「そういう社会では年長者がもっとも大事にされます」彼女の説明は続いた。
「生きていく上での知識の蓄積が大切だから?」
「そうです、そうです」
なるほど。ちょっと前から気になっていたことのヒントになりそう。村社会には、村を運営していく日常的な団体と、お祭りなどに関わる非日常的な団体があるのだけれど、たいていの場合、非日常的な団体は年齢階梯制を取ることが多い。
たとえばその起源を旧石器的な思考(決して旧石器時代に生まれた、というわけではなく、その思考法が旧石器時代の人類に由来するということ)に求めることはできないだろうか。なんかいいヒントをもらっちゃったYO、と少しなぜかラップ調に。
ヘイ、YO。「脳なんか一歩も進化してないよ、3万年前からずっとこんなもんよ」なんて感じで(って、なんで?)。
「環境破壊とかいろんな問題がある中、もう一度この時代の考え方に触れることも大切なんじゃないかと私は思うんですよね」と彼女。「温暖化で海が広がっていくなんてことは前にもあったことですし」
「縄文海進とか」
「ええ、そうです」
博物館をあとにして、森山大道の言葉をつぶやいてみる。「過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい」

博物館近くの岩宿ドーム。
中に岩宿B地点の剥離した地層が展示してある。関東ローム層がはっきり見えて面白い。かつては発掘している途中、ローム層に行き当たった段階で発掘を中止していた。ローム層が堆積している頃、日本列島に人間はいなかったとするのが学会の常識だったからだ。
この常識をくつがえしたのが、このあたりを行商をしていた考古学ファンの相沢さんだった。
博物館の彼女の言う通り、彼は納豆を行商し、明治大学の考古学研究所まで自転車で往復した。博物館の中で流れた映像に彼が自転車に乗る姿があったが、あの重そうな普通の自転車で往復240km日帰りで走ったのか、我が身の未熟さを感じる。好きなことは、これだけの熱意を注いでやる。その先に行かないと見えないものがある。

岩宿駅からまた両毛線に乗り、前橋を目ざす。
電車が岩宿から遠ざかるにつれ、博物館で丁寧に説明して下さった女性との距離も離れていくんだな、と実感。もう二度と顔を合わすことはないだろうから、いい印象しか残さない人。旅がもたらす感慨には、そういう人との出会いも含まれる。会津で結果的には定休日のラーメン屋さんだったけど、親切に教えてくれた人。川越の博物館でこれまた丁寧に説明してくれたボランティアの人。
みな旅がもたらしてくれたぼくの財産だ。

最終地前橋。両毛線の終点は高崎なのだけれど、時間さえあえば前橋から高崎線に直接接続している路線があるのでそれをチョイス。なぜなら、帰りの電車は、ぼくにとって宴会場。新幹線を使わないかわりにグリーン車で一人酒盛り。乗り換えなしに少しでも長い方が楽しいじゃない。湘南新宿ラインの方が池袋へ行くので便利なのだけれど、あれはそのまま神奈川まで繋がっているので、グリーン車が混む(大宮から横浜へ行く人とか)。それにひきかえ、高崎線は上野停まりなので、それほど混まない(というか、この日は1車両にぼくを入れて2人)。宴会にはぴったりなのだ。
そんなわけで前橋で唯一行ったのが駅前のイトーヨーカドー。無類のスーパー好き。お、これは東京じゃ売ってないぞ。この野菜安い! 帰りのつまみはこれにして、お弁当はこれ、あ、こっちは20%引きになってるぞ、とスーパー三昧、楽しんで電車に乗り込む。
本を読んだり、ウォークマンを聴いたり、撮ったデジカメの写真を眺めたり、ゆるやかに夜は過ぎていく。
「生きていく上での知識の蓄積が大切だから?」
「そうです、そうです」
なるほど。ちょっと前から気になっていたことのヒントになりそう。村社会には、村を運営していく日常的な団体と、お祭りなどに関わる非日常的な団体があるのだけれど、たいていの場合、非日常的な団体は年齢階梯制を取ることが多い。
たとえばその起源を旧石器的な思考(決して旧石器時代に生まれた、というわけではなく、その思考法が旧石器時代の人類に由来するということ)に求めることはできないだろうか。なんかいいヒントをもらっちゃったYO、と少しなぜかラップ調に。
ヘイ、YO。「脳なんか一歩も進化してないよ、3万年前からずっとこんなもんよ」なんて感じで(って、なんで?)。
「環境破壊とかいろんな問題がある中、もう一度この時代の考え方に触れることも大切なんじゃないかと私は思うんですよね」と彼女。「温暖化で海が広がっていくなんてことは前にもあったことですし」
「縄文海進とか」
「ええ、そうです」
博物館をあとにして、森山大道の言葉をつぶやいてみる。「過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい」

博物館近くの岩宿ドーム。
中に岩宿B地点の剥離した地層が展示してある。関東ローム層がはっきり見えて面白い。かつては発掘している途中、ローム層に行き当たった段階で発掘を中止していた。ローム層が堆積している頃、日本列島に人間はいなかったとするのが学会の常識だったからだ。
この常識をくつがえしたのが、このあたりを行商をしていた考古学ファンの相沢さんだった。
博物館の彼女の言う通り、彼は納豆を行商し、明治大学の考古学研究所まで自転車で往復した。博物館の中で流れた映像に彼が自転車に乗る姿があったが、あの重そうな普通の自転車で往復240km日帰りで走ったのか、我が身の未熟さを感じる。好きなことは、これだけの熱意を注いでやる。その先に行かないと見えないものがある。

岩宿駅からまた両毛線に乗り、前橋を目ざす。
電車が岩宿から遠ざかるにつれ、博物館で丁寧に説明して下さった女性との距離も離れていくんだな、と実感。もう二度と顔を合わすことはないだろうから、いい印象しか残さない人。旅がもたらす感慨には、そういう人との出会いも含まれる。会津で結果的には定休日のラーメン屋さんだったけど、親切に教えてくれた人。川越の博物館でこれまた丁寧に説明してくれたボランティアの人。
みな旅がもたらしてくれたぼくの財産だ。

最終地前橋。両毛線の終点は高崎なのだけれど、時間さえあえば前橋から高崎線に直接接続している路線があるのでそれをチョイス。なぜなら、帰りの電車は、ぼくにとって宴会場。新幹線を使わないかわりにグリーン車で一人酒盛り。乗り換えなしに少しでも長い方が楽しいじゃない。湘南新宿ラインの方が池袋へ行くので便利なのだけれど、あれはそのまま神奈川まで繋がっているので、グリーン車が混む(大宮から横浜へ行く人とか)。それにひきかえ、高崎線は上野停まりなので、それほど混まない(というか、この日は1車両にぼくを入れて2人)。宴会にはぴったりなのだ。
そんなわけで前橋で唯一行ったのが駅前のイトーヨーカドー。無類のスーパー好き。お、これは東京じゃ売ってないぞ。この野菜安い! 帰りのつまみはこれにして、お弁当はこれ、あ、こっちは20%引きになってるぞ、とスーパー三昧、楽しんで電車に乗り込む。
本を読んだり、ウォークマンを聴いたり、撮ったデジカメの写真を眺めたり、ゆるやかに夜は過ぎていく。