じゃあって気づいたんよ 』



その男は興奮気味に赤賀と石原にまくし立てた。

第一発見者は、東広島でメガネ店を営む、坂下洋と名乗った。


赤賀と石原はホトケを確認した。

するとその瞬間、２人で顔を見合わせた。

と同時に、自分達がこの現場に呼ばれた意味も理解した。


水死体として目の前に横たわっていたのは、多加田殺人の容疑者の１人である

Mr.ブーこと、咲村だったのだ。

それと同時に、坂下が驚いた様に声を張り上げた。

『 えっ！？ありゃあMr.ブーさんじゃないん？』


赤賀は坂下に改めて話を聞いてみた。

聞けば、坂下もブログをやっており、Mr.ブーこと咲村と

何度も顔を合わせている、いわゆる知り合いだと言うのだ。

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【 ブロガー殺人事件 第４５話 】

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『 結論から言いますと、咲村を乗せた・・・と言うタクシーは見つかりませんでした 』

朝山が続いて

『 咲村を乗せたと言うタクシーの運転手はいませんでしたが

咲村らしい人物を見かけた・・・と言う運転手は見つけました 』


捜査本部内の眼は、朝山と山口２人の口元に集中している。


山口が手帳を見ながら続けた。

『 そのタクシーは咲村が住む街のタクシー会社で、咲村らしい人物を見かけたのは

午後２１時過ぎ、呉市内の繁華街で・・・との事でした 』

『 咲村の写真を見せると、運転手が【 あぁ、この人なら覚えてるよ 】と 』


『 繁華街とは言え夜だろ？その運転手は何故咲村のことを覚えていたんだ？』

石原が山口に問うてみた。

山口は朝山を見た。朝山はコクリと頷き山口に先を促した。


『 運転手は咲村がカープのユニフォームを着ていたので印象に残った、と 』


『 今時街中でカープのユニフォームを着ている者なんてたくさんいるじゃないか。

何故咲村だけを覚えていたんだ？』

石原は不思議そうに問いかけた。


すると朝山が

『 それは、咲村が着ていたユニフォームの背番号が５７番で、

選手名が【 KAWAGUCHI 】だったからです 』

『 川口盛外のユニフォームで、その川口はもう何年も前に引退しています。

さらに現役時代、一軍登板のなかった投手です 』


『 そして、運転手も実は当時川口盛外のファンで、珍しいユニフォームを着ていた咲村が

すごく印象に残ったと言ってました 』


『 その後、咲村はとある飲み屋に入っていったそうです 』


『 その店の店主に話を聞いてみたら、咲村は夜中の２時過ぎまで居た・・・と言っていました 』

『 これにより、当日の咲村のアリバイはほぼ確立されたのではないかと思います 』



山口が少しだけ残念そうな表情を見せた。

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【 ブロガー殺人事件 第４４話 】

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朝山が続ける。


『 主人の証言で、ナイターを見た後に寝た・・・と言う咲村の証言は、ほぼ崩れました 』

『 そして、咲村が犯人じゃないのかと言う疑惑も生まれました 』


確かにそうだ。


刑事に対し『 テレビを見てそのあとは寝た。証言できるものはいない 』

そう言っていた人物が、実際はナイター中継を見終えて寝るどころか

その後に出かけていると言う。


しかも、いくら呉市内からとはいえ、その時間に出かけているのであれば、

マツダスタジアム付近で発見された多加田の死亡推定時刻に十分間に合うのだ。


捜査本部内がざわつくのも無理はない。


石原が『 一体どこに出かけたと言うんだ？広島市内か？ 』と言うと


朝山が『 翔！ 』と、山口にその後の説明を任せた。


本部内に一瞬の沈黙が流れ、静かに山口が口を開いた。



『 我々も佐々岡さんと藤井の時と同じように、咲村の自宅近辺のタクシー会社、

さらに運転手、用心に用心を重ね、呉市外近郊のタクシー会社にも問い合わせました 』


赤賀はその山口の表情に、一瞬微笑んだ。

山口がチラッと藤井の方を見て（どうだ）的な表情を見せたからだ。


赤賀は若い刑事たちが競い合い、それぞれがそれぞれの力を伸ばしてくれるのが嬉しいのだ。

誰かが手柄を挙げるなら、それに刺激を受けた他の誰かが

それを上回る結果を出してくれるに越したことはないと思っているから。

若い刑事が互いに競い合うことで、それぞれのスキルを上げていってくれたら

これ以上の喜びはないし、この先色んな事件が起きても安心して若い刑事に任す事ができるからだ。


そんな気持ちを抑えつつ、赤賀は山口に

『 で、聞き込みの結果は？ 』と聞いてみた。


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【 ブロガー殺人事件 第４３話 】

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朝山と山口も帰ってきた。

２人は咲村の担当だ。


朝山がメモを開きながら話し始めた。


『 咲村ですが、事件当日に家で野球中継を見ていたかどうかの確証は取れませんでした 』

『 ただし、その後の彼の行動に関しての情報を得ることができました 』



『 ２１時前に中継が終わり、死亡推定時刻までの間、と言う事だな 』

石原は確認した。


『 そうです。死亡推定時刻に本当に家にいたのかどうか・・・と言う事です 』


『 我々は階下の住人に再度聞き取りを行いました 』

『 すると、意外な情報が飛び込んできました 』


『 なんだ？その意外な情報と言うのは？ 』

石原は先を促した。



『 はい。事件発生後の聞き込みでは、咲村は中継を見終えて寝た・・・と言っていました 』


『 階下の住人も、２１時までは声が聞こえたが、その後静かになっていた・・・と言っています 』


『 ところが、その聞き取りの最中に階下の住人の主人が顔を出して・・・ 』



『 咲村が２１時過ぎに出かけているのを見かけた、と言うんです 』



『 なんだと？その主人はなぜ今になってそんなことを話したんだ？』


石原が問うと、朝山は再びメモを見ながら


『 うちの刑事が聞き込みに行った際、対応したのは奥さんの方でして。主人は留守だったそうです 』


『 奥さんの方も我々警察が来たと言う事を最近になって主人に伝えたところ、

主人が出かける咲村を見たと言い出したんだそうです 』


『 警察に連絡しようとしていたら、ちょうど我々がやってきた・・・ということでした 』


少し捜査本部がザワつき始めた。


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【 ブロガー殺人事件 第４２話 】

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プレゼント企画へのご応募お待ちしております！



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翌日、森笠と中村両刑事が滝の情報を持ち帰ってきた。


滝はいつもなら講演や俳優としての仕事場への移動は、自家用車を使っているのだが

事件当日に限って新幹線移動だった。


２人の話によると、滝が事件当日新幹線で福岡へ移動したのは

どうやら車検と言う事で車を預けていたから・・・という事だった。

車が無いから新幹線で。

考えてみれば単純な理由だ。


と言うことは、滝の言う居酒屋ロケのあと２３時頃帰宅、

当日の奥方の証言、そして翌日の新幹線ホームの防犯カメラの映像に映る姿。

このアリバイは九割九分正しいと言うことだろう。

自動車整備工場にも話を聞きに行き、帳簿を確認したが、滝の車は事件前日には

同工場に引き渡されていた。



森笠と中村両刑事の報告が終わると同時に、佐々岡と藤井の両刑事も戻ってきた。


２人は女将こと北川の報告を持って帰った。



北川は事件当日、１人自宅で野球を見ていた。

２人の報告によると、北川の友人だと言う人間数人に会って話を聞いてきたと言う。

そのうちの１人、大文字美優妃と言う女性が


『 当日、北川と無料通話アプリでやり取りをしていた 』

『 途中、何をしているのか問うたところ、１人で野球を見ていると返事があった 』

『 彼女の家、いや店ではケーブルテレビでカープの試合を、全試合試合開始から終了まで見れる 』

『 やり取りの途中、彼女から自撮り画像が送られてきて、その画像にはカープの選手を写すテレビ画面もあった 』

と証言した、と言うのだ。


佐々岡は大文字からその画像を見せてもらい、北川のアリバイが正しいと判断したと言う。


と言うのも、その添付された画像には、顔を赤らめた北川とテレビ画面、

加えてビールの空き缶が数個と、壁には時計が写っていた。



その時計が２２時４５分を指していた。

通話アプリの受信時刻も、２２時５１分となっていた。

もしその後、多加田を殺害したとすれば、時間的に車で行くにしてもかなり厳しい。

ましてや飲酒運転となる。


殺しに行くのに、飲酒運転と言う危険を冒すだろうか？

そう思い周辺のタクシー会社に片っ端から問い合わせてみたが

当日の２２時半から翌０２時頃まで北川らしき女性を乗せたと言う証言は得られなかった。

かなり甘い判断かもしれないが、これにより北川のアリバイは確立されたと言っていいだろう。



赤賀もまた同じように思った。

もちろん、その裏には赤賀しかわからない思いがあったから・・・だ。


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【 ブロガー殺人事件 第４１話 】

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東出が話を続けた。


『 ある日、岩津が店に来て店主の奥さんである下杉優子に・・・ 』

『 アルカリウォッシュはあるか？と言ったそうです。』


『 アルカリウォッシュ？それは？』

石原が東出に聞くと、横にいた高橋が


『 アルカリウォッシュとはセスキ炭酸ソーダのことで、重曹と炭酸ナトリウムの複塩であり両方の中間的な成分を持つものです。』


『 そのアルカリウォッシュがなんだと言うんだ？ 』

石原がさらに問うと


『 アルカリウォッシュは、洗浄効果が高く・・・ 』

『 特に血液汚れに対して洗浄効果が強いんです 』

高橋はどうだと言わんばかりの得意顔で答えた。


そんな高橋の姿を見て東出は苦笑いを浮かべている。


『 つまり・・・ 』

高橋が言いかけたのを制したのは赤賀だった。


『 つまり、岩津には何らかの理由で血液汚れを落とす必要があった・・・と言うことだな 』


『 その通りです 』


『 だが岩津は釣りもするんだろう？魚の血がついてそれを洗うために・・・と言うことは無いのか？ 』

石原が言うと東出は


『 もちろん、アルカリウォッシュを買ったから、と言うだけでは特に問題はないかと思ったんですが 』

『 もし魚の血を洗い流すため・・・と言うことなら、何度か購入しているはずです 』

『 その辺りを下杉優子に聞くと、岩津が店に来たのは初めてで、アルカリウォッシュの事を聞くときに

品名を忘れていたらしく、下杉優子が話の内容からアルカリウォッシュだと理解して商品を用意した・・・と言う事でした 』

『 そして岩津はどういう風に使えばいいのか・・・とも聞いてきたと言ってました 』

と言う。



『 いつも魚の血を洗い流すために使ってはいなかった、と言う事だな 』

赤賀はそう言い、


『 ２人とも、もう少し岩津周辺を調査してもらえないか？ 』


と伝えた。


２人は再び本部を飛び出して行った。


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【 ブロガー殺人事件 第４０話 】

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『 岩津なんだな？ 』


赤賀が確認する様に言うと、東出、高橋両刑事は大きく頷いた。


『 その岩津に関してですが、警部の仰る様に周辺はもちろん、地域的には無関係と思われるところまで話を聞いてきました 』

『 自営業という事で色々と動いているだろうと思い、主に広島市内各所で岩津の話を聞くことができました 』


赤賀は逸る気持ちを抑えつつ、２人の話を聞いていたが、つい

『 それで？ 』

と、先を急がせてしまった。



東出が落ち着いた感じて喋り始めた。


『 はい。まず我々は岩津の交友関係を改めて調べ直し・・・ 』

『 市内のとある場所にある、老舗店舗にたどり着きました 』


高橋が続ける。


『 そこの店主・・・正確には店主の奥さんが岩津の事をよく知っている・・・と 』


石原が『 その店の名前・・・ 』と言いかけたところで、赤賀が制して

『 続けてくれ 』と言った。



『 はい。その店舗の名前は【 シモスギ薬局 】、中区の舟入にあります 』


（ なるほど ）

赤賀は心の中で呟いた。


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【 ブロガー殺人事件 第３９話 】

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『 あれは・・・ 』


いくら市電がゆっくり走るとは言え、目にした風景は一瞬で目の前から消え去って行く。


赤賀は舟入南電停で降り、そこからタクシーを拾って、急いで本部へと戻った。


本部に戻った赤賀を待ち構えていたかのように石原が駆け寄ってきた。


『 警部、早速ですが・・・ 』


石原の様子から、何かしらの情報が入ったというのは容易に察することができた。


石原が招いた先には、ホワイトボードがあり、その前に東出、高橋両刑事が立っていた。


『 ２人とも、さっきの話をもう一度警部に頼む 』


石原がそう言うと、若い高橋が『 はい！ 』と大きな声を出し、

手帳を見ながら『 んんっ！んん"っ！！ 』と咳き込み、話し始めた。


『 まずは・・・んんっ！んん"っ！私と東出さんとで回・・・んんっ！んん"っ！回り、

気になるこ・・・んっ！んん"っ！んんんっ！んん"っ！』


見かねた東出刑事が『 私の方から 』と言う。

高橋刑事も一度は『 自分が 』と食い下がったが、東出刑事の

『 これも経験だ。見ておけ 』

との一言でおとなしく引き下がった。


『 えー、我々が得た情報なんですが・・・ 』




『 岩津に関する情報です 』

東出刑事と高橋刑事は、岩津の身辺を洗い直していたのだ。


赤賀はまずは２人の労をねぎらい、話を聞き始めた。


赤賀の頭の中には、４人のうちの１人の名前が浮かんでいた。


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【 ブロガー殺人事件 第３８話 】

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赤賀は市電の車窓から、広島市内を眺めていた。


街はカープの２５年ぶりの優勝を今か今かと待ち侘びているようで

『 がんばれカープ！ 』と書かれたバナーが風に揺られ、

地元の放送局では優勝へのマジックナンバーを記したものを掲示していた。



赤賀の乗った市電のアナウンスも、よく聞いたらカープの選手の声だ。


どこを見てもカープ一色。

それだけ地域に浸透していると言う事なんだろう。




広島には同じプロスポーツ、サッカーのサンフレッチェ広島があるが


やはりカープとは歴史が違うせいか、サンフレッチェが上位争いしていても

街は今のカープほど『 街が紫一色 』とまではならない。

戦後の廃虚から、復興のシンボルとして広島に根付いていたカープと

２０数年前Ｊリーグが開幕し、新たにプロ集団として認識されたサンフレッチェ。

それは致し方ないことだろう。




『 それぞれが輝いて、広島が盛り上がるのが一番なんだがな・・・ 』



そんな時、市電は舟入辺りを走っていた。





『 ・・・ん？ 』



赤賀は車窓から目にした風景に、思わず身を乗り出した。

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【 ブロガー殺人事件 第３７話 】

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赤賀が捜査員に徹底捜査を支持して丸一日が過ぎた。


しかし、有力な情報は入ってこなかった。

（ まぁ１日や２日で情報が出てくるとは思っていないが・・・ ）

赤賀は焦る気持ちを抑え、捜査員からの情報を待った。



だが、３日経っても４日経ってもこちらが望む知らせは届かない。


赤賀は石原に


『 ちょっと出てくるよ 』と伝えた。


石原は共に行こうと支度を始めたが、それを赤賀は手で制して


『 ヨシさんは残っていてくれ。何かあった時、２人とも居ないと困るだろ？』


そう言って本部を出た。



赤賀はパトカーでは無く、少しばかり歩いた。


向かった先は広島電鉄の立町電停。

赤賀は市電が好きだった。


普段は犯人を追うべく時間に追われ、街中もどちらかと言えば

早足で歩き、車でも急いで走っている。


市電はのんびりと、街中を縫うように走る。

そんな市電に乗り、ゆっくり流れる街の風景を眺めるのが好きなのだ。


捜査に行き詰まり感が生まれ、多少焦りを感じ始めた赤賀は

自分の気持ちを落ち着かせるため、市電に乗る事にしたのだ。


それにしても、師走が近づいているからだろうか、街中には人が多い。

カープのユニフォーム姿で歩く人、同じくカープのユニフォーム姿で店の前に立つ店員。

それぞれがホーム用の白いユニフォームではなく、ビジター用の赤いユニフォームを来ている。

赤賀は以前テレビで見たのを思い出した。


プロ野球球団の公式グッズとして販売されるユニフォームは、ホーム用、ビジター用それぞれあるが

だいたいホーム用の方が売れ行きは高い。

だがカープの場合は、圧倒的にビジター用のユニフォームが売れている、と。

（ 昔はユニフォーム姿で街中を歩く人などいなかったのにな ）

そんな事を考え、赤いユニフォームを目で追っていた。


そんな赤賀の気持ちを汲んだかの如く、市電は普段よりゆっくりした速度で

街中を縫うように南下していった。


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【 ブロガー殺人事件 第３６話 】

頑張ろう！西日本！
頑張ろう！広島県！
頑張ろう！日本！！



過去の【ブロガー殺人事件】各話は コチラ→→→☆




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『 あぁ、あの時の！』



石原はその時を思い出しながら、且つ首を傾げつつ

『 あの場面の何処がウソだと？ 』

と赤賀に問うた。


すると赤賀は持っていたコーヒーカップをテーブルに置き、タバコに火をつけながら


『 女将は元々広島の人間ではない。さらに数年前からカープに、いや野球に興味を持ち始めた、と言っていた。』

『 その後ヨシさんが大好きな選手を聞いたよね？そしたら女将は新井だと即答した、ここまでは嘘ではないんだよ。』

『 その後だ 』



『 その後？』

石原はその時のことを一生懸命思い出していた。

数秒後『 あっ！』と大きな声を出した。


赤賀はニヤリと笑い、

『 そうなんだよ。あの言葉こそウソなんだよ。』

と言う。


『 そうか！数年前からカープに興味を持ち始めたのに、女将は『 入団した時から新井のファンだ 』と言っていた！ 』

石原はジグソーパズルが完成した子供のように明るい表情で赤賀を見ていた。


しかし赤賀は

『 ただ、そのウソが本当に事件に関与しているからこそのウソなのかどうなのか、そこごまだわからないんだよ。』


赤賀はそう言いながらタバコの火を消し、コーヒーを一気に飲み干した。



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