釧路炭鉱に10万キロワット火発 コールマインが構想
北海道新聞 8月7日(火)午前6時53分
【釧路】国内唯一の坑内掘り採炭を続ける釧路コールマイン(KCM)は、採炭する石炭や副産物のメタンガスを利用した出力10万キロワット級の火力発電所を敷地内に建設する構想をまとめた。建設費は数十億円を見込み、国の補助金や電力関連企業の出資を想定。採炭から発電、廃棄物処理まで一括して行うことで発電コストを大幅に削減し、北海道電力への売電を軸に電力を供給する。
東日本大震災以降、北電泊原発(後志管内泊村)をはじめ全国の原発が停止して電力供給が逼迫(ひっぱく)し、石炭火発が見直されていることを踏まえた。建設時期は未定だが、国委託の研修事業などに依存する同社が自立し、長期的に採炭を続けるための新規事業に位置付けている。
<北海道新聞8月7日朝刊掲載>
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/economic/394132.html
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東日本大震災に伴う福島絵第1原発事故を契機に、日本全体としてエネルギーのあり方に対する問いかけが為された。原発廃止の世論も高まり、日本各地の原発は運転を停止した一方で、原発によるエネルギーの代替措置として休眠状態だった火力発電所をフル稼働することとなった。また、いわゆる再生可能エネルギーへの注目が集まり、風力・太陽光等の発電に要する用地確保が活発化している。
釧路市西部から白糠町東部にまたがる釧白工業団地へのメガソーラー進出については、先日記事にしたが、今度は火力発電である。日本最後の坑内掘り炭鉱である釧路コールマインは、釧路市益浦・興津地区に10-15万kw級の石炭/メタンガス混合型火力発電施設を建設する構想であることを発表した。詳しい計画や予算に関してはまだ検討段階であるため、必ず実現するとはいえない。だが、もし実現すれば、日本製紙釧路工場火力発電所からの発電量と合わせることで釧路管内の電力的な自立が可能となる。そればかりでなく、90年代以降は慢性的に不況の釧路にとって、大規模な雇用受け皿が出来るという大きな意味をも有する。
一方で、今回の構想は釧路コールマインという一民間企業から発せられたということに着目する必要もある。つまり、本来であれば行政主導で提起されるべき構想ではないか、ということだ。福島絵第1原発事故は、奇しくも日本全体に対して大きなエネルギー政策の転換を迫った。この潮目を冷静に見極め、持てるポテンシャルを生かして自分達の利益にする能力が行政には必要である。少なくとも、札幌を除いた全道の自治体は、その能力を身につけなければ今後数十年のうちに大幅な人口減と地域の衰退を招くことになる。今回のニュースに触れて、唯一残念に感じた点がそこである。
しかし、それも見方を変えれば、好機を逃さず地域貢献もする優秀な地元企業が釧路には存在するということである。まだ実現しないうちから、釧路コールマインを随分と褒めちぎるように思われるかもしれないが、釧路の地元企業でありながら、守りではなく攻めの姿勢という点は賞賛に値する。構想が実現するか否かは現段階ではまだわからないが、こういった釧路コールマインの姿勢に続く地元企業がどんどん出てくれば、釧路の地域再生も夢物語から卒業する日が訪れるだろう。