<念珠坂を登る>
歩いて巡る甲州道中四十四次(第4回);(2)念珠坂から小仏宿へ
(五十三次洛遊会)
2013年6月9日(日) 晴 (つづき)
<ルート地図>
<念珠坂>
■舗装道路の照り返しが暑い
9時25分,小仏関址での休憩を終えて,再び歩き出す.
相変わらず登り坂が連続する.小仏川右岸沿いの谷間道はいよいよ狭くなり,山道の雰囲気が深まる.
9時32分,バス停新井の前を通過する.相変わらず2台ずつ連なって路線バスが行き来している.
9時36分,バス停蛇滝口を通過する.太陽の光が舗装道路で照り返すので,やたらに蒸し暑い.頭がクラクラしそうになる.こうなると熱射病が絶えず気になる.前方には高速道路が見えている.
地図で確かめると,この辺りは念珠坂と言うようである.
資料1によると,「昔々,この辺りに鬼がいて暗くなると人を襲っていた.あるとき,鬼が数珠を持った老婆を襲うと,数珠の糸が切れ,珠が辺りに飛び散り,鬼はこれに足を取られ,坂下まで滑って大穴に落ちてしまった.これ以来,鬼は現れなくなった」という伝説があるらしい.
<バス停蛇滝口付近>
■「ふじや」と道標
資料1によると,この辺りに「ふじや」があるらしい.どこが「ふじや」か良く分からないが,進行方向右手に何やら立派な石碑が立っている.
“ふじやがどこか分からないが,まあ,いいか.この石碑辺りにあったとしておこう”
と私は勝手に解釈する.勿論,こんな推測は当たっていないだろう.
資料1の説明によると,この辺りに旅籠「ふぢや新兵衛」があったという.小仏川に突き出した舞台造りの建物だったようである.
この辺りに道標があって「是より蛇滝まで八丁」と書いてあるようだが,見落としたのか,無いのか分からないまま通過する.
<立派な石碑>
■高尾道分岐
谷間がますます狭くなる.相変わらず蒸し暑い.
9時42分,高尾道分岐に到着する.分岐点に古い石柱の案内杭が立っている.案内杭には,何か文字が書いてあるようだが,風化していてなかなか判読できない.
<高尾道分岐> <案内杭>
■蜂尾豆腐店
9時47分,バス停摺指に到着する.バス停の真ん前に蜂尾豆腐店がある.
資料1によると,蜂尾豆腐店は寄せ豆腐やおからドーナッツが名物だとのことである.
<蜂尾豆腐店>
■常林寺で休憩
9時48分,常林寺に到着する.曹洞宗の寺である.山号は白雲山.
私たちは常林寺の境内を借用して,立ち休憩を取る.
資料3によれば,御本尊は釋迦牟尼佛.開基は乘寺四世空山宗印大和尚.開山は初沢町高乗寺4世空山宗印大和尚で,現在職は24世,大正6年の火災により全てを焼失したので,その他は不明とのこと.
また,資料1によれば,この寺の開基は蜂峰氏.蜂峰氏は南北朝時代の南方の重鎮小山氏の末裔.点々とした後,甲斐の武田氏に元で再起を図るにもかかわらず,この地に土着したという.
資料1と資料3の説明が微妙に違うが,私が資料を取り違えているのか,あるいは同じことを言っているのか,ちがうのかは良く分からない.
<常林寺で休憩>
■常林寺の六地蔵
常林寺の境内に立派な六地蔵が祀られている.どうやら,この六地蔵は有名らしいが,由来は良く分からない.
休憩の合間に,参拝.
<常林寺の六地蔵>
■浅川国際マス釣場
休憩を終えて,9時50分,常林寺を出発する.
相変わらずの登り坂である.地図を見ると,途中に小山神社という神社があるようだが,見落としてしまう.
9時57分,バス停裏高尾を通過する.
10時00分,浅川国際マス釣場に到着する.道路から広々とした釣り場の池が見下ろせる.なかなかの眺望である.釣りを楽しむ人達の姿がちらほらと見えている.
浅川国際マス釣場を過ぎると,上り勾配が幾分きつくなり,道路は大きく右にカーブする.
<浅川国際マス釣場を見下ろす>
■バス停日影
9時57分,バス停日影を通過する.
やや急な登り坂が,クネクネと続く.辺りはむせかえるような緑で一杯である.
<バス停日影を通過>
■景信山分岐
10時05分,景信山分岐を通過する.「右小仏峠景信山」と刻字された石の道標が立っている.この道標は新しいもののようである.
<景信山分岐>
■南浅川の滝
相変わらず南浅川の右岸沿いを遡っている,川は次第に渓流の面影が濃くなり,さくさくと岩を噛む水の音が聞こえてくる.そして,小さな滝が幾つも連続するようになる.
渓流の音を聞いていると,だんだんと山の中に入り込んできた気分になる.
資料1によると,この近くに小仏庵という建物があるらしいが,残念ながら見落としたか,無くなっているかのどちらかのようである.
<南浅川の滝>
■中央本線のガードを潜る
10時09分,中央本線のガードを潜る.
これまで数え切れないほど中央本線の電車に乗車しているが,ここが煉瓦造りの素晴らしいガードだとは全く知らなかった.
このガードを潜ると,いよいよ小仏宿も間近である.
<JR中央線のガードを潜る>
<小仏宿>
■小仏宿の概要
資料4には,小仏宿は「日本橋から12番目の宿場となる.小仏関所より下った方にあった. 本陣と脇本陣もなく,集落の退廃は早かった. この宿場の先は最難所とも言われる小仏峠となり尾原宿へ続く.」という簡潔な説明がある.
また,資料5では,「新修五街道細見には,駒木野宿より小仏宿まで26丁とあり, 途中のあらい(荒井)にはふじや新兵衛の旅籠があり,その先のすりさし(摺差)を過ぎると小下沢ばしが架かって, 小仏宿には鈴木藤右衛門の旅籠があったことが記されている. 小仏宿は,小仏峠越えに備えた予備的な宿という意味合いが濃いように思われるが, 宿場業務は駒木野宿と分担して行っていて,小仏宿は月1日から15日を担当した. 駒木野宿より人口の少ない宿場で本陣はなく,問屋が1軒と旅籠が11軒あった.小仏宿から小原宿の間には小仏峠があるが, 江戸時代には多くの富士講の人がこの峠を越えたので,富士峠ともいわれたようである.」と説明している.
また,資料2(p.285)によれば,宿内人口は252人.内,男116人,女136人.宿内惣家数58軒,旅籠11軒の規模であったようである.
■バス停木下
10時12分,バス停木下を通過する.
相変わらず周囲は鄙びた雰囲気である.沿線と所々に民家が点在している.鄙びていると言っても,ここは紛れもなく武蔵国.つまり東京都内である.
<バス停木下を通過>
■雨宿り美術館
前方に小高い尾根が続いているのが見えている.多分,あの尾根のどこかが小仏峠であろう.峠を見上げながら,
“まだ,まだ,先は長いな…”
と思いながら歩き続ける.
私たちのグループの中で,少々足が弱い方が居られるので,その方の疲れ具合をそれとなく眺めながら,ユックリ歩くように,余計なお節介かも知れないが.何回も,何回も注意し続ける.
10時16分,進行方向右手に,「雨やどり美術館」という看板を見掛ける.少々気になるが,今日は天気が良いので,雨宿りをする必要はない.従って,ここには立ち寄らずに通過する.
<雨やどり美術館>
■明治天皇御小休止場所
小仏宿の中心部に差し掛かる.
資料1には,屋敷神,三度屋跡などの所在が記されているが,残念ながらどこにあるのか分からない.それらしい場所に,わずかに「明治天皇御■■…」と刻字された石塔が残っているのを見付けただけである.■■…は草に埋もれていて,全く読めない
資料2(p.286)の説明では,甲州三度飛脚の定宿,三度屋は現在のA木氏宅(実名は伏せる)にあったが新築に家に変わっているという,また,同資料によると「明治天皇御■■」は「明治天皇御休憩所」.明治天皇は,八王子を朝お発ちになり,ここで「板輿にのりかえられたのだろう」と同書の筆者は推察している.
資料1に記載されている名主宅跡も残念ながらどこか分からない.資料1の記事によると,青木家が三度屋の旅籠屋「鈴木藤右衛門」と名主を兼ねていたようである.
<明治天皇御小休止場所>
■小仏バスターミナル
道路の上り勾配がさらに幾分急になる.
10時21分,小仏バスターミナルに到着する.広い駐車場に何台かのバスが停車している.高尾からの路線バスは,ここが終点のようである.バスが到着する度に,登山客がどっと下車している.
ここからがいよいよ小仏峠越えである.
峠越えに供えて,ここで10分ほど休憩を取る.
<小仏バスターミナル>
[参考資料]
資料1;完全踏査街道マップシリーズ「ちゃんと歩ける甲州道中四拾四次」五街道ウォーク事務局
資料2;今井金吾,1998,『今昔三道中独案内 日光・奥州・甲州』日本交通公社
資料3;http://hachibutu.com/jyourinji.html
資料4;http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%8F%E4%BB%8F%E5%AE%BF
資料5;http://outdoor.geocities.jp/mrmaxtokai/kosyu08.html
(つづく)
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