<貿易赤字>最悪2.9兆円…上期、燃料輸入膨らむ
毎日新聞 7月25日(水)11時8分配信
財務省が25日発表した12年上期(1~6月)の貿易統計速報(通関ベース)によると、製品や原材料の輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は2兆9158億円の赤字(前年同期は9632億円の赤字)となり、第2次石油危機後の80年上期(2兆6217億円の赤字)を上回って半期ベースでは過去最大の赤字となった。輸出は、東日本大震災後、部品供給網の寸断などで落ち込んだ反動もあってプラスに転じたが、原発の稼働停止に伴い、火力発電向け燃料の輸入が大きく膨らみ、収支が悪化した。【柳原美砂子】
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120725-00000027-mai-bus_all
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貿易赤字が過去最悪を記録した。原因の一つに、火力発電向けの燃料輸入コストが挙げられているが、それは言い方を変えれば、原発がなければ日本経済は本来これだけのコストを抱えていたことを裏付けるものでもある。今まで日本人が電力を不自由なく使えていたのも、やはり原子力発電の功績によるところが大きいのは紛れも無い事実ということだ。
とは言っても、大規模地震がいつどこで起きても不思議ではないこの国において、これ以上原子力発電に頼りすぎることは最早現実的とはいえない。それは、国民感情の側面においてもそうだが、経済的な側面から考えてもである。
原子力発電の推進にあたって、これまで政府・電気事業連合会がアピールしてきたのは「原子力発電はクリーンなエネルギー」という点である。無闇に公害を発生させないからこそ、その推進に対して(一部の人たちを除き)異論を唱えなかった。
しかし今回の事故によって、原子力発電がクリーンなエネルギーであるというアピールポイントは失われ、火力発電等と同様に外部不経済であることが証明されてしまった。しかも、ただ単に外部不経済であるならまだしも、内部化させるには莫大なコストが必要で、その負担分も結局は電力の受益者に降りかかるというのがインフラ産業の面倒な点である。
そこで現在推進されているのが、太陽光発電や風力発電等のいわゆる再生可能エネルギーによる発電である。ただし、再生可能エネルギーによる発電は技術的に発展途上ということもあり、安定供給という観点から見ると不安要素も大きい。
もちろん、再生可能エネルギーによる発電に対する需要が増加していけば、技術革新の可能性も高くなり、将来的には原子力発電よりローリスクかつ同水準のコストになっていくものと考えられる。だが、そこに至るまでに一体どれだけの期間、どれだけのコストを払い続けなければならないのか予測が立たないのだから、原子力発電により賄っていた分の発電量を転嫁するということは現段階では現実的ではない。
結論としては、3.11以降の日本国民と電力の関係性は雁字搦めであるということだ。どこへ動いたとしても、リスクかコストのどちらかが付き纏う。大飯原発再稼働にしても、リスクをとるかコストをとるか考えあぐね、雁字搦めで流れ着いた結果であると言える。12年上期においてのコストはこの程度であったが、来年以降はどのように推移していくか。それは、再生可能エネルギーの技術的発展具合と、リスクとコストどちらを選ぶかの決断に掛かっていると言える。