<湯の平の小さな湖と浅間山>
紅葉の浅間山・小諸;懐古園・湯の平・北国街道散策(4):湯の平探訪
(単独または小諸グループ)
2011年11月1日(火)~3日(木・文化の日)
第2日目;2011年11月2日(水) (つづき) 晴
<とりあえずは湯の平へ>
■火山館を出発
火山館で館長のK田さんを囲んで暫く雑談をした後,11時丁度に火山館を出発.とりあえずは湯の平に向かう.その先,浅間山(前掛山)山頂へ向かうか,それとも第二外輪山を一回りするか,それがイヤなら湯の平を散策するだけで,また火山館へ戻るか,とにかく何も決めずに歩き出す.
さすがに秋も深まって,この辺りの紅葉はもう終わりである.すっかり見通しの良くなった枯れ木の間から第二外輪山の山々が美しく見えている.
<薪の準備もできた火山館>
■草すべり分岐からJバンド分岐へ
火山館から,ほんの少し坂道を登ると湯の平に入る.湯の平は浅間山釜山と第二外輪山との間に形成された火口原である.西側には,かつての火口であった第二外輪山が切り立ったか壁のように連なっている.
もう紅葉が終わってすっかり落葉した唐松林を抜けて,11時06分に草すべり分岐に到着する.この辺りまで散策する登山者が多いので,何人かの方々とすれ違う.
ここから草すべりを登って,高峰高原に抜けるルートも面白い.
<火山館のすぐ上から蓼科山を望む>
<草すべり分岐>
■Jバンド分岐
草すべり分岐から,浅間山登山道に沿って登り続ける.
落葉した木々の間から,浅間山や第二外輪山の山々が見え隠れする.今日は天気が良くて風も殆ど吹いていないので実に心地よい.
11時24分,Jバンド分岐に到着する.
「兄貴,どっちへ行こうか・・・」
と弟が私に聞く.
正直なところ,私は浅間山に向かうのも良いし,火口原を散策するのも良い.どうも決めかねる.そこで,
「オレはどっちでも良いんだが・・・・どうしよう?」
「どっちでも良いと言われると困っちゃうな・・・」
と弟が困惑する.
この困惑,私には痛いほど良く分かる.
話が変な方向に飛ぶが,私もいくつかのグループの案内役になり,あちこちの低山や鎌倉を案内することがある.そのとき,一番困るし,困惑するのが,
「どこでもいいから,お任せします・・」
と言われてしまうことである.こんなことを言う人に限って,後から不満が出るのが常である.
「じゃあ・・・Jバンドの方へ行きましょう」
<Jバンド分岐>
<浅間山を眺めながら>
■唐松林と浅間山
Jバンド方面へ入ると,途端に登山者が居なくなる.
分岐からほんの5分も歩くと,私たち3人以外には誰も居なくなる.周囲の樹木が段々と少なくなり,だんだんと荒涼とした礫と石の世界が広がり始める.
落葉した唐松の間から前掛け山と浅間山の稜線がクッキリと見えている.
歩き進むにつれて,浅間山の表情が刻々と変わる.
私は,昨日(11月1日),懐古園の小山敬三美術館で見た,小山敬三画伯の浅間山の絵を思い出しながら,刻々と変化する浅間山の情景を楽しむ.
<唐松林から見上げる浅間山>
■火山弾と浅間山
樹林帯を過ぎると,一面に火山弾が散らばる火口原になる.大小さまざまな大きさの火山弾が散らばっている.これらの火山弾は,全部,目の前の浅間山が飛ばしたものだと思うと,自然の力のものすごさを思い知らされる.
<累々と散乱する火山弾と浅間山>
■三つ石
11時50分,三つ石に到着する.
ここには,特に大きな火山弾が3個並んでいる.私の素人考えでは,多分,この3個の石は,もともと1個の大きな火山弾だったものが,空中から地面に落ちたときの衝撃で3個あるいはそれ以上に割れたものではないかと思っている.
この三つ石を通り過ぎて,少し登ったところから,第二外輪山に登るJバンドの急登が始まる.
「折角だから,県境まで行ってみようか・・・」
と弟と私がどちらが先と言うこともなく言い出す.長野県と群馬県の県境である.
<三つ石>
<長野県と群馬県の県境を行く>
■県境の稜線
数年前,弟と一緒に,晩春の浅間に登ったことがある.あのとき,県境まで足を延ばしたが,この辺りにはかなりの積雪があったのを思い出す.
Jバンド登山道から外れて,ガレ場に入る.夏の間に繁茂していた枯れ草の中を進む.足許が見えず,石がゴロゴロしているので,とても歩きにくい.一歩一歩よろけながら先へ進む.
すぐそこに県境があるように見えるが,いざ歩いてみると結構時間が掛かる.
<前方に県境の稜線が見える>
■違った表情の浅間山
12時02分,県境の稜線に到着する.
東側には,間近に浅間山が見えている.群馬県側の浅間山の山裾が,長野県側に比較すると随分と急傾斜で落ち込んでいることが分かる.
浅間山が噴火すると,ほとんどの火山灰や溶岩が群馬県側に落ちるのも,この地形を見ると成る程と納得できる.
<県境付近から浅間山を望む>
■群馬県側遠望
県境に立って群馬県側を見下ろす.
霞の遙か彼方に山並みが広がっている.正確なことは,私には分からないが谷川連峰だろうか.
眼下には嬬恋村の集落が見えている.
<県境から群馬県側を望む>
■鬼押出し
県境に立って右手下(南東)に鬼押出しが手に取るように見えている.
私たち地元の人間は,昔,鬼押出しのことを「オニオッタシ」と呼んでいたが,今はどうだろうか.
ここから見下ろすと,立派な道路や,沢山の建物が建っている.ガチャ目の私には,さすがに観光客の姿までは見えないが,ちょっとした倍率の双眼鏡でもあれば,観光客の姿も容易に見ることができるだろう.
眼下,すぐ近くに見下ろせる鬼押出しである.もし,浅間山がちょっと大きな噴火をしたら,たちまちの内に噴石が落下するのではないかと心配になる.ここから見下ろしていると,住んではいけない所のような気がしてくる.
<眼下すぐ近くに鬼押出しが見える>
■石の陰で昼食
時間も良くなっているので,この辺りで昼食を摂ろうということになる.
ところが,この辺りは南風が吹き抜けていてとても寒い.いわゆるベルヌーイの定理そのもの.広い火口原を引き上げてくる風が,幅の狭いコルを抜けていくので,どうしても風が強くなる.
そこは理系出身の私,水力学の教えるところでは,コルの中央を避けて,端の方へ行けば流速は下がるはず.そこで,第二外輪山沿いに移動する.すると予想通りに,随分と風が穏やかなところに到着する.
ここで,30分ほど休憩.今朝方,コンビニで調達したおにぎりやパンで昼食を済ませる.
<火口原探訪>
■火山弾庭園
ユックリ食事をしている内に,あちこち高いところを歩き回る元気が消え失せた.そこで,今回は,火口原探訪としゃれ込むことにする.
12時39分,県境から再び湯の平方面に歩き出す.
辺り一面に,火山弾が散乱している場所に入る.
見渡す限りの火山弾群である.おびただしい数の火山弾が噴火で吹き飛ばされたことが分かる.まさに活火山の脅威である.
この辺りは,まさに火山弾庭園とでも命名したくなる奇勝,名勝の場所である.まるで外国の山へ行ったような気分になる.そういえば,この辺りの風景は,何となくモロッコのツブカル山に似ているような気がしてくる.
<おびただしい数の火山弾が散乱する火山弾庭園>
■湯の平湿原へ
往路を辿って,12時49分,再び三つ石に戻る.
暫くの間,登山道に沿って下り続ける.
ここからのルートを,このブログで明らかにすることはできないが,第二外輪山寄りにガレ場を入る.当然,繁茂する植物を踏みつけないように細心の注意を払って歩く.
やがて熊笹が繁茂する平原になる.この辺りから見る浅間山には,また異なった趣を感じる.
<湿原入口付近から見上げる浅間山>
■第二外輪山近くの獣道
第二外輪山が一層近くに見え出す.足許は深い熊笹に覆われている.熊笹の中の踏み跡道(獣道)をユックリと辿る.
獣道を作ったのは,熊か,それともカモシカか.良く分からない.後で,野生動物写真家のT澤さんに伺うと,どうやら熊が作った獣道だったようである.
<熊笹の中の獣道を行く>
■湿原から牙山を望む
途中,少々,道に迷うが,13時18分,湿原に到着する.最近,大量の雨水が流れたのか,辺りの芦原が川の流れに沿って大規模になぎ倒されている.
前方には,牙山から剣が峰の山稜が見えている.あの辺りは人間が近づけない熊の生息地である.
自然を傷つけないように,細心の注意を払って,獣道に沿って南下する.
<美しい湯の平湿原>
■美しい風景の獣道
獣道を進みながら振り返ると,唐松林の向こうに第二外輪山が屹立している.
「この辺りで,重文に時間を取って,絵を画きたいな・・・」
と真剣に思い始める.それには,火山館に宿泊しなければならない.困ったな.
<獣道から見上げる第二外輪山>
■逆さ浅間山
湿原には小さな沼が沢山ある.ただ,この辺りには泥炭はないと思うので,いわゆる地塘ではないだろう(あるいは地塘かも知れない).
湖面にカメラを近づけて逆さ浅間山の写真を撮って楽しむ.
<逆さ浅間山を楽しむ>
<再び火山館を経由して浅間山荘へ>
■火山館へ戻る
時間も押してきたので,再び熊笹の中の獣道を下る.やがて獣道は草すべり登山道と合流する.
13時53分,再び火山館に戻る.
館長のK田さんから,コーヒーをご馳走になる.そして,先ほど差し入れた菓子をつまみにして,20分ほど雑談を楽しむ.
「今度,ここにユックリ泊まって,水彩画を描きたいですね・・」
と感想を言う.姪が,
「その話,もう何回も言っていますよ・・」
と笑う.
「そうかな,2回目かな・・」
「いえ,もう4回も5回も,同じことを言っていますよ・・・」
私は内心で,“はは~ん・・・オレも耄碌(モウロク)したな・・”と苦笑する.
参考までに付け加えると,火山館に宿泊するには小諸市役所の特別な許可が要るし,売店も食料品もない.あるのは水だけ.だから,一般の山小屋とは違うので要注意.
コーヒーを賞味しながら,外を眺める.牙山と紅葉が綺麗である.
<火山館から見上げる牙山>
■まだ頑張っている写真家
14時18分,火山館を出発する.往路を辿って下山し続ける.
14時26分,カモシカ平付近で,まだ頑張っている写真家K澤親子に会う.早速立ち話.
写真家の話によると,牙山山頂の木の上で黒い二つの影を見つけたので,望遠レンズで眺めると,2頭の熊が向かい合うように木の幹に抱きついていたという.やっぱり,熊は確かにこの辺りにも出没しているようである.
「せめてカモシカにでも会いたいですね・・・」
と私が言うと.
「カモシカですか.今,見えていますよ・・・」
と息子の写真家が言う.
長いレンズを点けたカメラを除かせて貰うと,可愛い顔をしたカモシカが良く見える.
「カモシカはあちこちに沢山居ますよ・・・」
と事も無げに言う.
私が気がつかないだけで,何棟ものカモシカから私たちが監視されているに違いない.
「そろそろ,じゃあ,俺たちも下るか・・・」
と写真家親子が言う.
「じゃあ,私たちは足が遅いから,先に降りていますよ・・・」
と挨拶して,私たちは一歩先に下り始める.
<ずっと動かずに頑張っていた野生動物写真家>
■
案の定,長坂を下っているときに,写真家親子に追い付かれる.あとは写真家を交えて5人で下り続ける.
15時50分,無事,浅間山荘に下山する.
山草で飼われている2匹のビーグル犬が私たちを出迎える.可愛い犬たちである.
<浅間山荘の犬>
<紅葉が美しい浅間山荘駐車場>
■素晴らしい写真
浅間山草駐車場で,父親の写真家が撮影した作品を何回か見せて貰う.
見せて頂いたのは,トンボ,チョウチョウなどの写真である.どれもこれも,本当に素晴らしい写真である.
トンボの表情や,チョウチョウの産毛などが鮮明に写っている.凄い写真ばかりである.大感動.
これらの写真の写真を撮らせて貰ったが,とてもではないが,現物の素晴らしさを伝えられる写真は撮れない.
<野生動物写真家の写真を見せて貰う>
<図らずも小諸でもう一泊>
■姉の家の猫
16時11分,弟の自家用車に乗って,浅間山荘を出発する.
そのまま,まっすぐ帰らずに,小諸郊外に住んでいる姉の家に立ち寄る.事前にアポイントは取らなかったが,運良く姉も在宅.図らずも兄弟3人が顔を合わせる.
姉も猫が大好きで,現在3匹のネコを飼っている.3匹の猫を相手に暫く遊ぶ.
<人見知りする猫;3匹居る>
■3人の懇親会
今夜帰宅するつもりだったが,弟から久々に懇親会をやろうとの提案を受け,弟の家で,もう1泊することになる.
小諸駅前の某所で,弟,姪,私の3名で,軽く懇親会.
21時頃就寝.
明日は北国街道小諸宿を一回りしてから帰宅することにしよう.
<ラップタイム>
8:09 浅間山荘歩き出し
9:08 水飲み場
9:18 不動滝
9:26 二の鳥居
10:47 火山館 着(11:00発)
11:06 草すべり分岐
11:24 Jバンド分岐
11:50 三つ石
12;02 長野県・群馬県県境
12:10 県境付近の山沿い(12:39まで昼食)
12:49 三つ石付近
13:18 湿地帯
13:23 湖の畔(藪こぎ)
13:53 火山館(14:18まで休憩)
15:14 水場
15:50 浅間山荘着
[登山記録]
■水平歩行距離 11.5km
■累積登攀高度 847m
■累積下降高度 847m
■所要時間(休憩時間込み)
浅間山荘発 8:09
浅間山荘着 15:50
(所要時間) 6時間41分(6.68h)
水平歩行速度 11.5km/6.68h=1.72km/h
(つづく)
「関東・上信越の山旅」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/5f7e005fcc31e99c677f48c0bf408df4
「関東・上信越の山旅」の次回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/dcddcf507648fa491856d5b9b0f0fb8e
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[編集後記]
2011年11月8日(火)
何時ものように,4時に起床.辺りは真っ暗.今朝の気温も,この時期にしては割合に高いようである.
すんでのところで,塔ノ岳に出掛けそうになったが,今日はいくつか用事があるので,山は我慢.
そろそろ,今年も人間ドックへ入らないといけないなと思い始めている.
段々と年末が近付いているのを実感している・・・というのも,今年初めての年賀欠礼のハガキが1通,昨日手許に届いたからだ.
今週末から中山道の旅が始まる.前回の中山道の資料がまだ整理中なのに,もう,次の旅が始まるので,忙しない気分になっている.
でも,まあ,こうして元気にブログの更新ができているんだから,これでよしとしなければ罰(バチ)が当たるかもしれない.
(愚痴おわり)
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