中高年の山旅三昧(その2)

■登山遍歴と鎌倉散策の記録■
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アパチャ山登頂記;第3日目(1);アパチャ山山頂を目指して

2014年03月17日 09時52分03秒 | ロシア;アパチャ山

                             <アパチャ山全景>


[復刻版]
  アパチャ山登頂記;第3日目(1);アパチャ山山頂を目指して
           (アルパインツアー)
      2004年8月10日(火)~8月17日(火)

第3日目 8月12日(木);

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<ルート地図>



■プロフィールマップ
    

<蒲鉾テントの朝>

■漆黒の闇にトイレ探し
 今日はアパチャ山登頂予定日である.
 一晩中,蒲鉾型宿舎の斜めに傾斜した床で寝ていたので,寝心地は最低.ちょと寝返りをすると坂の下に向かってずり落ちてしまう.寝ぼけ眼で,ずり落ちた分だけまた上にずり上がってから再び睡る.そんなことを何回も繰り返す.オマケに蒲鉾テントの外にある暖房装置の送風機から出る騒音がうるさい.
 夜中にトイレに行きたくなる.ヘッドランプを点灯して蒲鉾型宿舎の外へ出る.辺りは真っ暗.オマケに曇り空らしく星一つ見えない.
 トイレは蒲鉾から40~50メートルほど離れたところにある.
 ヘッドランプの光は決して暗くはないが,トイレのあるらしい方向を照らしても薄切りの中に茫洋と消えてしまい,どこにトイレがあるかハッキリしない.オマケに足許には小さな礫や小岩が散乱している.こんな心細いところを彷徨くのは真っ平だ.
 “ええ~ぃ! 誰も見ていないから,この辺りでしてしまおうか…”
と正直なところ思い始める.
 丁度そのとき,〃ツアー仲間のお一人が,私と同じようにトイレに行くために蒲鉾から出てくる.そうなると,その辺りで適当に済ますわけにも行かないし,良心の呵責もあるので,2人でお互いに離れないように注意しながらトイレに向かう.
 手探りするようにソロソロと歩いてやっとトイレに到着する.
 トイレは勿論ボットン形式.床に六角形の穴が開いているだけ.うっかりするとボットンの中に落ちてしまう.ヘッドランプの光を頼りに,何とか用事を済ませる.私はトイレを出てから,相方が出てくるのをちょっとの間待つ.トイレの隙間から相方のヘッドランプの光が漏れている.
 蒲鉾テントへ帰るのも一苦労である.蒲鉾テントはおろか,周囲の建物にも常夜灯は全くないので,どちらの方向に蒲鉾テントがあるのか正確には分からない.足許の小石に躓きながら,ソロリソロリと多分こっちだろうという方向に向けて歩く.
 ヘッドランプの光の中に蒲鉾テントが見え始めたときには,正直なところ,ホッとする.
 蒲鉾テントの中に入ってから,雑魚寝をしている皆さんを踏みつけないようにして,自分の場所に戻るのも一苦労である.そんなこんなで,すっかり目が覚めてしまう.

■食事棟で朝食
 トイレに行ってから,睡っているような目覚めているような曖昧な時間が過ぎていく.夜が明けているらしいが照明がない蒲鉾テントの中は薄暗いままである.
 6時半頃,一同,何となくザワザワ感を感じて起床する.
 蒲鉾テントの近くには水場がないので,各自,自分の水筒に入れている水を使って歯磨きを済ませる.
 相変わらず上空には,分厚い雲が広がっている.今日も余り天気は良くないようである.
 7時から朝食である.
 私たちはツアーリーダーの後に付いて,食事棟へ移動する.
 朝食は,薄い塩味のスープと,少々硬いパンである.スープの中には細かくきざんだ何種類かの野菜が入っている.消化を良くするためかどうか分からないが,野菜類はクタクタになるまで煮込んである.
 私たちは他の登山者と混じって,有り難く朝食を頂戴する.
 食事の途中で.ツアーリーダーのSさんが,
 「今日の天気は余り良くないですが,明日まで待っても良くなるかどうか分かりません.したがって,本日,アパチャ山登頂を決行します」
と私たちに告げる.どうやら現地ガイドと相談した結果のようである.
 いよいよ,標高差1900mを往復する登山の開始である.

<ベースキャンプの朝食>


<霧の中の登山>

■濃い霧の中の歩き出し
 8時過ぎに食事棟の前に集合する.
 ツアーリーダーからランチボックスを受け取って,リュックに収める・
 8時20分,アパチャ山山頂を目掛けて,いよいよ出発である.

 先頭に現地ガイドが立つ,現地ガイドは韓国系の若い男性である.そして,その後に現地ツアーガイド,ツアーリーダーのSさん,その後に私たち参加者,最後に現地ガイドが付く.
 辺り一面に濃い霧が立ちこめていて.見通しは殆どない.全員雨具を着ての歩き出しである.

<朝霧の中,歩き出す>

■V字谷の左岸へ
 8時34分,ベースキャンプ近くを流れる小川を徒渉して,川の左岸に渡る.水量はそれほど多くはないが.ザワザワと音を立てながら水が凄い勢いで流下しているので,目が回りそうである.
 ツアーリーダーのSさんが小川を先に渡り,後続の私たちに手を差し伸べる.
 V字谷を渡ってから,目の前にある尾根を目指して,ほぼ直登のルートを登り続ける.結構な急勾配の登り坂である.

<V字谷を徒渉>

■石の標識
 8時41分,奇妙な形をした石の道標の前を通過する.石塔の台に何か刻字してあるプレートが取り付けられているが,ロシア語なので皆目何が書いてあるか分からない.
 この石の道標だが,私には帽子を被った人の座像のように見えるが,一体何だろう?

<石の道標>

■大きな尾根を登り続ける
 小さな尾根を越えて,再び小川を徒渉する.そして,目の前の大きな尾根に取り付く.
そして,なだらかな傾斜の尾根道をひたすら歩き続ける.辺り一面,玄武岩と思われる噴出物で被われている.
 相変わらず視界が悪くて,辺りの風景は殆ど見えない.私たちは,深い霧の中を,ただただ登り続ける.
 すでに森林限界を越えているので,見渡す限りのガレ場である.

<大きな尾根をひたすら登る>

■綺麗な白い花
 ガレ場の所々で,白い花が咲いているのが見える.過酷な自然条件の下でけなげに生きている感じの花である.もともと花オンチの私には,花の名前を教えて頂いても直ぐに忘れるに決まっている,そこで敢えて花の名前を教えて貰おうとは思わないが,この花が,カムチャッカ半島固有種なのか,日本でもお目に掛かれる花なのかぐらいは知りたいなと思う.
 後でツアーリーダーに,この花のことを聞いてみようかと思ったが,花の前を通過して2~3歩歩く内に,聞くことをすっかり忘れてしまう.
 俗に,鶏だって,3歩歩く間ぐらいは,今何があったのか覚えているといわれるが,どうやら私は花に関しては鶏以下の記憶力しかないようである.

<路傍の白い花>

<雲上の登山道>

■キャンプ場を見下ろす
 相変わらず薄ら寒い感じがするが,風は殆どないのが幸いである.手許の温度計では,気温は12℃.山登りには最適ともいえる温度である.
 9時25分,突然足許の霧が消える.進行方向左手の眼下に雪渓とキャンプ場が見えている.
 これまで霧の中を,それこそ五里霧中で登ってきたが,暫くの間に随分高い所まで登ったなと実感する.

<眼下にベースキャンプが見える>

■ランチボックスを開く
 10時30分,稜線の上で10分ほど休憩を取る.
 私たちはリュックからランチボックスを取り出して,甘いものなどを少し食べる.これで,後暫くは歩けるだけの燃料補給になるだろう.
 ランチボックスの中には,チーズを挟んだパン,菓子パン,菓子類,リンゴなどが黒いビニール袋の中に雑然と入っている.
 私には弁当というよりも,“餌”という感じがしてしまう.でも,まあ,海外で頂く昼食は,何処へ行っても私の知る限りでは,似たり寄ったりである.

<ランチボックス>

■突然カリヤーク山が見える
 10分ほどの休憩を終えて,再び歩き出す.暫くの間は単調な稜線登りが連続する.随分とユックリしたペースで登り続けるので,全く汗をかかないまま登り続ける.
 どうせ,あと何日かはシャワーを浴びることができないので,汗をかかずに登るのは大歓迎である.それでも参加者の何人かは汗ビッショリになっている.多分,平素から山歩きをしていない方なんだろうと勝手に想像する.
 11時42分,標高2000メートルほどの稜線を上っていると,突然,霧が晴れて視界が広がり始める.私たちはどうやら雲の上に出たようである.
 すると,進行方向左手(多分,西の方向)に聳える大きな三角形の山が忽然と目に飛び込んでくる.あまりの突然さに私はビックリ仰天する.
 それにしても綺麗な円錐形の素晴らしい山である.この山が有名なカリヤーク山(標高3,458メートル)である.
 “大感激…!!”
 同時にあの山に登ってみたいなという野望が頭をもたげる.しかし,現地ガイドに伺うと,このガイドが知る限りでは,カリヤーク山に登頂した人は知らないという.最近,日本人のどなたかが登ろうとしたが途中で引き返したとのこと.

<霧の中から忽然と現れたカリヤーク山>

■稜線に取り付く
 雲の上に出ると,上空には清みきった青空が広がっている.
 相変わらずノンビリペースでガレ場を登り続ける.口幅ったい言い方だが,平素,塔ノ岳を登り降りしている私には,多少焦れったく感じる速度である.私はツアーリーダーの許可を得て,隊列の前や後ろに回って写真を撮らせて貰う.
 この写真の中央に小高い山が見えている.稜線まで登りきったら稜線伝いにあの小高い山を目指すことになる.
 列の中央付近に居られる方が遅れ始める.前のグループとの間が開き始める.
 目指すアパチャ山山頂はまだまだ先である.
 

<稜線を目指して>

<山頂はまだまだ先>

■測候所跡
 12時27分,標高2,011mの測候所跡に到着する.

 右手前方には見上げるような高さでアパチャ山が迫っている.アパチャ山頂上付近からはガスの噴気が白い煙になって立ち上っている.
 ここから山頂までの水平距離は後僅かだが,随分と険しそうである.
 “ここから先はまだまだ大変だな…”
と思いながらアパチャ山山頂を見上げる.

<測候所跡からアパチャ山を望む>

アパチャ山を眺めながら昼食
 ツアーリーダーが,
 「10分ほど休憩を取ります.適当に食べ物を食べて下さい…」
と私たちを促す.
 私たちは,三々五々,近くの稜線上に適当に散らばって軽めの昼食を摂る.残りは山頂に到着してからゆっくり食べる予定である.
 周辺には私たち以外の登山グループが,何組も同じように休憩を取っている.
 立ち止まると少し寒いが,上空には青空が広がっている.辺りの風景を見回しながらの食事は気分最高である.

<測候所跡で昼食>

■カリヤーク山の雄姿
 10分ほどで休憩を終えて12時36分にまた歩き始める.
 西の方を見ると,山裾に纏わり付くように広がっている雲の上に,ピラミダルなカリヤーク山が聳えている.
 “なんとまあ…美しい山なんだろう…本当に素晴らしい!”
 私はグループから少し遅れそうになりながらも,気が済むまでカリヤーク山の写真を撮り続ける.

<素晴らしいカリヤーク山>

■難行苦行の連続
 予期していたとおり,ここから先はもの凄い急な登り坂である.山頂までの間は,正に難行苦行の連続となる.
 測候所跡から歩き出してすぐに雪渓を横断する.
 さらに岩稜を回り込むように雪渓の縁を渡る.また,大きな雪渓を越えると,胸突き八丁のガレた急坂になる.正に3歩登って2歩下る状態である.

<雪渓を渡る>

■やっとアパチャ山山頂に到着
 私たちは,両手両足を使って,ずり落ちるのに逆らいながら,火山礫が降り積もった急坂を這い上がり続ける.こんな難行苦行をどの位の時間続けたろうか.
 15時40分,私たちはやっとの思いでアパチャ山外輪山の山頂(標高2,740メートル)に到着する.ベースキャンプからの所要時間は,休憩時間込みで,実に6時間02分(6.0h)に達している.
 ベースキャンプ(標高800メートル)とアパチャ山山頂との標高差は1,940メートル.
 従って,
    1,940m/6.0h=323.3m/h.
 1時間当たりの登攀速度は,休憩時間込みで約323メートルということになる.
 登っている間,私は随分と遅い歩きだなと感じていたが,こうして実績データで見ると,そんなに遅くはないなという印象に変わる.
 呼吸を整えてから,山頂の火口原を覗いてみる.そこには赤茶けた色の火口原が広がっている.火口原の所々から,白煙が立ち上っている.まだまだ山は生きているようである.なかなか迫力のある風景である.
 これから,外輪山を半周しながら周囲の風景を楽しむ予定である.

<アパチャ山山頂>
                                   (つづく)

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