<堀山の尾根道>
蒸し風呂のような丹沢;塔ノ岳(今年39回目)
(所々常連と一緒)
2013年7月31日(水) 小雨
■想定外の雨空
前日の天気予報も今朝の天気予報も塔ノ岳山頂は午前中晴,午後曇,山麓の気候は終日曇,山頂の最高気温は24℃,風は2~3m/秒ということであった.
“ならば,今日は水曜日,塔ノ岳を往復しよう…”
私は小田原駅での階段二段跳び乗換の慌ただしさを避けるために,いつもより1本前の東海道本線大船発5時10分の下り電車に乗ることにする.でも,自宅近くの湘南モノレールの初電に乗ったのでは間に合わないので,何時もより1時間早く,4時10分に自宅を出発し,薄暗い夜道を大船まで歩く.歩程約2.5キロメートル.所要時間約40分,全く余計な道草である.
大船駅に向かう間も,昨日の余熱が舗装道路に堪っているのか,気温は24℃.熱帯夜ではないものの,随分と蒸し暑い.
小田原駅でユックリと乗り換えて,6時12分に渋沢駅に到着する.天気予報とは裏腹にかなりの雨が降っている.
“雨か…まいったな.山は諦めて,小田原城趾で散歩して帰るかな…”
と思いながらも,とりあえずは大倉行バス停に行ってみる.私は一番乗り,まだ乗客は誰も居ない.
携帯電話を取りだして,雨雲レーダーの画像を確かめる.今正に雨が降っているのに関東周辺には,ほとんど雨雲はない.天気予報も相変わらず曇のままである.どうしようかと迷っている内に,一般の登山客に混じって,塔ノ岳常連が次々とバス停に現れる.韋駄天組の一角であるTDさんをはじめ,KIさん,MTさん,KM夫妻,Hさん,韋駄天のNMさんとSTさん. どこかの山に出掛けているTGさん他の姿は見えないが,何時もながらの盛況である.
沢山の常連さんとお会いすると,登山を止めて帰ろうかという気分も失せて,とにかく登ろうという気分になる.
■見晴階段
バスは7時丁度に大倉に到着する.
相変わらず小雨が降っているが,雨具を着るほどでもない.軽く準備を済ませて,7時05分に大倉から歩き出す.たまたま同じ時間に歩き出した韋駄天組の一角を占めるTDさんとご一緒する.大倉の気温は26℃.
登山道に入ってからも,雨で路面はベタベタに濡れている.今日も全くの無風で蒸し暑い.登山としては最悪のコンディションである.いかにも山ヒルが出没しそうな雰囲気である.
「山ヒルに出くわしたら,是非,写真を撮りたいです」
ということで,山ヒルを見付けながら登る.
勿論,そうは言っても山ヒルの被害には会いたくないので,登山道の真ん中を立ち止まらずに登り続ける.そして,1匹の山ヒルも見付けることなしに,丹沢ベース前後の山ヒル銀座を通過してしまう.
7時49分,見晴茶屋を通過する.周囲の霧がますます濃くなる.どうやら雲の中に入ったらしい.
見晴階段に差し掛かる.恒例の定点観測の写真を撮るが,ご覧のように濃い霧でほとんど何も写らない.
「私,ユックリ登りますから,お先にどうぞ…」
と同行のTDさんにお伺いする.
「まあ,急がずにユックリ登りましょう」
と言うことなので,熱中症にならないように充分注意しながらカタツムリのようなノンビリ歩きを続ける.私は心の中で,
“リラックス,リラックス,全身の力を抜いて…”
とバカの一つ覚えのように繰り返しながら登り続ける.
厳しい見晴階段を登り切ってモミジ坂に入る.ここで,TDさんが
「じゃあ~…少しピッチを上げてみます」
私の前に出たTDさんは,ピッチを上げる.忽ちの内にTDさんの後ろ姿が霧の中に隠れていく.そしてTDさんが一本松に到着する頃には,私との差は50メートルほどに広がっている.
<見晴階段>
■霧の大倉尾根
8時06分,ようやく一本松を通過する.
相変わらず濃い霧が掛かっている.全くの無風.TDさんは,もう,私よりずっと先を歩いている.私の前後には全く人の気配がない.
蒸し暑いのには閉口するが,幻想的な霧は何とも美しい.私は霧に霞む木立の風景を楽しみながらユックリと歩き続ける.
8時13分,前方から,突然,下山してくる人が霧の中から現れる.2本ストックを持ったご常連のYZさんである.
<一本松付近の尾根道>
■見えない富士山
やがて駒止階段に差し掛かる.とにかくシンドイので,ウンコラ,ウンコラと超スローで急階段を登る.そして,8時25分に漸く駒止茶屋を通過する.大倉から駒止茶屋までの所要時間は実に1時間19分.
“いくら暑いからといっても,こりゃ~ダメだ”
無理をしないで,せめて1時間15分程度で登りたいものだ.たった4分の違いだが,この4分が大変な差である.平素からもう少し体力を付けておきたいなと思いながら,駒止茶屋を通過する.
堀山の尾根道に入る.今日も残念ながら富士山は見えないが,霧の霞む木々の美しさを愛でながら.マイペースで歩き続ける.
<霧に霞む美しい尾根道>
■小草平
8時42分,堀山の家に到着する.気温21℃.霧は多少薄くなったが相変わらす無風.
小草平のベンチで,登山者が1人,休憩を取っている.軽く挨拶をして,小草平を通過する.
<小草平>
■萱場平
堀山の家から先は長い登り坂.無事に山頂まで辿り着けるように,”無理するな,無理するな”と自制しながら,登り続ける.私の前後には全く人影がないので,周りの人に惑わされることなしに,楽なペースで登り続ける.
9時04分,萱場平を通過する.
<萱場平>
■見事な百合の花
階段道が終わって,ガレ場に入る.路傍に見事な百合の花が2輪咲いている.
花オンチの私だが,この見事な百合には感動する.早速立ち止まって,百合の花を写真も何枚も撮る.
”だれかに摘み取られたり,シカに食べられないように…”
と祈りたい.もっとも,シカが百合の花を食べるかどうか知らないが…
<見事な百合の花>
■花立山荘
9時20分,後7分坂にもう少しのところで,下山してくる韋駄天のNMさんとすれ違う.
「…いやあ~,今日は暑くて・・・ズボンも(汗で)ビショビショですよ」
とNMさんが言う.
「ところで,TDさんとどの辺りで会われましたか?」
「花立階段の真ん中辺りで会いましたよ」
と,二言三言雑談してお別れする.
私は頭の中で.
”NMさんが階段の中程からここまで降りてくるのに3分くらいかかったかな…その間にTDさんは階段を登り続ける…3分登れば階段の4割ぐらいは登れるな.ということは,私が後7分坂に到着した頃,TDさんは後7分坂を登り切る頃だな…”
と余計なことを想像する.
9時28分,花立山荘を通過する.山荘は霧の中.人の気配はなくひっそりと静まり返っている.先週は平日にもかかわらず,山荘は営業していたが,今日はどうやらお休みのようである.
大倉からの所要時間は2時間23分.情けないほどの最悪な記録である.勿論,”記録など気にしないで安全登山”が建前の筈.それでもあまりに結果が悪いとガックリ来る.
<漸く花立山荘を通過する>
■花立山
私には,花立山荘から花立山までの登りが一番きつい.
花立山荘から未だ暫く階段道が続く.ここがとにかくシンドイ.相変わらず蒸し暑いので閉口しながら登り続ける.
一時,霧が薄くなったような気がしていたが,また,辺りに濃い霧が牧始める.ここは頻繁に登っている山なので,どんなに霧が深くても迷うことはないが,もし勝手が分からない山で,こんなに深い霧に遭遇したら随分と不安だろうな…なんてことを考えながら,破れかぶれで登る.
9時42分,花立山山頂付近で下山してくる韋駄天のSTさんとすれ違う.ちょっと立ち話.
「…金冷シを通過して,平らな所でTDさんとすれ違いましたよ…」
とのこと.
またまた胸算用;-
TDさんが金冷シからここまで4分掛かったとする.私がこれから金冷シまで5分,つまりTDさんと私の時間差は約8分.金冷シから塔ノ岳山頂までの所要時間を14分と仮定すると,TDさんは,あと5分ほどで,塔ノ岳山頂に到着するはずだ.つまり,私が金冷シを通過して,最初の階段を登っているときに,TDさんは山頂に到着している…本当かな?
別にTDさんが何時山頂に到着しようと,私には無関係だが,こんなシュミレーションも結構楽しいものである.
<濃い霧の花立山>
■塔ノ岳山頂
気がつくと何時の間にか流れるような汗はでなくなっている.山頂に近付くとやっぱり涼しくなったようである.それに無理をせずに登っていたので,特段の疲労感もない.
10時01分,木道が終わって,後数メートルで塔ノ岳山頂というところで,下山しようとするTDさんと会う.
「やあ…ご苦労さん,(所要時間は)3時間というところでね」
とTDさんが言う.
”待てよ! 大倉を7時05分に歩き出したんだっけ…すると,わずかだが3時間を切っている”
そこで,私は,
「まあ…,でも正確には2時間56分.・・・3時間を切っていますよ」
と苦笑する.
このままTDさんと一緒に下山しようかとも思ったが,ここでTDさんとお別れして,私は尊仏山荘に向かう.
塔ノ岳山頂の気温は20℃.霧深く無風.でも涼しくて気持ちがよい.
いくら何でも,こんな霧の中で風景写真を撮っても意味がないが,でも儀式なので数枚の写真を撮る.
<塔ノ岳山頂>
■尊仏山荘
たまたま山頂に居られた登山客と雑談をしてから,尊仏山荘に向かう.お名前はどう忘れして思い出せないが,上半身裸の男性2人が,山荘の窓越しに私に挨拶する.
今日の小屋番はオーナーのHDさん.
今日は韋駄天のTGさんが居られないので.1番バスの乗客の中では私が一番乗りだという.こんなに遅いご到着だというのに…
取りあえず定番の300円也のお茶を所望する.そして,お茶を飲みながら,裸の男性と雑談を続ける.
10時を大分廻った頃,KM夫妻とMTさんが現れる.そして,2番バスで来られたFTさんも…やや間が空いて,外で涼んでいたというKIさんもご到着.
KMさんから美味しいトマトの差し入れがある.小降りながら実に濃厚な味の素晴らしいトマトである.ついで,MTさんからウイロウの差し入れを頂戴する.
10時40分頃,Hさんが山荘に到着する.これで,1番バスに乗車していた常連さん全部が顔を揃えたことになる.
<尊仏山荘に常連さんが揃う>
■下山開始
今日は大倉発12時52分のバスに間に合うように,ユックリ下山したいので,皆様より先に,10時44分に尊仏山荘をオサラバ.山荘前の咲いているホタルブクロの写真を撮ってから,塔ノ岳山頂を出発.下山開始.
ノンビリ下山していると,後ろから足音が聞こえてくる.道を譲ろうと思って,登山道の端に寄る.後ろから来たのはKIさん.以後,速からず遅からずの速度で,KIさんと一緒に下山し続ける.
花立山の手前で,登ってくるご常連のYUさんとバッタリ.何時も1番バスに乗っておられる方である.
「(今朝雨だったので)様子を見ていました…」
とのこと.
塔ノ岳の近くに住んで居られる方は,融通が利いて良いなと羨ましくなる.
<尊仏山荘前にて>
■あれ!…前のバスに間に合うぞ!
11時35分,堀山の家に到着する.
KIさんは,ここで給水休憩を取るという.
「ユックリ先へ行っています…」
とお断りして,私はそのまま堀山の家を通過する.
登りで体力をセーブしたためか,調子が何となく良い.堀山の登り返しも速度を落とすことなく通過する.堀山の尾根の霧はますます濃くなっている.高度が下がるにつれて,だんだんとムシムシする暑さが厳しくなる.
11時48分,駒止茶屋を通過する.
”あれ~っ! 随分早いな,これなら12時52分のバスに,十分,間に合うぞ…ならばピッチを速めよう”
ということで,歩行速度を少し速める.できれば,バスに乗る前に,靴を洗う時間ぐらいの余裕が欲しい.
一本松に近付く頃,KIさんが私に追い付く.
「(FHの)歩きが速いんで,走ってようやく追い付いたよ…」
12時52分のバスに間に合うように,速度を調節しながら一緒に下山し続ける.足許が濡れているので,途中3回ツルリと滑ってしまう.1回は尻もち.気を付けなければ…
12時36分,目論見通りの時間で大倉に到着する.靴を洗ったり着替えたりするのに丁度良い時間がある.下りの所要時間は1時間52分.ちょっと速かったかな.
帰りの電車は小田急線,東海道本線ともに空いている.東海道本線では4人掛け1ボックスを1人で占領してノンビリと帰宅する.
帰宅後,家を吹き抜ける涼しい海風に当たりながら,インスタントコーヒーをユックリと味わう.Becker’sのコーヒーほど香りはないが,でも,コーヒーを賞味しながら,今日一日良かったなと振り返る.
留守中に神奈美からの封書が届いている.中には今年秋の展覧会の開催予定や出品申込書が入っている.
”そうだ! そろそろ水彩画を1枚仕上げなければ…でも,その前に五十三次洛遊会定例会の企画や,甲州道中の旅の資料を纏めなければ…”
誰かに頼まれて忙しくなったわけではないが,ちょっと真面目にやらなければならないことが結構沢山あるな…と再認識する.
ともあれ,今日も良かった,良かった!
<ラップタイム>
7:05 大倉歩き出し
7:29 観音茶屋
7:48 見晴山荘
8:22 駒止茶屋
8:42 堀山の家
9:28 花立山荘
9:43 金冷シ
10:01 塔ノ岳山頂着(20.0℃)
10:44 〃 発
10:56 金冷シ
11:08 花立山荘
11:35 堀山の家
11:48 駒止茶屋
12:08 見晴山荘
12:20 観音茶屋
12:36 大倉着
[山行記録]
■水平距離 7.0km(片道)
■累積登攀下降高度 1269m
■登攀所要時間(雑談時間を含む)
大倉 発 7:05
塔ノ岳 着 10:01
(所要時間) 2時間56分(2.93h)
水平歩行速度 7.0km/2.93=2.39km/h
登攀速度 1269m/2.93h=433.1m/h
■下降所要時間(休憩時間を含む)
塔ノ岳 発 10:44
大倉 着 12:36
(所要時間) 1時間52分(1.87h)
水平歩行速度 7.0km/1.87h=3.74km/h
下降速度 1269m/2.37h=678.6.4m/h
(おわり)
「丹沢の山旅」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/85970df70295b164345fe2bf54556bd7
「丹沢の山旅」の次回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/89bc247084f450b5dce37ddeefff1343
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