
<塔ノ岳山頂からの富士山と霧氷>
雲間の富士山と霧氷を堪能した丹沢:塔ノ岳(今年2回目)
(上り単独・下り常連と一緒)
2013年1月9日(水) 曇後晴
■朝すんなり起床に一計を案じる
毎度,このブログの記事は愚痴から始まるので,何ともお恥ずかしい次第だが,この寒い時期,私は相変わらず早朝に起床するのが億劫である.毎回,出がけに「行く,行かない」を繰り返している私は,さすがに自分の優柔不断さに嫌気がさしている.
そこで,私は自分をだます一計を案じた.
“・・・そうだ! 山小屋に泊まったときには,どんなに寒くても躊躇なく起きられるじゃないか!!”
私は,昨夜,就寝前にほぼ完全に登山用の身支度を調えてから,3シーズン用のシュラフに潜り込んだ.もちろん,何時ものことだが,就寝中は冷暖房は使っていない.だから,何時もは.朝が寒くてなかなか起きられないが,身支度を調えてシュラフに潜り込でみると,なかなか快適である.何時も目が覚める3時半に,スッキリと起床することができた.
“シメ,シメ・・・厳冬期はこれにかぎるな・・・”
私は気分良く起床できたので大満足である.
“よお~しっ! 冬の間はこれでいこう・・・”
何時ものように,朝食を済ませてから,5時10分に家を出る.もちろん,厳冬期の夜明けである.外はそれなりに寒いが,前回塔ノ岳に登った土曜日に比較すると,随分と暖かい.
上空を見上げると,街の光を鈍く反射する千切れ雲が沢山浮かんでいる.天気予報では朝の内は曇っているがだんだんと晴れてくるようである.
“今日は富士山が見られるかな・・・”
と思いながら,東海道本線の電車に乗車する.
今日は平日.だから小田原で階段2段跳びダッシュをしなければならない.数名のサラリーマンが,私と同じようにダッシュしているが,彼らは若くて脚力がある.私がやっと階段を駆け上がったときには,彼らはもう改札口を出て,コンコースを走っている.
私は“ヒー,ヒー,ハア,ハア”とシンドイ思いをして,やっと小田急電車に滑り込む.
悔しいことに,この電車.途中の新松田駅で2分も停車する.それも電車の乗降口を開けっ放しのままである.
“こんなところで2分も停まるなら,せめて1分,いや30秒でも良いから,小田原発の時間を遅くしてくれ~ぃ・・・!”
電車が渋沢駅に到着する頃,漸く東の空が白み始める.
■ご常連と前後して歩き始める
渋沢発1番バスに乗車する.さすがに今日は平日なので,乗り合わせた登山客は少なめである.韋駄天のTさん,三角髭のTさん,大三郎さん,鵠沼の貴婦人,M田さん,超韋駄天のS藤さん,カメラマンのMさん,T中さん,キャベツマンのTさんなどのご常連が乗車している.
バスは定刻,6時59分に大倉に到着する.
気温がどの位あるか分からないが,それほど寒くはない.
上空には低い雲がたれ込んでいてドンヨリしている.丹沢の山を見上げると標高の高いところは分厚い雲に覆われている.
7時06分,三角髭のTさんから,
「さあ,行きましょう・・・」
と誘われる.大三郎さんや鵠沼の貴婦人さんより,一足先のスタートである.
このところ乾燥気味の天気が続いているためか,足許はカラカラに乾いている.
少々寒いので,体が温まるまで,歩くピッチを少し速める.私は,急坂ではカラッキシ意気地がないが,なだらかなところでは,それなりの速さで歩ける.これも何時ものパターンだが雑事場ノ平付近までは,そこそこの速度なので,三角髭のTさんより幾分先を歩いているが,萱場平前後で追い抜かれるのが,このところのパターンである.
7時49分,見晴山荘の前を通過する.ここでM田さんに追い付く.ここから先,後7分坂手前の大きな岩を廻り込むところまではM田さんと前後して一緒に歩いていたが,ここから先は完全に追い抜かれる.
■この“バカ”カメラめ!
さて,見晴階段に差し掛かるところで,何時ものように見晴階段を見上げる写真を撮る.
ちょっと余談になるが,実は数日前,Y電機で防水デジカメを衝動買いした.何と1台数千円である.私はかねがね防水カメラが欲しかったので,これも成り行きである.
ところが廉価な機種だけあって,レンズの焦点は遠近2段切り替え方式である.レンズも本体に埋め込まれたまま,レンズを繰り出す可動部分がないのは良いが,問題はどれだけ写るかである.
私は,早速,このカメラで見晴山荘からの眺望と,見晴階段の写真を続けて撮る.さらに,堀山の尾根で雲に隠れた富士山の写真を撮る.このとき,私はカメラのレンズを近距離の方に合わせて撮影していたことに気がつく.案の定,帰宅後,このカメラで撮影した写真を見ると,大ピンぼけで,何が写っているかも判別できないひどさである.
私は自分に不注意を棚に上げて,
「この馬鹿カメラめ! テメエのお陰で,記録写真が撮れなかったじゃないか」
とカメラに八つ当たりする.
こんな写真を披露するのは気恥ずかしいが,下の写真はピンぼけの萱場平である.
<ピンぼけ萱場平>
■堀山の家
見晴階段を登っていると,若い男女4人に追い抜かれる.“ハア,ハア,・・”と,随分オーバーペースのようである.私は直ぐに進路を譲って先に行ってもらう.ところが,一本松手前で,4人は疲労のためかガクンとペースが落ちる.
「後,もう一寸で一本松.そのちょっと先にベンチがありますよ・・・」
と4人に声を掛ける.
その後,私は尊仏山荘で30分ほどお茶を飲んでから,大三郎さん,鵠沼の貴婦人,韋駄天のTさんと一緒に下山したが.花立山付近で,再びこの4人組とすれ違う.
「随分速いですね・・・」
と4人組に言われる.速く歩けないのがコンプレックスの私は何だか妙な気分になる.
話を戻そう.
やがて駒止階段に差し掛かる.ここでカメラマンのMさんに追い付く.私のリュックの5倍ほどの重さがもありそうなリュックを背負っておられる.
8時10分,駒止茶屋を通過する.大倉からの所要時間は1時間04分.まあ,このタイムならば,今の私に丁度の速度と言えよう.
堀山の尾根に差し掛かる.ここは歩行速度を上げて通過する.
8時25分,堀山の家に到着する.
■萱場平
今日も,堀山の家から花立山荘まで,ジャスト40分で歩こうと思う.
慎重に自分の体調をチェックしながら定速で登り続ける.絶対に無理をしないことに徹する.これが一番楽だし快適だからである.
8時43分,萱場平を通過する.この辺りはまだM田さんとご一緒である.萱場平で定点観測の写真を撮るが,さきほど示したとおりピンぼけである.
■“ダダダッ”のY沢さん
引きつづき急坂を登り続ける.
8時51分,上からY沢さんが,“ダ,ダ,ダ,ダッ・・”と飛び降りてくる.
すれ違った時間を記録するために,すぐに振り返って写真を撮る.すると,何時の間にか,三角髭のTさんが私のすぐ後ろに迫っているのに気がつく.
この写真は,馬鹿カメラながら,レンズを遠距離合わせたので,それなりに写っている.
「やっぱり,お前さん・・・満更のアホカメラでもなさそうだな・・・」
とカメラに話しかける.
<Y沢さんが下る>
■後7分坂
途中,大きな岩を周回する場所に差し掛かる頃,私のすぐ後ろを歩いていたM田さんが,本性を露わにして,一気に私を抜き去っていく.
“お前さん・・・哀れだな~ぁ・・・!”
私の体内に巣喰っているもう一人の私が,この私を揶揄する.
“何ぬかす・・・大体,M田さんは,私とは塔ノ岳に登る回数が違うんだよ・・・私より速いのは当たり前だよ.お前さんにそんなこと言われたくないよ・・”
と私は私を叱りつける.
やがて,後7分坂に差し掛かる. 正直,ここはシンドイ.
私は山岳ガイドから教わったとおりに,流れるような汗をかかないように,慎重に登り続ける.後7分坂を3分の2ほど登ったところで,鵠沼の麗人にも追い抜かれてしまう.
多少の悔しさが残るが,これも致し方ないことである.
■花立山荘
9時05分,花立山荘に到着する.山荘前で写真を撮ったが,シャッターが下りていないのか何も写っていない.
“ふざけるな! 馬鹿カメラめ!”
また,自分の腕のなさを棚に上げて,カメラに当たり散らす.
大倉を歩き出してからの所要時間は1時間59分.たった1分とはいえ,2時間を切ったのは,今の私には上出来である.
さらに,堀山の家から花立山荘までの所要時間は,ジャスト40分.正に予定通りである.万歳.
■大三郎さんと韋駄天のTさんに追い抜かれる
カメラをいじくりながら,そのまま花立山へ向かう.先ほどまで見えていた鵠沼の貴婦人の後ろ姿が,もう見えなくなっている.私は気勢が上がらない.
周囲の風景写真を撮りながら,のそのその登り続ける.
もう少しで花立山山頂に到着するところで,下山してくる超韋駄天のS藤さんとすれ違う.
「たまには写真を撮らせて下さい・・・」
でパチリ.今度は馬鹿カメラでも良く撮れた.
「おまえ,人を選んじゃダメだよ・・・だれでもどんなところでもチャンと写らなければダメだよ」
とカメラに向かってブスクサと愚痴を言う.
そうこうしている内に,大三郎さんと韋駄天のTさんに追い抜かれる.
■見事な霧氷
9時14分,花立山を通過する.
花立山を通過すると気候が一変して寒くなる.周囲の木々が一面の霧氷になっている.こうなったらラップタイムもへったくりもない.私は,カメラを振り回して,霧氷の写真を撮りまくる.
9時20分,金冷シを通過する.
相変わらず写真を撮りまくる.ただ,撮った写真を見ると,どうも紫色が濃いような感じがする.色調がどうも違うような気がしてならない.塔ノ岳山頂直下で撮した霧氷には,私の少し前を行く大三郎さんと韋駄天のTさんの後ろ姿が偶然写っている.
<塔ノ岳山頂直下の霧氷>
<塔ノ岳山頂付近の霧氷>
■塔ノ岳山頂
9時36分,塔ノ岳山頂に到着する.残念ながら富士山は雲の中である.山頂の気温はマイナス4℃.土曜日はマイナス8℃だったので,今日は,まあ,少し暖かい.
大倉からの所要時間は2時間30分.決して満足すべきラップではないが,今の私にはこの程度が良いところかなと思う.情けないけれども…
山頂から富士山方面の写真を撮る…が,液晶画面に何やら赤い字の文章が1行出てきてシャッターが切れない.老眼鏡を持参していないので,何が書いてあるのか全く読めない.電源を入れ直したり,カメラを暖めたりしながら,やっと撮ったのが冒頭の写真である.
私は馬鹿たれカメラを諦めて,バックアップに持参した何時ものカメラをリュックから取り出し,改めてそちこちの写真を撮りまくる.
<塔ノ岳山頂から南アルプス方面を望む>
■雲間の富士山
写真を撮っていると,一瞬,雲が途切れて富士山が見え出す.ラッキー.
尊仏山荘に入る前に,山荘の裏手に廻って,霧氷と富士山の写真を撮りまくる.ここで,カメラの機種によって,同じ様な写真でも色調にかなりの差があることを発見する.
<霧氷と富士山>
■尊仏山荘
写真を撮り終えてから尊仏山荘に入る.
今日の小屋番はW田さん.私を追い抜いていったご常連が先客である.例によって300円也のお茶を所望する.
W田さんが,こたつの中で昼寝をしていたミー君を連れて来る.寝ぼけ眼のミー君の仕草が可愛い.石油ストーブの前に座らせると,素直に座っている.このオットリとしたところが,このネコの良いところである.
そうこうしている内に,重いリュックを背負ったカメラマンのMさんも山荘に到着する.
<尊仏山荘>
<尊仏山荘のネコ>
■ご常連4人と一緒に下山
10時07分,大三郎さん,鵠沼の貴婦人,韋駄天のTさんの3人で連れたって下山を開始する.
先日の土曜日よりは暖かいとはいえ,山頂は凍える寒さである.とにかく花立山荘まで下山しよう.そうすれば暖かくなるということで,一気に下る.ただ,今日はゲザンシュタインさんが居られないので,メチャメチャ速いのではなく,そこそこの速度で下り続ける.
金冷シ手前の階段をキャベツマンのT添さんが登ってくる.
「待ちきれなくて先に下山します・・・」
と挨拶してすれ違う.
10時34分,花立山荘を通過する.ときどき登ってくる登山者とすれ違う.
下山しながら,鵠沼の貴婦人と,いろいろ雑談.その内に,
「私,近代五種が“カラッキシ”ダメだったので,不良社員でしたよ・・」
と苦い思い出を披露する.正直なところ,近代五種すべてが苦手である.
実はサラリーマン時代に,直属の上司から,
「キミ,近代五種をやらないとサラリーマンとして失格だよ・・・」
とのご託宣を何回も受けたことがある.そう,私は不良社員だったのだ.
ちなみに,近代五種とは,「ゴルフ,麻雀,カラオケ,酒,タバコ」のこと.これらを通じて社内外の人達との円滑なコミュニケーションができなければ失格というわけだ.
”なにぬかす・・・コミュニケーションを図るなら,ITがあるではないか,フェースブックだって役に立つよ・・・それに,山や旅でも沢山の知人ができるじゃないか”
と詭弁を弄したくなる.
今風に考えれば,近代五種などで責め立てるのは,一種のパワーハラスメントではないかとすら思う・・・が,昔はこんなこと言われても,“はあ,そうですか”と神妙にしているしかなかった.でも,出来ないことは出来ないし,飲めない酒は努力したって飲めないから仕方がない.
振り返って見ると,近代五種に没頭していた上司や同僚は,ほとんど50歳代後半から60歳代の間に,永遠の旅立ちをしてしまった.そして,不良社員の私が生きながらえて,こうして塔ノ岳に足繁く通っているとは・・・まさに人生いろいろである.
■随分と高速で下山する
途中から先頭を行く大三郎さんの歩行速度が俄然速くなる.平らな所ならば,私もかなりの速度でも付いて行けるので,別に問題ないのだが,それにしても高速である.
結局,12時58分に登山口を通過する.乗車するバスは12時22分発である.まだバスには十分の時間がある.
途中,農家の庭先で可愛いネコに会う.このネコはとても良く人に懐いているので,仕草が可愛い.どことなく尊仏山荘の華伊達美弥雄さんに似ているところがある.私は,勝手に,
“このネコは,華伊達美弥雄さんの子供に違いない.”
と決めつけている.
美弥雄さんが,塔ノ岳山頂から,標高差1200メートル余りを下って,大倉の花嫁と結ばれたなんて,とてもロマンチックで良いなと勝手に思っている.それにしても,どちらのネコも仕草が可愛いくて行儀がよい.
12時05分,バス停大倉に到着する.塔ノ岳山頂から大倉までの下山所要時間は1時間48分.随分と高速だった.
<大倉の可愛いネコ>
■結局コーヒーだ
大倉12時22分発渋沢行のバスに乗車する.まだ,大方の登山客は下山していないので,バスは空いている.
適当に電車を乗り継いで,13時35分頃,大船に到着する.
“このまま,家に帰ってもな・・・・”
と,またもゃろくでもないことを考える.
結局,ルミネ1階にある某コーヒーチェーン店に入って,200円也のブレンドコーヒーをユックリ賞味する.振り返って見ると,この所,毎日,大船のコーヒーショップで,珈琲を賞味している.
塔ノ岳に登ると.その日の夕食が実に旨い.それに翌日ぐらいまでは.山に登った満足感で心が満たされる.でも,山登りが2~3日空くと,またぞろ登りたくなるから,私も“山中毒”に罹っているのだろうか.
中毒はともかく,今年第3回目の塔ノ岳詣では,土曜日にしたいなと思っている.
<大船の某コーヒーショップで一休み>
<ラップタイム>
7:06 大倉歩き出し
7:27 観音茶屋
7:43 見晴山荘
8:10 駒止茶屋
8:25 堀山の家
9:05 花立山荘
9:20 金冷シ
9:36 塔ノ岳山頂着(-4.0℃)
10:17 〃 発
10:34 花立山荘
11:00 堀山の家
11:17 駒止茶屋
11:35 見晴山荘
11:48 観音茶屋
12:05 大倉 着
[山行記録]
■水平距離 7.0km(片道)
■累積登攀下降高度 1269m
■登攀所要時間(雑談時間を含む)
大倉 発 7:06
塔ノ岳 着 9:36
(所要時間) 2時間30分(2.50h)
水平歩行速度 7.0km/2.50h=2.80km/h
登攀速度 1269m/2.50h=507.6m/h
■下降所要時間(休憩時間を含む)
塔ノ岳 発 10:17
大倉 着 12:05
(所要時間) 1時間48分(1.80h)
水平歩行速度 7.0km/1.80h=3.89km/h
下降速度 1269m/2.07h=705.0m/h
(おわり)
「丹沢の山旅」の前回の記事
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