<塔ノ岳山頂から富士山を望む>
富士山を見ながら登る猛暑の丹沢;塔ノ岳(今年34回目)
2013年7月10日(水) 晴
■猛暑なので出掛けるを迷うが…
つい先日の日曜日,猛暑の中,山梨県内の甲州道中を歩いてから,暑い最中に歩き回るのが如何に辛いかを経験したばかりである.あの日以来,関東地方の各地では猛暑が居座っている.
毎週,出来るだけ水曜日と土曜日に丹沢塔ノ岳に登ろうと決めている私にとって,今日は塔ノ岳に出掛ける日である.でも,相変わらす猛暑が居座っているので,さてどうしたものかと思案する.
とはいえ,折角,4時前に起床したのだから,やっぱり塔ノ岳に出掛けようと思う.どはいえ,クソ暑い最中に,例の小田原駅での階段2段跳びは遠慮したい.そこで,いっそのこと朝の涼しい内に自宅から大船まで歩いてしまおうと思う.バスの料金でいえば240円の距離である.
でも,朝とはいえ,外の空気は何となくベットリとしていて気持ちが悪い.温度計を見ると,まだ4時30分だというのに24℃もある.
大船発5時10分の電車に乗車する.小田原では,何時もの“江戸の借りを長崎で返す”ような気分で,超ユックリと6時04分発の小田急電車に乗り換える.電車はガラ空き.6時20分に渋沢駅に到着する.
いくら何でも早すぎるのか,大倉行バス停には誰も居ない.ボンヤリバス停に立っていても仕方がないので,駅前をブラブラした後,再びバス停に戻る.どうやら下り電車が渋沢に到着したらしく常連ばかり数名の方がバス停に来られている.やがて次の下り電車が到着して,何人かの登山客が列に並ぶ.
さすがに酷暑のためか,1番バスの乗客は10名程度で空いている.その中で,ご常連はTGさん,TDさん,KMさん,NGさん,Hさん,NMさん,STさん.
■見晴階段
7時05分,たまたま居合わせたTGさん,TDさん,NGさんと一緒に大倉から歩き出す.
良く晴れてはいるが,湿度が高いためか,何となく湯気が立ちこめているようなねっとり空気が漂っている.案の定,今日は厳しい山登りになりそうである.
雑談をしながら,ユックリペースで登るが,次第にNGさんが遅れて見えなくなり,ここから暫くの間は残りの3人だけで登り続ける.
7時48分,見晴茶屋を通過して,いよいよあ大倉尾根第一関門の見晴階段に差し掛かる.階段下から坂の上を見上げた写真を撮る…が,帰宅後,映像を確かめると,極端にブレていて.何が撮れているのか全く分からない.残念ながら,ブログで公開できるような代物でない.
坂を見上げても,珍しいことに,今日は全く登山者の姿が見えない.
“そりゃ~そうだろう.こんな蒸し暑い日に,わざわざバカ尾根などに登ろうという酔狂な連中はお前さん達だけだよ”
と誰かが言っているような気がする.
■駒止茶屋
一本松を過ぎて,平らな道に差し掛かる.8時05分,早々と下山してくるKSさんとすれ違う.例によって,
「やあ,やあ,…暫く振りですね」
と挨拶.
「山頂の気温は20℃.涼しくて気持ちが良いですよ…」
と教えてくれる.期待しよう.
いよいよ駒止階段に差し掛かる.
急な坂道は特に身体に注意しながら登ろうと思う.私は,齢(よわい)“トウネントッテ”ウン十歳の高齢者である.万一,トラブルでも起こしたら,
「だから言わんこっちゃない! 少しは自分の年令を考えて,暴挙は慎みなさい…」
と避難揶揄の猛攻を受けるに違いない.だから,極力,極力,何のトラブルもなく登るように絶えず注意している.
駒止階段の急坂は特に厳しい.超ユックリで,エッチラホッチラ登り続ける.その間,汗などかきたくないが,残念ながら汗ビッショリ.リュックの中のハイドレーションシステムには冷やした水が2リットルほど入っている.それを少しずつ飲みながら,時々は梅干しを口に入れる.
8時21分,ようやくの思いで堀山の家に到着する.大倉から歩き出して1時間16分も掛かっている.
“蒸し暑いから仕方がない…ドンマイ,ドンマイ…”
■堀山の尾根
いよいよ待望の堀山の尾根である.尾根道に入ると,気分的には,いくらか涼しいような気もするが,殆ど無風で,相変わらず暑い.
8時27分,下山してくるYZさんとすれ違う.暑いためかYZさんの駆ける速さが幾分遅いようである.
富士山が見える場所で,例によって富士山の写真を撮る.私,これでも昔技術屋.いつも富士山の写真が撮れないのは,多分,露出オーバーになっているんだろうと,勝手に判断する.そこで,まずは最も明るい青空にカメラを向けてから,シャッターを半押しする.それから富士山の写真を撮ってみる.
案の定,我が愛する馬鹿カメラでも,なかなかうまく富士山が写っている.シメシメ…である.まだ大気が淀んでいるためか,富士山には雲一つ掛かっていない.でも,こんなに太陽が照りつけていたら,何れ地面が熱せられて,上昇気流が富士山を吹き上がるだろう.そうだとすれば,間もなく雲に隠れるに違いない.今のうちに富士山の写真を沢山撮っておくことにする.
<堀山の尾根から富士山を望む>
■萱場平
9時37分,堀山の家に到着する.小草平からも相変わらず富士山が良く見えている.
ここまでご一緒したTGさんとTDさんが,ここで給水休憩を取るという.ハイドレーションシステムで絶えず給水している私は,
「ユックリ先に登っています」
とお二人に挨拶して,そのまま登り続ける.
私の標準時間では,堀山の家から花立山荘までの所要時間は40分である.今日は蒸し暑さを想定して,速度を一段と落として,42分程度を目安にしようと思う.
ところが,登り始めると汗が絶え間なく流れ出して,ズボンに汗が滲み始める.
“こりゃ~…ダメだ!”
私は早々と42分は諦め,今日の登山の目標を.とにかく安全に山頂まで到着することに切り替える.礫混じりの道を登っていると,堀山の家で給水休憩を取っていたお二人の話し声がだんだんと後ろから近付いてくる.そして,階段道にさしかかるところで,お二人に先を譲る.それからは,お二人の後ろ姿がだんだんと小さくなり,やがて私の視界から消える.
8時57分,萱場平を通過する.私を追い越したお二人は,萱場平から階段道に差し掛かっているだろう.辺りには誰も居ない.厳しい日射しの中で,萱場平は静まり返っている.木道の間で繁茂するアザミは,こんなに蒸し暑いにもかかわらず元気に葉っぱを広げている.私はアザミから元気をもらいながら,アザミの写真を撮る.
<萱場平>
■後7分坂の富士山
萱場平を過ぎても,一向に涼しくなる気配はない.
勿論,私は数分おきに冷水を2~3口ずつ補給しているが,相変わらず汗もかきっぱなしである.山学校では「流れるような汗をかかないように歩け」と教わっているが,涼しい北アルプスの山々ならいざ知らず,炎暑の塔ノ岳では,この教えを守るのは至難の業である.
私は,内心で,
“こんなに汗をかいていてはマズイナ…”
という自責の念もあって,一層歩行速度を落とす.
後7分坂(花立階段のこと)の手前にある大岩のところで下山してくる韋駄天のNMさんとすれ違う.何時もなら,後7分坂を3分の2ほど登ったところですれ違っている.それだけ,私の登山速度が遅くなっているんだろう.
9時14分,ようやく後7分坂に到着する.相変わらず富士山が良く見えている.まだ雲は沸いていないようである.早速,ここでも富士山の写真を撮る.
ノソノソと後7分坂を登っていると,もう少しで花立山荘に到着するところで,YUさんに追い抜かれる.
<後7分坂の下から富士山を望む>
■花立山荘
後7分坂を8分掛けて登って,ようやく9時25分に花立山荘に到着する.前方には,先ほど私を追い越したYUさんの後ろ姿が見えている.山荘前の広場からは相変わらず富士山が良く見えている.まだ時間が早いためか広場には誰も居ない.
大倉を歩き出してからの所要時間は2時間20分.堀山の家からは47分.いずれも大変な遅さだが,まあ,とにかく何事もなくここまで登れたことに感謝しなければ…
<花立山荘>
■花立山
花立山に差し掛かる.ちっとも涼しくならないので,シンドイ.
とにかく熱射病が怖いので,絶えず無理をしないように心掛ける.何時もは花立山荘から9分程度で登っている花立山まで12分も掛けてユックリ登る.
相変わらず富士山が良く見えているので心が和む.良く見ると富士山の山裾で雲が湧き始めているようである.
9時37分,花立山を通過する.
<花立山から富士山を望む>
■塔ノ岳山頂
9時47分,金冷シを通過する.ここまで来れば,いくら鈍足の私でも,塔ノ岳山頂まで15分もあればユックリ登れる.
“どうやら今日も無事に山頂まで登れそうだ…”
私は気分的に随分と楽になる.
金冷シから最初の長い階段を,ノロノロと登る.青息吐息と言った方が正しいかも知れない.
長い階段を登り切る頃,後ろからいきなり,
「おや,FHさん…」
と声を掛けられる.
驚いて振り返るとFTさんである.FTさんは,私が乗車したバスより30分後の2番バスで来られたのに,もう追い付かれてしまう.FTさんの脚力が実に羨ましい.
長い階段を登り切ると,私を追い越したはずのFTさんが私を待っている.そして,冷たい紅茶を一口分けてくれる.火照った身体に,この一杯がなんとも美味しい.感謝,感謝である.
後は,マイスピード…というよりは,これ以上速く歩けない.忽ちの内にFTさんの後ろ姿は見えなくなる.
青息吐息で登り続けて,10時03分,ようやく塔ノ岳山頂に辿り着く.山頂の気温は20℃.涼しい微風が吹いている.大倉からの所要時間は2時間58分.よくもまあ,こんなに時間が掛かったものだと呆れてしまう.でも,まあ,考えようによっては,熱中症にもならずに,無事,山頂に到着したんだから,素直に喜ぶべきだよと自分に言い聞かせる.
家から2リットルの水を持参していたが,登りで既に1.5リットルほど飲んでいる.下山は残り0.5リットルでナントカしなければ…
まずは山頂から周囲の写真を撮るという儀式を済ませる.湿度が高いためか,辺り一面に靄が掛かっていて,辺りの風景はハッキリとは見えない.案の定,富士山山頂には雲が掛かり始めている.
<塔ノ岳山頂からの富士山>
■涼しい山頂
山頂の気温はそれほど低いわけではないが,涼しい風が吹いている.
山頂の一角で私より先に山頂に到着した常連さん達が涼んでいる.韋駄天のSTさんも珍しくまだ山頂に居られる.
私も常連さんに加わって暫くの間雑談に興じる.
<山頂で雑談>
■尊仏山荘
STさんとTGさんは下山開始.
残りの3人は,尊仏山荘に立ち寄る.先客は常連のYUさん.今日の小屋番はWDさん.ネコはどこかで昼寝をしているらしく客席には現れない.
私は,水分補給を兼ねて,300円也のお茶を所望する.ときどき登山客が小屋で飲み物などを購入するが,外の方が気持ちが良いのか,小屋に留まらずに外へ出て行く.
暫くの間,取り留めもない雑談に興じる.
■色々な方とすれ違いながら下山
10時31分,そろそろ下山しようと思う.
FTさん,KMさん,TDさんと一緒に下山開始.
最初の階段で,同じバスに乗車していたHさんとすれ違う.さらに,金冷シ手前の長い階段で,NGさんとすれ違う.登り初めでは,私たちもNGさんと一緒に歩いていた.
NGさんは,
「今日は,4時間の登山ですよ…」
と苦笑する.
さらに下り続けて,花立山のガレ場で,大きな荷物を背負ったチャンピョンとすれ違う.写真を撮らせて…というと,両手を広げてポーズをとってくれる.
<重い荷物を背負ったチャンピョン>
■白いネコ
駒止茶屋を過ぎる辺りから,だんだんと蒸し暑くなる.まだ,蚊やアブの数が少ないけれども,これからの季節は,山麓で蚊やアブに悩まされることになる.
今日乗車するバスは12時52分発と決めているので,時間はタップリある.ユックリとした調子で下山し続ける.途中,観音茶屋で休憩を取っていたTGさんとバッタリ会う.
大倉の集落に入ったところで,白いネコを見付ける.早速,このネコの写真を撮ろうとするが,手前の木が邪魔で,なかなか上手く撮れない.尻尾が魅力的なネコだが,尊仏山荘のミー君とは血縁関係はなさそうである.
<白いネコ>
■無事帰宅
12時31分に大倉に下山する.12時52分発渋沢行のバスまで少し時間がある.靴を洗ったり,清涼飲料水を飲んだりしながらバスを待つ.
渋沢駅,小田原駅での接続も円滑で,14時25分頃,無事,大船に到着する.
大船も相変わらず暑い…といっても,微風なが海風が吹いているので,大倉辺りと比較すると,大分過ごしやすい.
14時45分頃,無事帰宅する.
登山で汗ビッショリの衣類を全部洗濯機に放り込み,シャワーを浴びて汗を流す.乾いた衣類に着替えると,実に爽やかな気分になる.
■思わぬ出来事
私は,ほぼ1ヶ月毎に,近くの内科医を訪れて,血圧を中心に身体のチェックをしてもらっている.私は特にこれといった持病はないが,血圧だけは少々高めである.
何とか薬剤に頼らずに血圧を低く保とうとしているが,なかなか大変である.
診断を終えて,代金を支払うときに,私の財布が汗でベトベトしているのに気がつく.塔ノ岳に登っている間にかいた汗を,ポケットに入れていた財布がタップリと吸い込んでいて.財布の中の1000円札も汗でベタベタ,ビショビショになっている.困った! でも仕方がない.
「どうもスミマセン…先ほど丹沢の山に登っていたんですが…そのときかいた汗でお札がベタベタになっちゃいました…」
と詫びを入れる.
窓口の看護師は,大笑いしながら,
「別に構いませんよ…お札が何枚か一緒に張り付いていたら貰っちゃいますよ」
と冗談を言う.傍らにいた患者さんも大笑いである.
ハズカシイ! でも,どうしようもない.
看護師はティッシュ箱からティッシュを取り出して,ベタベタのお札をティッシュに挟み込む.
勿論,診断結果は異常なし.
(おわり)
「丹沢の山旅」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/340ff0abb9f56e4f3a241ccde594be63
「丹沢の山旅」の次回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/9a91be852233f4b1fb2c715efab34869
.