
京都の清水坂を歩いていて、ちょっと気になるお蕎麦屋さんを発見。そこは営業していなかったものの、本店が先斗町にあるのを知って行ってみました。場所は先斗町の突き当たりに近い歌舞練場の隣。
入ると一階は満員。地下に案内されます。なかなかのにぎわい。テーブルにはメニューのほかに「おいしいお蕎麦の食べ方」なるマニュアルまで。これはこだわりのお蕎麦屋さん。期待が持てます。さらに、蕎麦塾を催し啓蒙活動を行っていること、京都府知事賞を受賞したことなど、いろんなアピールが目をひきます。
ビールと天ぷらを食べ(ビールを頼むと可愛い蕎麦みそがついてきました)、いよいよせいろを注文(せいろは二八ですが、十割のざるもあります。ぼくは二八の喉ごしが好きなので)。
「おいしいお蕎麦の食べ方」マニュアルによれば、まず、つゆにつけずに食べる、とある。うん、ぼくもたかさごや竹やぶとかでやる。お蕎麦のほのかな甘みと香りをストレートに味わえます。
で、一口。
う。なんの味も香りもない。まあ、季節が悪い。蕎麦の旬は秋から冬だもんね(でも、大塚の岩舟の蕎麦は味があったけれどなあ)と気を取り直して味わいます。
しかしコシもない。喉ごしどころの話ではない。ノリっとした食感。
加水の加減が悪いんじゃないかな。これは蕎麦打ちで一番失敗しやすいんだけれど、つなぎにくい旧蕎麦のとき、どうしても水を多めに加えてしまうんです(3%ほどの狂いでも明確に味に反映されるのだ)。
つゆがまた珍妙。よく醤油が薄いことを「甘い」と表現するけれど、このつゆは違う。砂糖か味醂が多すぎて文字通り甘いんです。
店主のプロフィール(そんなものもメニューに載っている)によれば東京の上野藪蕎麦で修行した、とありました。7店も支店展開しているから店主が打ってはいないだろうが、このだらしない蕎麦はなんだろう? 上野藪蕎麦と言えば、名店も名店(ぼくのなかで、池之端藪蕎麦、蓮玉庵とともに上野ゴールデントライアングルと名付けられている)。とてもそこで学んだお蕎麦とは思えません。
いつもは違うのかもしれないが、このお蕎麦で「現代の名工」とは。鵜飼良平さん(上野藪蕎麦の店主)に是非食べて頂きたいと思いました。