<雪の富士山>
樹氷でネコも寒がる丹沢:塔ノ岳(今年3回目)
(単独山行)
2011年1月12日(水) 晴
■ギラギラと朝日が昇る
昨夜,どうやら丹沢の山地に雪が降ったようである.少しばかりだが・・
私は雪が見たくて,急に丹沢へ出掛けることにする.とはいえ,冷え切った早朝,温かい寝床から起き出すのは,随分と辛い.寒いので,出掛けるか,出掛けないかで,随分と迷うが,「ままよ」とばかりに山行きの装束に着替えてしまう.すると,どういう訳か俄然「行くぞ!」という気分になる.
渋沢発大倉行1番バスの乗客は,たった6名.幾ら平日とはいえ,今日のように晴で少し温かいという天気予報なら,もう少し登山客が居ても良さそうなものである.6名の乗客の内,4名は顔見知りのご常連である.韋駄天のTさん,カメラマンのMさん,それに何時もご夫婦で登られている奥さん,たまたま今日はお一人である.もう一人も顔に見覚えのある女性.この4人,それにFHこと私を加えて5名が塔ノ岳常連である.
薄明るくなった車窓からは,真っ白に雪化粧した丹沢の山々が見えている.バスが終点の大倉に到着する頃,ギラギラと輝く日の出を迎える.
■山麓から残雪
大倉から登山口までの舗装道路は,夜半に降った雨が雪のために濡れている,辺りを見回すとかなりの残雪が見える.ここは標高290メートルの地である.私が住んでいる鎌倉からそれほど遠いところではないが,早朝の冷え込みには大分差があるようである.
路面は凍結していて滑りやすい.滑って転倒したら元も子もなくなるので,歩き出しから慎重になる.また例によって,韋駄天組より5~6分遅れて,7時10分に大倉を歩き出す.
丹沢ベースを過ぎる頃から,路面に残雪が見え出す.
7時44分,太陽を反射して光っている相模湾の見下ろしながら見晴山荘を通過する.そして,すぐに大倉尾根最初の難所,堀山の尾根への急坂に差し掛かる.坂の遙か上に,1人の女性が歩いているのが見える.積雪は大したことはないが,うっすらと雪を被った礫や石が滑るので,慎重に登り続ける.
階段を登り切ると木道になる.1センチメートル足らずの積雪だが,まだ誰も踏んでいない雪が積もっている.私は童心に返って,自分の足跡を雪の上にプリントする.実に楽しい.
■駒止茶屋
一本松を過ぎると,比較的平坦な道になる.残雪はさらに増えて,登山道全体が雪に覆われている.いよいよ冬の到来である.尾根道の東側には雪を抱いた三ノ塔など表尾根の山々が見えている.実に美しい風景である.
8時16分,急な登り階段を登り切って,駒止茶屋に到着する.大倉を歩き出してから1時間07分経過している.随分と遅いが,路面が凍結している悪条件を勘案すれば,まあこんなものだろうと,自分で納得する.
急階段の途中で,先ほどの見晴茶屋の急坂で遙か上を歩いていた女性に追いつく.ご常連の女性である.
「随分と暑いですね・・どうぞ先へ行って下さい・・」
とのことなので,先に行かせて貰う.
やがて,富士山が良く見える富士見平(俗称)に到着する.今日は近場の山も雪化粧しているので,冬らしい富士山の写真が撮れる.
■萱場平
8時53分,萱場平を通過する.日当たりの良い萱場平でも,今日はさすがに残雪が見える.萱場平の先に見えている花立山は雪で真っ白である.
木道を踏んで先へ進む.凍てついた木道が,足で踏み込む度に,ギシギシと音を立てる.
残雪がべったりの露岩帯を登り続ける.どこかの小屋の主が,大きな荷物を背負って下山してくる.
「今日は足許が悪いですね・・注意して登って下さい・・」
と私に注意する.
■花立山荘
後7分坂に差し掛かる.坂を半分ばかり登ったところで,2本ストックのYさんとすれ違う.Yさんによると塔ノ岳山頂の気温はマイナス7℃.随分と冷えている.
標準速度7分で坂を登り切って,9時15分に花立山荘を通過する.大倉からの所要時間は2時間06分.2時間を6分オーバーしている.
山荘前の広場で,若い男女が休憩を取っている.富士山がとても良く見えている.
「登りですか,下りですか・・」
と話しかけてみる.登りだとのことである.
■樹氷の中を登る
花立山に差し掛かると,気候が一変して寒くなる.辺りは見事な樹氷に変わる.素晴らしい.山一面に真っ白な花が咲いたように見える.
もう,ラップタイムなど,どうでも良い.残雪と樹氷を背景に富士山と南アルプスの写真を夢中になって撮りまくる.
さきほどから,絶え間なく粉雪が舞っている.青空なのに・・
<塔ノ岳山頂が見える>
■金冷シ
9時26分,金冷シを通過する.残雪が一層深くなる.場所によっては階段が隠れるほどの積雪である.勿論,新雪なのでアイゼンは不要.でも,これからはアイゼンとサングラスを常にリュックに入れておかなければいけないなと改めて思う.
金冷シから塔ノ岳山頂までの霧氷は実に見事である.まるでお伽の国に迷い込んだのではないかと思うほど幻想的である.私はめったやたらに写真を撮りまくる.ただ,山頂に近付くにつれて,気温がますます下がる.気温が下がるにつれて,デジカメのレンズ蓋が開きにくくなる.
山頂直下,最後の登り階段を半分ほど登ったところで,下山してくる韋駄天のTさんとすれ違う.
「・・山頂の気温は,マイナス6℃でしたよ.Yさんが30分前に到着したときはマイナス7℃だったそうですよ.30分の間に1℃気温が上がったんですね・・」
■塔ノ岳山頂
9時46分,漸く塔ノ岳山頂に到着する.大倉からの所要時間は2時間37分.決して速くはないが,こんな気象条件では致し方ないなと思う.
山頂には誰も居ない.真っ白に雪化粧した山頂は,実に綺麗である.例によって,山頂からの風景をグルリとデジカメに収めようとするが,レンズカバーが凍り付いていて,なかなか開かない.カメラを懐に入れて暖めながら何とか写真を撮る.何か防寒対策を考えなければダメだなと思う.
■尊仏山荘
尊仏山荘に入る.ご常連の夫婦が先客.余り会ったことがない方である.小屋番は最近復帰したばかりのOさん.例によってウエスタンカウントリー音楽が流れている.山頂の気温はマイナス5℃.
Oさんが奥の部屋からミー君を連れてくる.ミー君は寝ていたらしくて,ボンヤリしている.背中を丸めて寒そうである.そして,ピチャピチャと水を飲む.早速,Oさんとミー君のツーショットを撮る.
ネコが居ると,座が和らぐ.暫くの間,ネコを肴に雑談が弾む.どなたかがOさんに話しかける.
「・・ネコ,一寸肥りましたね・・」
「そうなんです.私のいない間に,××さんが,餌をやり過ぎたんですよ・・」
「ネコ,(復帰後)すぐにOさんだと分かりましたか」
「まあ・・15秒ほど.思い出すのに・・」
「ところで,もう平気で歩けるようになりましたか・・」
「まだまだですよ・・何しろ入院中に太ももが10センチも小さくなりましたよ・・・でもそろそろ水くみに行ってみようかと思っています.18キログラムあるんですが・・」
そんな話をしている内に,駒止茶屋で先に行かせて貰った女性が到着する.
今度は東京タワーとスカイツリーの話題になる.ご常連の男性がOさんに,
「ここから東京タワー,見えますか?」
と質問する.
「勿論,見えますよ・・・夜になると新宿や東京タワーの照明が綺麗ですよ.東京スカイツリーも良く見えますよ・・」
このやり取りを聞いていて,私は“我が意を得たり”と独りニヤニヤする.
■ユックリ下山
そろそろ下山しようかと思う.今日は大倉発12時52分のバスに乗りたい.そこで,十分時間の余裕を見て,10時17分に尊仏山荘を出発する.
私が山荘を出ると,入れ替わるように,先ほど花立山荘で出会った若い男女が入ってくる.
「先ほどはどうも失礼しました・・」
山頂から花立山荘までは,薄手のフリースを羽織って下山する.金冷シから下の樹氷はもうすっかり溶けている.
ポツリポツリと登ってくる登山客とすれ違いながら下山し続ける.花立山付近で,カメラマンのMさんとすれ違う.
花立山荘を過ぎると,気温が一段と上昇する.少々暑いなと重いながらも,面倒なので,萱場平まで,フリースを来たまま下り続ける.日当たりの雪は溶けているが,まだ所々に残雪があり,足許は滑りやすい.転倒しては元も子もなくなるので,一歩一歩慎重に下り続ける.
12時41分,予定通りに大倉に到着する.12時52分のバスに乗車した登山客は2人だけ.
渋沢から小田原を経由して,14時44分に無事帰宅.
早速,熱い湯を湧かしてザンブリ入浴.冷えた指先,足の先がビリビリする.実に気分が良い.
「う~ん・・やっぱり,山登りは良いな~ぁ・・・」
<ラップタイム>
7:09 大倉歩き出し
7:29 観音茶屋
8:46 見晴茶屋
8:16 駒止茶屋
8:33 堀山の家
9:16 花立山荘
9:30 金冷シ
9:46 塔ノ岳山頂 着(-5.0℃)
===========================================
10:17 塔ノ岳山頂 発
10:29 金冷シ
10:45 花立山荘
11:25 堀山の家
11:43 駒止茶屋
12:06 見晴茶屋
12:21 観音茶屋
12:41 大倉 着
[山行記録]
■水平距離 7.0km(片道)
■累積登攀下降高度 1269m
■登攀所要時間
大倉 発 7:09
塔ノ岳 着 9:46
(所要時間) 2時間37分(2.62h)
登攀速度 1269m/2.62h=484.4m/h
■下降所要時間
塔ノ岳 発 10:17
大倉 着 12:41
(所要時間) 2時間24分(2.40h)
下降速度 1269m/2.40h=522.2m/h
(おわり)
「丹沢の山旅」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/2b8d0f9e05fb59c3ec1bf60da4d118c7
「丹沢の山旅」の次回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/378d1bc82ef4eb9920a10a2810356963
「塔ノ岳」の次回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/f826be87cb2bc3cb8ce71b8f7f2c4b26
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