<夜明けのワンドイ>
アンデス・ブランカ山脈紀行;第5日目(1);トレッキング1日目;
トレッキング全行程の概要
専用車でヴァケリアへ
(アルパインツアー)
2016年9月6日(火)~16日(金)
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第5日目~第8日目;トレッキング全行程の概要
<トレッキングルート(全行程)>
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<プロフィールマップ(全行程)>
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<トレッキングの全体像>
■第1日目(今日);ケウシュ=(専用車)=>ヴァケリア→バリア谷出合
時間が経つのは実に速い.
ペルーへ到着以来,昨日までは高所順応をしていたが,いよいよ今日から本番のトレッキングが開始される.初日の今日から4日間にわたって,富士山を越える高所でのトレッキングが続く.今日から始まるトレッキングの全体像は以下の通りである.
初日の様子を記述する前に,4日間にわたるトレッキングの概要を纏めておくことにしよう.
まず初日の今日は,未明に専用車に乗って,ケウシュの幕営地を出発する.そして,専用車に乗ったまま標高4.767メートルのヤンカヌコ峠を越えて,峠の反対側にあるヴァゲリア(標高3,700メートル)で専用車を降りる.ここがトレッキング初日の歩き出し地点になる.
ヴァケリアから一旦坂道を下ってコルカバンパ(標高3,300メートル)を通過する.ここからは長い登り坂が連続する.そして.夕方,バリア谷出会(標高3,800メートル)に到着する予定である.ここで初日の行程は終わりになる.テント泊.
■2日目以降の行程
2日目;バリア谷出合→ウニオン峠→タウリバンパ
2日目は,バリア谷出会を出発してウニオン峠(標高4,750メートル)を越える.ここが一連のトレッキングの行程の中で一番の難所である.ウニオン峠から下り坂を歩いて,タウリバンパ(標高4,100メートル)で2日目の行程を終える.ここでもテント泊である.
3日目:タウリバンパ→ヤマコラル
3日目はタウリバンパからヤマコラル(標高3.600メートル)まで下って,テント泊の予定である.
4日目;ヤマコラル→カシャバンパ=(専用車)=>ワラス
4日目はヤマコラルから下り坂をカシャバンパ(標高2,900メートル)まで下る.カシャバンパから専用車に乗って,ワラスのアンディーノクラブホテルへ戻る予定である.
<トレッキングの諸元>
トレッキングコース全体の諸元は,およそ次の通りである(すべて概算).
なお,細かいアップダウンは累積高度には参入していない.したがって,これらの細かいアップダウンをこれらの数値に加算すれば,多分,10パーセント程度多い値になるだろう.
■水平歩行距離 約64キロメートル(平均16.0キロメートル/日)
■累積登攀高度 約1,500メートル(平均375メートル/日)
■累積下降高度 約2,300メートル(平均575メートル/日)
■最高地点高度(ウニオン峠) 4,750メートル
■最低地点高度(カシャバンパ) 2,900メートル
■平均高度 約3,500メートル
歩行区間の約50パーセントは富士山より高い所である.
**********************
第5日目;2016年9月10日(土) 晴
<ルート地図>
■
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■専用車で移動(ケウシュ←ヴァゲリア))
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<早朝のケウシュ>
■夜中に寒くて参った!
時差ボケのためか,それとも高度障害のためか,良く分からないが,まんじりとしない一夜を過ごす.高山病予防のために服用しているダイアモックスが効いているのか,夜中に一度トイレテントを往復する.ヘッドランプの光が頼りだが,古いトイレ穴に落ちそうで薄気味悪い.
トイレだけで目が覚めたわけではない.
夜中にやけに寒くなり寝付けない.貸与されたシュラフは,一見,立派そうだが,中に入っている化繊の綿が全体的にずれている.シュラフの中へ仰向けの姿勢で入ると,胸から腹辺りは殆ど綿がなく外側の布2枚だけになっている.
夜中に荷物をゴソゴソするのは,同じテントの中で寝ている人に迷惑になるなと思ったが,寒さに耐えられずに,荷物から追加の防寒具を引っ張り出して着込む.これでやっと寒さから解放される.
ちょっとウトウトし始めたときに,外で悲鳴のような甲高い叫び声がする.何事かと思ったら,近くに繋がれているロバの啼き声である.
■熱い砂糖湯と満天の星空
眠れなくてぢうも参ったなと思いながら,シュラフの中でジッとしていると,今度は外で人の気配がする.
3時30分,現地スタッフが,テントの外から,
「…グッドモーニング!」
とテントの中の私達に声を掛けている.
テントの入口を開けると,ステンレスのカップに熱いお湯を入れて差し出す.
「砂糖を入れますか? (スプーンに)1杯? 2杯?…」
と英語もどきで聞く.
私は,ちょっと戸惑いながら,スプーン1杯の砂糖を入れて貰う.
”いきなりスプーン一杯の砂糖が入ったお湯を飲んだら,血糖値が急上昇するな…”
と思いながらも,甘いものが欲しい.
もちろん,平素の健康診断では,血糖値に問題はないが…でも,糖尿病になるのが怖い.
外は真っ暗で寒い.満天の星空である.日本では絶対にお目に掛かれないほど沢山の星が輝いている.星空を仰ぎながら熱いお湯で冷えた身体を温める.
ついで,金だらい一杯のお湯が配られる.このお湯で歯を磨いたり洗顔をしたりする.テント生活でタップリのお湯が使えるのは,とても贅沢だ.これもツアー登山ならではのことである.個人で出掛けるテント泊では,こんな贅沢は,とても,とても,できない相談である.
<専用車でケウシュを出発>
■まだ真っ暗なのに…
テント泊中は,着の身着のままで過ごすつもりである.ここは空気が乾燥しているので,べとつく汗をかくことは殆どない.なので,ほんの4~5日のテント泊である.その間,着替えなどしなくてもどうということはない.着替えはテント泊が終わって,ホテルに入ってからで十分である.
そんなわけで昨夜も衣類は着たままで寝ていたので,そのままの姿で出発可能である.
4時丁度に専用車に乗り込む.私は昨日専用車の後部座席に座っていたので,今日は交代して前の座席に座る.
4時10分,私達を乗せた専用車は,ケウシュの幕営地を発車する.
なお,テントの中に残したままの荷物は,後から馬が運んでくれることになっている.
私達は,これから専用車でヤンカヌコ谷を遡って,トレッキングの起点,ヴァケリア(Vaqueria;標高3,700メートル)まで移動する予定である.
■展望休憩
真っ暗な夜道を専用車はひた走る.未舗装の道路が続く.どこを走っているのか全く分からないが,5時50分頃,夜が明け次第に辺りが見えるようになる.
5時57分,進行方向左手に,氷河を抱く尖鋒が見え始める(冒頭の写真).ワンドイ(Huandy;標高6,356メートル)である.
「…わあ,凄い!」
私達はワンドイの神々しい姿に感動する.
今日も天気がよさそうである.
ケウシュを出てから,これまですれ違ったのは,牛5頭,車5台,人1人である.
6時01分,展望の良い所で専用車を停める.ここで展望休憩である.専用車から外へ出る.思わず身を縮めるほど寒い.
<展望休憩>
<素晴らしい眺望>
■ヤンカヌコ谷を見下ろす
眼下に,これまで登ってきた道とリャンカヌコ湖が見えている.8年前,私は山仲間と一緒にピスコ山(Pisco;標高5,752メートル)に登った.あのときは,今見下ろしているリャンカヌコ湖から少し上のユラコラル(Yurac Corral)から進行方向左手に分岐して,レフジオペル(Refuqio eru;4,665メートル)へ向かった.
私は,ヤンカヌコ谷を見下ろしながら,8年前のことを懐かしく思い出す.
<車窓からヤンカヌコ谷を見下ろす>
■ワンドイ
目の前にワンドイが聳えている.
地図で確かめると,ワンドイには西から順に,標高5,840メートル.6,346メートル,6,395メートル,6,600メートルの4座がある.下の写真に写っている峰々は,一体,ワンドイのどの峰なのだろうか.
<夜明けのワンドイ>
■懐かしのピスコ山
ワンドイに向かって右側にピスコ山が見えている.
ツアーリーダーのIBさんが,
「あの山が,FHさんが登ったピスコ山ですよ.」
と教えてくれる.
私が上ったルートは,今見ている側とは反対側なので,見覚えのあるピスコ山の形と左右逆になっている.
「あんなに高い所まで,よくもまあ,登ったものだ…あの頃は若かったな」
とつくづく思う.今の私には重登山靴と12本爪のアイゼン,それにピッケルをもって,あの山に登る元気はもうない.
私がピスコ山に登ったのは7月.今目の前に見えている山に比較して,もっとずっと残雪が多かったように記憶している.
<懐かしのピスコ山>
■ワンドイに朝日が当たる
6時22分頃,目の前に見えているワンドイの一角に日光が当たり始める.眼下のまだ薄暗いヤンカヌコ谷とは対照的にワンドイの峰々が眩しく光っている.
白く輝く峰々の向こうにはスッキリとした青空が広がる.
”今日もお天気が良さそうだな…”
<ワンドイに朝日が当たる>
<ウニオン峠を越えてヴァケリアへ>
■ウニオン峠
展望休憩を終えて,再び専用車に乗って,6時22分,出発する.
ここから先は九十九折りの上り坂が連続する.
6時48分,ヤンカヌコ峠(標高4,765メートル)を通過する.峠で停車することもなく,なんといくこともなしに通過してしまう.
私は,ヤンカヌコ峠ってどんなところだろうと期待していたので,素っ気なく通過してしまうのが惜しい.どんな写真でも良いから峠の様子をデジカメに収めておこうと思って撮ったのが下の写真である.
<ヤンカヌコ峠>
■谷間の道をヴァケリアへ
ヤンカヌコ峠を越えると,幾重にも曲がりくねる九十九折りの下り坂が連続する.ここは富士山の標高より1,000メートルも高い所である.よくもまあ,こんな高所に道路を作ったものだなと感心する.
九十九折りの下り坂を過ぎると,深い谷の左岸をトラバースする道を下り始める.こんな辺鄙な所と思われる場所でも道路沿いに電柱が立ち並んでいる.改めてペルーは南米でもっとも近代的な国家だと言われていることを実感する.
もうヴァケリアも間近である.
<ヴァケリアに到着する>
■ヴァケリアに到着
7時59分,ヴァケリア(Vaqueria;標高約3,700メートル)に到着する.深い谷の左岸中腹にある山間の集落である.
集落の中央と思われる場所に,ちょっとした広場がある.ここはヴァケリアの中心部らしく,結構活気がある.人や馬などがかなり頻繁に往来している.
<ヴァケリア中心部の広場>
<可愛い動物たち>
■ロバが通る
私達は,ここで朝食を摂る予定である.
トイレ休憩と朝食の準備ができるまで,広場の様子をボンヤリと眺めている.休憩しはじめてから最初に現れたのがロバ3頭と馬1頭である.特にロバの仕草や目の可愛さに惹かれ,思わず写真を撮る.
余談だが,ウイルヘルム山登山で,モロッコを旅しているときに,うっかり馬の写真を撮ったら,叱られた経験がある.でも,ペルーではロバの写真を撮っても叱られることはなさそうである.もちろん,控えめに気を付けて撮るようにしているが…
<ロバが通る>
■またロバの集団が通る
引き続き4頭のロバ(馬かな?)が私達の目の前を通過する.皆,可愛い鞍を背に付けている.多分,荷役ようのロバだろうと勝手に想像する.
この広場は意外に活況で,次から次へとウマ,ロバが発着している.温和しいロバの仕草を見ていると心が和む.
”ロバって,可愛い動物だな…”
<ロバが通る>
<少々遅い朝食>
■ヴァケリアの売店
これから広場に面した食堂で,ちょっと遅めの朝食を摂る予定である.朝食の準備ができるまで広場を見物する.
広場の一角に売店がある.広場を見廻したところ,ここが唯一の売店のようである.
少し傾きかけた木造の粗末な小屋である.
店には随分と多種多様な飲み物が並んでいる.飲み物の他にちょっとした小物も並んでいる.
結構,お客が立ち寄っているようである.
<広場の売店> <売店のお客>
■食堂に入る
8時07分,広場に面した食堂に入る.食道の内部は意外に明るい.
ツアーリーダーに促されながら,適当な場所に座る.青いテーブルクロスが素敵である.まずは,コーヒー,紅茶などで喉を潤す.
<食堂の建物> <食道の内部;とても明るくて快適>
■朝食のメニュー
朝食のメニューは下の写真の通りである.
スクランブルエッグとソーセージ.それにパン.ザッツ・オール.
ここは富士山の山頂に匹敵する高所である.朝食は,このメニューで十分である.ツアー登山でなければ,自分で朝食を準備しなければならない.もしそうならば,今頃,下界で購入した冷たいボソボソパンを囓っているに違いない.そう考えると,暖かいコーヒーやお茶を飲みながらの朝食は何とも有り難い.
8時30分頃,朝食を終える.
いよいよこれからトレッキングの本番が始まる.
今日の行程は,一旦,コルカバンバまで標高差400メートルほど下ってから,バリア谷出会いまで標高差約500メートルを登り返す予定である.標高の高いところでの登り下りは多分辛いだろうなと予想する.
<ヴァケリアの朝食>
(つづく)
つづきの記事
↓
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/af71d4526ba7f9607ca5a0495c4fcfec
「ブランカ山群トレッキング」の目次
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/3ac14bd1d44b99a378555e26864f76b7
「ブランカ山群トレッキング」の索引
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/9e3ba704d9bf4f7278473747420c4534
[参考資料]
ペルー周遊記(ピスコ山登頂);インデックス
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/f78082280c7a6bb87b1810478b6786ea
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