
<塔ノ岳山頂>
滅多に味わえない豪雪を楽しむ丹沢;塔ノ岳(今年4回目)
(単独山行)
2013年1月16日(水) 曇一時粉雪が舞う
■残雪が気になるが・・・
一昨日(1月14日),関東地方は突然の大雪に見舞われた.その影響もあって昨日も関東地方の交通網は大きな影響を受けていた.そして,大雪から2日後の今日,多少,山の雪のことも心配にはなったが,まあ注意をして登れば大丈夫だろうということで,とにかく出掛けることにする.
小田原駅での階段二段跳び乗換も何とかクリアーして,渋沢駅に到着する頃,漸く東の空が明るくなり始める.気がつくと,大倉より暖かいはずの鎌倉が大雪に見舞われているのに,大倉付近には全く残雪がない.なんとも不思議である.
例の大倉行1番バスには,三角髭のTさん,超韋駄天のN村さんとS藤さん,Y内さん,大三郎さん,鵠沼さん,M田女史などのご常連が乗車されている.バスが大倉に到着するとすぐに,N村さん,S藤さんは歩き出す.今日の三角髭のTさんは出発の手際が良くてか,S藤さんと一緒に歩き出す.
私は例によってモタモタ.結局,7時09分になって,ようやく大倉から歩き出す.
しばらくは一人旅.でも,すぐに大三郎さんと鵠沼のお二人に追い付かれてしまう.
■見晴階段
7時48分,見晴茶屋を通過する.そして見晴階段へ.
今日は平日だが,結構登山者が多い.階段を登るにつれて,残雪がだんだんと多くなる.見晴階段を登り切って,モミジ坂に差し掛かると凍結した残雪がますます多くなり,アイゼンを装着したくなる.でも,まあ,一本松上のベンチまでは,アイゼンなしで登ってみることにする.
<見晴階段>
■一本松でアイゼン装着
8時06分,一本松を通過する.急に残雪が増える.
一本松上のベンチでは,私より少し先に到着したY内さん,M田さんがアイゼンを装着している.少し遅れて到着した私達3人も,ここでアイゼンを装着する.私は6本爪の軽アイゼンを使用する.
私がアイゼン装着を終えたときは,すでにY内さんとM田さんは,先に出発していて後ろ姿も見えなくなっている.その後も,このお二人には追いつけなかった.
私は,大三郎さん達お二人に,
「(私は)足が遅いので,先に行っています・・」
と挨拶して,8時15分に一本松上のベンチを出発する.
結局は,塔ノ岳山頂まで,大三郎さん達にも追いつかれなかったので,結果的には山頂まで終始一人旅になった.
<一本松上でアイゼンを装着>
■雪に埋もれた駒止階段
先へ進めば進むほど残雪が増える.
やがて駒止階段に差し掛かるが,雪で階段が殆どが埋まっている.ゴロゴロとした礫や石ころが雪で覆われている.そのため,アイゼンさえ装着していれば,雪があった方が返って楽に登れるので有り難い.
8時29分,ようやく駒止茶屋を通過する.大倉からの所要時間は1時間20分.やっぱり雪のために普段より15分ほど時間が余計に掛かっている.
<雪で埋もれた駒止階段>
■堀山の尾根
堀山の尾根に入る.尾根の木道は雪に埋まっている.所々に雪の吹きだまりができている.
天気予報では,今日は晴の筈だが,辺り一面に雪雲が立ちこめていて,富士山は勿論見えない.でも,ここで写真を撮るのが私の儀式なので,見えない富士山の写真を撮る.
富士山の代わりに,雪を被った厳しい鍋割山の尾根が見えている.この凛とした冬景色もまた良いものである.
8時39分,堀山を通過する.
<堀山の尾根から見えない富士山の写真を撮る>
■萱場平
8時48分,堀山の家を通過する.
ここから先は完全な雪山になる,久々の雪山の感触は,率直に言って楽しい.私は大いに楽しみながら登り続ける.途中の階段はほぼすべて雪の下である.そのために,平素歩き馴れた登山道とは風景が違って見えるので,ときどき自分がどの辺りを登っているのか良く分からなくなる.
9時10分,ようやく萱場平に到着する.
萱場平の木道の半分が雪に埋もれている.私の前後に登山者の姿は全くない.追い越したり追い越されたりしないと,大変気分良くマイペースで登れるので気が楽である.
<萱場平>
■見晴階段
雪の無いときとは全く異なる印象を持ちながら,何となく後7分坂(見晴階段)に差し掛かる.平素,この階段は長いので,大倉尾根の中で,気分的に最も嫌なところだ.でも,今日は階段の大部分が雪の中なので,ごく普通の登り坂になっている.これなら気分良く登ることができる.
階段を3分の2ほど登ったところで,下ってくる超韋駄天のS藤さんとすれ違う.ここで暫く立ち止まって立ち話をする.その間に超韋駄天のN村さんともすれ違う.
S藤さんから,
「この間のブログに出ていた富士山の写真,綺麗でしたね.是非,あの写真下さい・・」
とのこと.褒められれば私も嬉しい,二つ返事で,
「良いですよ,この次にお会いしたときに差し上げます」
とお返事する.
9時36分,ようやく花立山荘に到着する.
大倉からの所要時間は2時間27分.堀山の家からの所要時間は48分.いずれも平素の目標時間を大幅に超過している.でも,こんな大雪ならば例外,例外.OK,OKである.
<階段が完全に埋まった花立階段>
■花立山
花立山荘を通過すると,辺りの様相が一変して厳冬期らしい雰囲気になる.気温がますます下がって,歩いていても寒くなる.
どうやら,雲の中に入ったらしく,辺り一面に霧が立ちこめて視界はほとんどない.そして粉雪すら舞い始める.
花立山の山頂に差し掛かる頃,下山してくるK重さんとすれ違う.
「やあ,やあ,FHさん・・・」
で握手.明るい笑顔のK重さんにお会いすると何時も気分が高揚する.
続けて,
「よくこんな凄い日に良く登ってこられましたね・・・FHさんは偉いよ」
とおっしゃる.私は,
“そう言う'あなた’だって.よくまあ登ってこられましたね”
と無言で返事をする.
「金冷シから先が,とんでもないことになっていますよ.気を付けて行ってらっしゃい・・・」
でお別れする.
“とんでもないことって,どんなだろう・・?”
私はどうなっているんだろうと興味津々である.
花立山付近は風を遮るものがないので,雪が吹き飛ばされたのか,残雪が極端に少ない.
9時46分,花立山山頂を通過する.眺望はまったくない.
<花立山の山頂直下>
■凄い積雪の金冷シ
9時51分,金冷シを通過する.
金冷シ付近の積雪がやたらに多くて,階段は完全に雪の中である.何だか何時もとは違う山に登っているような感じすらしてくる.
金冷シを過ぎると,積雪が一段と深くなる.
<深雪の中の金冷シ>
■何処を歩いているのか判然としない
K重さんが言っていたように,金冷シから先は飛んでもないことになっている.
階段道はほぼ完全に雪の中である.最初にここを通った方の足跡がそのまま冬道になっている.そのため本来の道とは全く異なった尾根沿いの踏み跡道が続く.途中,木の枝を乗り越えたり,倒木を迂回したり,太い木を跨いだりの難所が連続する.
踏み跡道の両側は腰ぐらいの高さまでの雪の壁になっている.慎重に踏み跡をトレースしないと,深い雪の中に腰の辺りまでズボッと落ちてしまうかもしれない.私は雪を踏み抜かないように注意しながら一歩一歩登り続ける.面白い!
周囲を見回しながら,
“一体私はどの辺りを歩いているんだろう”
と位置確認である.これがまた何時もの登山と違って,変化があるので面白い.
山頂直下で下山してくる三角髭のTさんとすれ違う.
「やあ,ご苦労様・・・またお会いしましょう」
でお別れする.
<踏み跡道を辿る>
■初夏の北アルプスを連想させる尊仏山荘
雪の中を登り続けると,いきなり山頂直下の階段の中腹に飛び出る.
“あれ~っ・・・! もう山頂なの・・!!”
ということで,10時11分に,ようやく山頂に到着する.
大倉からの所要時間は3時間02分.えらく時間が掛かってしまったが,この雪では仕方がない.
山頂を一回りする.今日の山頂は雲の中なので全く眺望はない.山頂のポールに取り付けられている寒暖計はマイナス6℃になっている.
尊仏山荘の裏手に回ってみるが,眺望が全くないので写真は諦める.
<山頂の温度計>
■大雪に囲まれた尊仏山荘
尊仏山荘の軒から大きなつららが沢山下がっている.小屋の入口には雪道が掘ってある.まるで初夏の北アルプスの山荘のような雰囲気である.
山頂を一回りしてから,尊仏山荘に入る.
山荘入り口でアイゼンを外していると,鵠沼貴婦人も山荘に到着する.
今日の小屋番はオーナーのH立さん.私は,先着のY内さんが座っている席の前に座り,例によって300円也のお茶を所望する.程なく大三郎さんも到着する.
石油ストーブの前にネコが座っていると冬の尊仏山荘らしい情景になるが,今日はネコ不在.ネコの代わりにM田さんが,ストーブの前で甲羅干しをしている.そうこうしている内に,2番バスで来られたF田さんが山荘に到着する.
ご常連のお一人が,この寒いのに冷たいビールを所望する.
「冷たいでしょう・・・ビールをお燗にしたら・・」
と下らない茶々を入れる.
その内に,この時期,朝が寒いので,塔ノ岳に出掛けるのに躊躇することが話題になる.私が前夜就寝時に登山用の服装になってしまうことも話題になる.また○○さんは,塔ノ岳に登る日の朝,タクシーを予約しておくそうである.そうすると,朝,タクシーが来るので,決心して出掛けられるとのことである.
寒くて暗い朝,塔ノ岳に出掛けるのを躊躇するのは私だけではないと分かり,なんだかホッとする.
<雪に埋もれた尊仏山荘>
■下山開始
10時56分,山荘前でアイゼンを装着してから,1人で下山を開始する.
私はごく普通の手袋をしているが,冷たくて手の指が少し痛く感じている.でも,花立山荘まで下山すれば暖かくなることが分かっているので,少々の我慢である.
急坂の踏み跡道を辿って,11時13分,金冷シを通過する.
馬の背で,登ってくるT添さんとバッタリ.T添さんは2番バスで来られたとのこと.
「今日は完全装備で登ってきました・・・この前は,3時間半で登りましたが,今日は5時間ですね・・・」
とニヤリ.私は内心で,
“T添さんこそ,本当の登山家だな・・・”
と思っている.でも口には出さない.
「今日はキャベツを持っていないんじゃないですか? だから遅いんでしょう」
と軽くジャブする.
「いえ,ちゃんとキャベツを持っていますよ」
丁度ここで,下山中のY内さん,M田さんと一緒になる.そこで,お互いの写真を撮り合うことにする.
ここから花立山荘までは3人で一緒に下る.
<馬の背でT添さんとバッタリ会う.格好が良いので写真を撮らせて貰う>
■雄シカ2頭
11時28分,花立山荘を通過する.ここまで下ると気温も大分上がって暖かくなる.山荘前には沢山の登山客が休憩を取っている.
花立階段の下り口に,大きな雄シカが1頭,ボンヤリと立っている.尊仏山荘に以前居られた小屋番Oさんの話では,兄弟の牡シカが2頭居るが,今は弟のシカが優位になっていて,尊仏山荘付近を縄張りにしているという話であった.
このシカが兄か弟か分からないが,どうやら雪で食糧難になったために,人間に近付いてきたようである.
シカに気を取られている内に,Y内さんが先に行ってしまう.ここから,暫くの間,M田さんと一緒にノンビリと下りつづける.
<花立山荘で出会ったシカ>
■再び萱場平
11時43分,ボッカ中のチャンピョンとすれ違う.
「やあ,やあ,こんな雪の日に登ってきたんですか・・・やっぱり外国の山に登っている人は違うな・・・」
とチャンピョンが妙なほめ方をする.
要するに,
“良い年をして,年甲斐もなく,なんでこんな雪の中を登ってくるの”
と言っているんだと私は勝手に解釈する.
11時45分,萱場平を通過する.
ここにも別の牡シカが1頭,ボンヤリと立っている.
<萱場平の牡シカ>
■ノンビリと下山
12時丁度に堀山の家に到着する.
小草平のベンチで,M田夫妻とバッタリ.M田夫妻とお会いするのは久々のこと.私のブログのこと,鎌倉散策のことなど立ち話をする.暫く振りの出会いなので懐かしい.
数分の立ち話の後,残雪一杯の山道をノンビリと一人旅.周囲の風景を眺めながら気分良く下り続ける.
12時22分,駒止茶屋を通過する.何時もは嫌な下り階段もほぼ雪で埋まっているために気分良く下る.
12時43分,見晴山荘に到着する.ここでアイゼンを脱着する.
その間に,後ろに居られたM田さんに追い抜かれる.でも,敢えて追い付くことはせずに,ユックリと下山し続ける.
13時丁度に観音茶屋を通過する.
“あれ!・・,一寸急げば,大倉発13時22分のバスに間に合うかな・・・”
そう気がついた私は,ここから急に飛ばし歩きに転じる.急ぎに急いで,13時16分,無事,大倉に到着する.バスが発車するまでに.丁度,靴を洗うだけの時間がある.ラッキー.
結局,Y内さん,M田さんと一緒のバスに乗車する.
■鎌倉は雪国なのかよ
渋沢駅,小田原駅での電車の接続が良く,小田原発14時04分の特別快速高崎行に間に合う.こんなとき,私は何時も後ろから2両目の車両に乗車する.後ろの方が,何故か,小田原駅で乗車する人が少ないからである.それに最後部の2両はボックス席である.それも,1ボックスを1人で占領できるほど空いているのが気に入っている.
ボックス席の進行方向側に席に座って,車窓の風景を眺めているときに,
”今日も無事塔ノ岳を往復できて良かったな”
と一番心が落ち着く.
途中,藤沢辺りから急に残雪が目立つようになる.そして,14時33分,大船駅に到着する.大船駅前には,まだ,あちこちに雪が残っている.
私は,大船駅14時55分発にバスに発車するつもりである.まだ,ちょっと時間があるので,ルミネ1階の某コーヒーショップに立ち寄って,200円也のコーヒーを賞味する.
バスの発車時間より少し前に駅前バス停に向かう.何時もなら沢山の乗客が列を作って待っているのに,今日は先客が1人居るだけである.
“おかしいな? 何かあったのかな?”
バスの発車時間になってもバスは来ない.暫くすると10人余りの行列になっている.
その内に,バス会社の運行係の人が来て説明する.
「まだ,道路の除雪が追い付いていないので,バスの運行が乱れています・・・取りあえず15時07分に途中の○○ロータリーまでのバスを出します.その後,15時22分に終点の○○山まで行くバスを出しますが,デマンドルートには入りません・・・」
やがてチェーンを巻いたバスが到着する.バスはチェーンの影響でガタガタ,ブルブルと実にうるさく乗り心地も悪く,速度も遅い.バスは道路端に沢山の雪が残っている坂道を登る.何時もならば,大船駅から10分ほどの距離を13分掛けて,ようやく私の家の近くの停留場に到着する.
鎌倉って雪国だったのかな?
<ラップタイム>
7:09 大倉歩き出し
7:32 観音茶屋
7:48 見晴山荘
8:06 一本松(8:15までアイゼン装着)
8:29 駒止茶屋
8:48 堀山の家
9:36 花立山荘
9:51 金冷シ
10:11 塔ノ岳山頂着(-6.0℃)
10:56 〃 発
11:13 金冷シ
11:28 花立山荘
12:00 堀山の家 (12:02まで雑談)
12:22 駒止茶屋
12:43 見晴山荘(12:46までアイゼン脱着)
13:00 観音茶屋
13:16 大倉 着
[山行記録]
■水平距離 7.0km(片道)
■累積登攀下降高度 1269m
■登攀所要時間(雑談時間を含む)
大倉 発 7:09
塔ノ岳 着 10:11
(所要時間) 3時間02分(2.03h)
水平歩行速度 7.0km/3.03h=2.31km/h
登攀速度 1269m/3.03h=418.8m/h
■下降所要時間(休憩時間を含む)
塔ノ岳 発 10:56
大倉 着 13:16
(所要時間) 2時間20分(2.33h)
水平歩行速度 7.0km/2.33h=3.00km/h
下降速度 1269m/2.33h=544.6m/h
(おわり)
「丹沢の山旅」の前回の記事
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