<馬の背付近のミツバツツジ>
トウゴクミツバツツジとシロヤシオが見頃の丹沢:塔ノ岳(今年26回目)
(単独山行)
2014年5月28日(水) 晴・山頂付近は霧
■車窓から素晴らしい富士山を望む
2時30分頃,目が覚める.まだ起床するには早すぎる.あと1時間ぐらいは睡りたいな思うが,熟睡できずに,奇妙キテレツな夢にうなされながら,大切な睡眠時間を過ごす.何となく身体が重くて,だるい感じがする.
今日は塔ノ岳へ出掛けようと前の日からその積もりでいたが,
“こんなに怠い感じがするのに,出掛けても大丈夫かな…”
と迷う気持ちを持ったまま起床する.
“でも,まあ…折角,起きたんだから出掛けてみるか…”
仏暁,アマガエルの啼き声を聞きながら,家を出る.天気予報では,今日は蒸し暑くなるとのことだが,朝の空気はヒンヤリとしている.
小田原に向かう東海道本線の電車の中では,とにかく眠くて,眠くて…
“小田原で寝過ごしたら…まあ,そのときは幕山にでも登るさ…”
と居直った途端に,心地よく居眠りを始めてしまう.
幸いなことに,小田原で目が覚める.東海道本線から小田急の電車に乗り換える.新松田に近付くと,車窓から素晴らしい富士山が見え始める.何時も富士山と矢倉岳が重なる写真ばかり,ブログに掲載しているので,今回は山が重なる手前で撮った富士山の写真を披露する.
今日も天気が良さそうである.富士山を眺めながらの楽しい登山を予想する.
<小田急車窓からの富士山と矢倉岳>
■そろそろ山ヒルが気になる
渋沢発大倉行1番バスは,それなりに混雑してる.乗り合わせた常連は,NMさん,YUさん,TNさん,MTさん,Hさん.
7時05分,たまたま居合わせたTNさんと一緒に歩き出すが,スタートダッシュタイプのTNさんに追従していては,仮に速く登れたにしても,汗まみれになってしまうことは必定.それに第一,今の私の体力では,塔ノ岳山頂まで,TNさんと一緒に登るのは不可能である.そこで,今日の私は,マイペースで後からユックリ登ることにする.
余談になるが…
登山している方は,他の人に追い越されるときに,“私はマイペースで登ります”という言葉を良く使うが,大半の方が口にするマイペースは少々使い方が違うのではないかと,私は何時も感じている.
オレは汗をかきながら全力で登っているのにお前さんに追い抜かれてしまう.だから,お前さんには敵わないが,今,全力で登っているのが自分のマイペースなんだ…まあ,こんなところだろう.でも,これはマイペースとは言えないだろうというのが私の考え方だ.でも,この話題を検討するのは別の機会に譲ろう.
さて,本題に戻して…
歩き出してすぐに,今日は少々湿度が高くて蒸し暑いなと感じる.路面もかなり濡れている.今日の登山道はかなり滑りやすくなっているだろう.それに,今日は少し蒸し暑い.
“そろそろ,山ヒルが気になるな…”
私は,登山道で山ヒルを見付けたら写真を撮ってやろうと思う.そんな矢先に,登山道の脇に立っている「山ヒルにご注意下さい!」の案内板の前に到着する.
“丁度良い!…この案内板の写真を撮ってやろう.”
私が案内板の写真を撮っているときに,私より少し後から大倉を歩き出したYUさんに追い越される.その後,暫くの間,YUさんの後ろ姿が見えていたが,次第に遠ざかる.
<山ヒルの掲示板>
■見晴階段
その後は,私の完全な一人旅が続く.
丹沢ベース付近で,トレイルラン姿の3~4人の若い男性が私を追い越して行く.その内のお一人が,息遣いも荒く「はあ,はあ」しながら私を追い越して行く.
今日は湿度が高いので,歩き始めて,すぐに汗ばんでくる.それでも,雑事場ノ平に近付くと,そよ風が吹いていて,火照った身体には凄く気持ちが良い.
7時47分,見晴山荘を通過する.見晴山荘のベンチには,先ほど私を追い越したトレイルランの皆さんが休憩を取っている.
見晴階段に差し掛かる.例により定点観測用の写真を撮る.階段の上の方を登っているYUさんの後ろ姿が小さく見えているだけ.その他の登山客は全くいない.
“ここが肝心だ…歩けるからといってむやみに早く歩くと後でバテるぞ!”
私は自分自身に言い聞かせながら,見晴階段を登り始める.
坂道を半分ほど登ったところで,先ほどのランニンググループにまた追い抜かれる…が,その中のお一人が,随分と疲れているようである.
「あれ…さきほど追い越されましたね…」
と話しかける.このグループは,今度の日曜日に行われるボッカ大会に参加するとのことである.今日はグループ初参加の若手ランナーのトレーニングのようである.
見晴階段を登り終えて,モミジ坂に差し掛かる.相変わらず私は低速で歩いているが,ランニンググループのお一人を追い越してしまう.
「私は御年○×歳の老人ですよ…もっと頑張って!」
とエールを送る.
「ハイッ!,頑張ります」
と勢いの良い返事が返ってくる.
先輩のランナーが,
「塔ノ岳に登っておられる方は,皆さん足が丈夫ですね…」
と独り言のように言う.
<見晴階段>
■駒止階段
8時04分,一本松を通過する.今日は大倉から一本松まで1時間近く掛かっている.元気な頃ならば,そろそろ駒止茶屋に到着する時間なのに…体力が衰えた自分が不甲斐ない.
駒止階段までの平坦な道で,また先ほどのランニンググループに追い抜かれる…が,駒止階段に差し掛かると,また末尾のお一人が遅くなり,遂に立ち止まってしまう.
「さあ,頑張れ! 頑張れ!」
とエールを送りながら,彼の横を通り過ぎる.
私は何時もの速度で階段をユックリ登って,8時15分,やっと駒止茶屋に到着する.大倉からの所要時間は1時間10分.やっぱり時間の掛かりすぎだが,やむを得ない,
先ほど私が追い越したランナーはまだ階段のずっと下にいる.
「がんばれぇ~…」
とエールを送ると,
「頑張ります…」
という元気な声だけが返ってくる.
ここから先,このグループが私に追い付くことはなかったが,ヘバリながらも清々しい返事を返してくれた青年に,私は大変な好感を持つ.
“日曜日には,是非,頑張って下さい!”
私は心の中で,このグループにエールを送る.
蛇足だが…なぜ,末尾の青年が,途中で挫折したか.その理由は…
私の所感では,第一に自分の力量をオーバーするペースで走り出したこと.第二に腹式呼吸をしないために過呼吸になってしまい酸素不足になったこと.などが原因だろう.
<駒止階段>
■富士山は霧の中
堀山の尾根道に差し掛かる.周囲の木々の緑が一層濃くなり,真夏を連想させるような感じになっている.高度が増すにつれて,雲の中に入ったのか,辺り一面に霧が立ちこめている,電車の中ではクッキリと見えていた富士山だけでなく近場の丹沢の山々も霧に遮られて全く見えない.
先ほどのランニンググループが私に追い付くことを期待しているが,一向に現れる気配がない.
8時25分,堀山の道標を通過する.
<堀山の尾根道から富士山が見える方向を写す>
■小草平
8時35分,小草平に到着する.
丁度そのとき,下山してきたYZさんが堀山の家のベンチで休憩を取っている.相変わらず辺り一面に深い霧が掛かっている.
“どうも蒸し暑いな…今日はここから花立山荘まで45分ほど掛けて登るかな…”
私は休憩を取らずに,そのまま登り続ける.
標高が高まるにつれて,気温が低くなったのか,何時も間にか額の汗も消えて,気分爽快になる.
<堀山の家>
■萱場平
8時36分,小草平のすぐ上で,下山してくるKSさんとすれ違う.
「やあ,やあ,…元気そうだね」
で,例により握手.何時ものことながら,KSさんから元気を貰う.
「今日は蒸し暑いから,気を付けて登って下さいよ…」
嬉しいお言葉である.
岩礫の道を終えて階段道に入る頃,60歳代前半と思われる男性に追い抜かれる.私は相変わらず額に汗しない程度の定速で登り続ける.
階段道に差し掛かるところで,私を追い越した男性が立ち止まっている.息遣いが「ハア,ハア」と荒い.
“なんで,無理をして登っているんだろう…”
私は,気の毒なような,それ見たことか,というような曖昧な気持ちで,先に行かせてもらう.とは言いながら,私は,もう数名の若い方々に追い抜かれている.
8時57分,萱場平を通過する.萱場平には人気がない.薄い雲を通して蒸し暑い日光が照りつけている.
木道の間に自生するアザミはますます元気なようである.
<萱場平>
■花立山荘
ノンビリ定速で歩き続ける.
ときどき汗ビッショリで動けなくなっている登山者を追い抜く.どうも無鉄砲な登り方をしている人が多いようである.なんでもっとユックリ,自分のペースで登れないんだろうと人様のことながらもどかしく感じる.
9時11分,後7分坂の手前で,下山してくる韋駄天のNMさんとすれ違う.NMさんにつられて後ろを振り返ると,見晴階段の上で追い越したHさんが,私の直ぐ側まで追い付いてきている.
後7分坂を,丁度7分で登りきって,9時19分に花立山荘に到着する.相変わらず富士山は見えないし,霧が一層深くなっている.山荘前のベンチでは数名の登山客が休憩を取っている.
大倉からの所要時間は,2時間14分,そして小草平からの所要時間は実に47分.どちらも,7~8分,時間を余計にかけ過ぎているようである.でも,そのお陰で,今朝方感じていた怠いような眠いような不愉快な気分は,すっかり解消している.
■トウゴクミツバツツジが見頃だ
遠くの風景が見えないまま,9時28分に花立山を通過する.
花立山から金冷シに至るまでの間に自生しているトウゴクミツバツツジが丁度見頃を迎えている.
こうなったらラップタイムもヘッタクリもない.私は金冷シまでの間に,ツツジの写真を何十枚も撮りながら,時間など無視してユックリと歩く.
<馬の背付近のツツジ>
■塔ノ岳山頂
9時34分,金冷シを通過する.
ここまで登ればあと塔ノ岳山頂は目の前である.金冷シから先はツツジの数も少し少なくなるが,相変わらず写真を撮りながら登り続ける.
9時50分,ようやく塔ノ岳山頂に到着する.山頂は霧の中,辺りの風景も殆ど見えない.山頂の気温はプラス19℃.やっぱり高温である.
大倉からの所要時間は2時間45分.いくら蒸し暑いといっても,この時期なら,2時間35分程度でコンスタントに登りたいものである.花立山荘からは31分.こちらも3分程度縮めても楽に登れるようにしたいものである.
<塔ノ岳山頂>
■尊仏山荘
私より少し先に塔ノ岳山頂に到着したらしいMTさんに続いて,尊仏山荘に入る.先客は私と一緒に大倉を歩き出したTNさん.今日の小屋番は,WDさん.
300円也のお茶を所望する.
お茶を飲みながら,早めの昼食を摂る.昼食は大船駅前で購入したオニギリ2個.
どういう風の吹き回しか,尊仏山荘の山ネコ“ミャ~”君が,甘えてご常連さんの膝に乗っかる.これまで人の膝になど滅多に登らなかったのに…
ミャ~君は,もう15歳のお年寄りの雄ネコである.老雄ネコが甘える姿は微笑ましい.
「ジイサンがバアサンにすり寄っているよ…」
と言いそうになって,慌ててこの台詞を胸の内に呑み込む.
<尊仏山荘にて>
■シロヤシオが見事
10時10分,尊仏山荘を出発する.塔ノ岳の裏手に廻ってシロヤシオを見物するつもりである.TNさんに同行.
シロヤシオの写真を撮りながら,10時30分,キレットに到着する.
あいにくの富士山方面に雲が掛かっているので,富士山とシロヤシオを同じ画面に入れた写真は撮れないが,今が見頃なシロヤシオを十分に堪能する.
10時52分,日高(ひったか)を通過する.そして,11時02分,龍ヶ馬場手前の鞍部に到着する.
「そろそろ,この辺りで引き返しましょう…」
ということで,往路を引き返す.
塔ノ岳の少し手前で,カメラマンのMMさんとバッタリ.花がご趣味のTNさんと何やら立ち話を始める.
私はお二人とお別れして,11時40分,塔ノ岳山頂に引き返す.
<塔ノ岳山頂付近のシロヤシオ>
■珍しい花
道すがら,植物に詳しいTNさんからいろいろと教えて頂いたが,伺った内容は聞いている側から殆ど忘れてしまう.一寸だけ残っているのが,ツルシロガネソウと笹の花.
帰宅後,手許の薄っぺらな植物図録には掲載されていないが,資料1には,「ツルシロカネソウ(蔓白銀草)はキンポウゲ科シロカネソウ属の多年草。単にシロカネソウ(白銀草)とも呼ばれる。高さ10〜20cm、花期は4〜5月で、本州の低山帯に生育する。」という説明がある.この資料1に掲載されている写真と全く同じ花だと確認する.さて私に覚えられるかな?
路傍に笹の花が咲いているのを見付ける.こちらの写真も数枚撮る.
なお,シロヤシオの写真は,
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/1c0df2cbd5a2b5c77c2d00481acdeefd
へどうぞ.
<ツルシロガネソウ> <笹の花>
■再び塔ノ岳山頂
塔ノ岳山頂は先ほどより一層深い霧に覆われている.
山頂で昨年ノルウェーのツアーで一緒になった方とバッタリ.私はお会いした一瞬,はて見覚えのある人だが,どこで出会ったのかなと,頭の中がクルクルしていると,
「あの…ノルウェーでご一緒だったですよね…」
と先方が言う.その途端に,いろいろなことを数珠繋ぎに思い出す.
「ご一緒だったTBさんも元気ですよ…ときどき鎌倉を一緒に歩いていますよ…」
「是非,私も参加したい…」
「では,TBさんに連絡を取って下さい…ご案内します」
でお別れする.
<再び塔ノ岳山頂へ>
■ノソノソと下山
私は大倉発渋沢行14時22分のバスに乗車する積もりである.その前の13時52分のバスにも,道草をしなければ十分に間に合うが,折角,こんな気持ちの良い陽気にわざわざ丹沢まで出掛けてきたのにソソクサと下山してしまうのは勿体ない.
私はノソノソ,ダラダラ調子で下山し続ける.沢山の登山者に追い抜かれながら…
でも,途中では全く休憩は取らないで下山し続ける.
ダラダラ調子で下山していると,ますますダラダラ度が増大する.
駒止茶屋を過ぎる頃になると,緑陰はますます深まるが,同時に,蒸し暑くなってくる.幸いなことに,うるさい蚊やアブはまだ発生していない.私はますますダラダラ歩きになる.そして,登山口近くで,私より余程後になってから下山し始めたTNさんに追い付かれる.
ユックリと所定のバスに乗って,渋沢駅に到着する.大急ぎで駅の階段を登り下りして渋沢発37分発小田原行に乗車する.
小田原駅で特別快速高崎行15時04分発電車に飛び乗る.例によって電車の中では眠くて困るが,15時33分に大船に到着する.
電車を降りると,湘南の心地よいそよ風が吹いている.そよ風に誘われて,ついつい自宅まで歩いて帰りたくなるが,それでは4万歩を遙かに超えてしまう.いくら何でも歩きすぎである.
私は団地のジイサン,バアサンが沢山乗っているバスに乗車する.私はリュックを背負っている場違いの人間に見えてしまうが,まあ,いいさ.こう見えても私は歴(れっき)とした後期高齢者だ.誰に憚ることもない.
15時54分,無事,帰宅する.
今日は綺麗なツツジも見たし,山ネコミャーにも会えた.山登りをしている内に怠さもなくなった.
少し熱めの風呂…といっても43℃程度だが,汗を流してユックリと浸かる.今日も無事塔ノ岳を往復したぞ.
良かった! 良かった!
[花の写真] (サムネイル;画像もクリックすると大きくなります)
<ラップタイム>
7:05 歩き出し
7:29 観音茶屋
7:47 見晴山荘
8:15 駒止茶屋
8:30 堀山の家
9:19 花立山荘
9:34 金冷シ
9:50 塔ノ岳山頂着(+19.0℃)
10:10 〃 発
10:30 キレット
10:52 日高
11:02 鞍部
11:07 日高
11:21 キレット
11:40 塔ノ岳山頂着
11:45 〃 発
11:58 金冷シ
12:12 花立山荘
12:50 堀山の家
12:07 駒止茶屋
13:36 見晴山荘
13:51 観音茶屋
14:12 大倉着
[山行記録]
■水平距離 7.0km(片道)
■累積登攀下降高度 1269m
■登攀所要時間(雑談時間を含む)
大倉 発 7:05
塔ノ岳 着 9:50
(所要時間) 2 時間45分(2.75h)
水平歩行速度 7.0km/2.75h=2.54km/h
登攀速度 1,269m/2.75h=461.5m/h
■下降所要時間(休憩時間を含む)
塔ノ岳 発 11:45
大倉 着 14:52
(所要時間) 2時間17分(2.28h)
水平歩行速度 7.0km/2.28h=3.07km/h
下降速度 1,269m/2.28h=556.6m/h
(おわり)
資料1;http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%84%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%83%AD%E3%82%AB%E3%83%8D%E3%82%BD%E3%82%A6
「丹沢の山旅」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/1c0df2cbd5a2b5c77c2d00481acdeefd
「丹沢の山旅」の次回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/9fb44a0646b02f762ea56b75057aebe3
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