綿毛のようなものが水晶の中に

2021-01-28 | インクルージョン

不思議のインクルージョン

水晶の中に閉じ込められているのだ

角閃石類 Amphibole 珪酸塩鉱物 

Serra do Cabral, Minas Gerais, Brazil

羊毛を想わせる細い繊維状の角閃石。普通、白と赤色が接近して生ずることは少なく、もちろん混じり合うことはない。このように危ういほどに接近していることの不思議さを鑑賞したい。赤い角閃石は鉄の酸化物を含むため。即ち生成の環境が異なっているはず。


水晶の中に緑色の雲母まとった水晶が

2021-01-26 | インクルージョン

 

クロム雲母 Fuchsite K(Al,Cr)3Si3O10(OH)2 珪酸塩鉱物 単斜晶系Itremo, Ambatofinandrahana District, Madagascar

内包している水晶(ファントム)の表面に、無数の鱗片状クロム雲母が林立するように結晶している。ファントムの中心には、白く靄が立ち上っているかのような部分が観察されるが、微細な気泡の広がりであろう。

我が国でもクロムを含むことによって綺麗な緑色を呈する雲母が、長野県の茅野市の金鶏鉱山で観察が可能だ。但し金鶏鉱山で産出している緑色の雲母は、かなり緑色が強くても、分析によりクロム雲母と表記できるほどにクロムを含んではいないことが判っている。そのため、クロムを含む白雲母KAl2□AlSi3O10(OH)2と表記される。小さな水晶が集合している表面を覆うように、あるいは隙間を埋めるように産出しており、そもそもインクルージョンが観察可能な大きさの水晶がない。

クロム雲母にはフクサイト、マリポサイトの呼称がある。アベンチュリンは水晶に微細な葉片状クロム雲母の結晶が濃密に入っている飾り石のこと。


緑閃石を含む水晶

2021-01-24 | インクルージョン

緑閃石 Actinolite Ca2(Mg,Fe)5Si8O22(OH)2 宮崎県西臼杵郡日之影町 オシガハエ

針状の緑閃石などが水晶の中に濃密に入っている。その水晶を先端から眺めると、針状結晶が屈折して幾つにも見える。水晶は六角柱で、しかも斜めの結晶面を通して内部を見ることになるからだ。インクルージョン水晶の魅力だ。


緑色の針が氷長石の中に

2021-01-23 | インクルージョン

 

緑閃石 Actinolite Ca2(Mg,Fe)5Si8O22(OH)2 

 氷長石(Adularia) KAlSi3O8中の緑閃石。アルパインベインタイプの石英脈に伴って生じたもの。氷長石は低温環境で結晶した正長石の変種で、正長石と微斜長石の中間的な性質を持つ。


緑の針が無数に

2021-01-20 | インクルージョン

緑閃石 Actinolite Ca2(Mg,Fe)5Si8O22(OH)2 宮崎県西臼杵郡日之影町 オシガハエ

緑色、灰緑色、白、黄褐色と様々で、比較的しっかりとした結晶が多い。針状結晶は成長している方向が揃っておらず、写真のように光源の位置を変えると反射の様子が様々に変化して楽しい。この産地では、水晶の外面にも無数の結晶が生じているが、採集の際に脱落してしまう場合が多い。また、ブラジルのルチルインクルージョンのように、水晶の内部に向かって柱面から放射状に成長している結晶もある。

同じ標本が、ライティングを変えただけでこのように見え方が違ってくる。


青白い虹を秘める玻璃長石

2021-01-18 | 虹の結晶

玻璃長石 サニディン Sanidine (K,Na)AlSi3O8 単斜晶系 

北朝鮮咸鏡北道明川郡下雩面咸鏡洞在徳山

玻璃長石は、高温環境で結晶したナトリウムを含むカリ長石。写真はムーンストーンの呼称で古来有名な、北朝鮮明川産の標本。層状結晶の隙間で生じた光の散乱が要因であり、シラーと呼ばれている。我が国では長野県大町市の木崎湖近隣、富山県南砺市の人喰谷で採集が可能。もちろんシラーが生じない玻璃長石もある。ガラス質透明~半透明の20ミリほどの大きさの綺麗な形状の結晶であれば、和歌山県太地町で産出する。

長野県大町市木崎湖

富山県南砺市人喰谷


青白い虹を呈する微斜長石

2021-01-17 | 虹の結晶

微斜長石 マイクロクリンMicrocline KAlSi3O8 三斜晶系 山梨県甲府市黒平

長石は、質の異なる2種類が層状構造を成して成長することが多い。面白いのがその点で、層状構造の微細な隙間で反射、散乱、干渉、回折などが起こり、青白い微光の滲みを生じさせることがある。オパールのような色彩の顕著な虹ではないが、滲み出るようなシラーと呼ばれる彩りが美しい。微斜長石は正長石と成分が同じで、結晶系が正長石の単斜晶系と異なる。

 長石はXAlSi3O8の化学式を持つ鉱物で、XにAl、K、Caが入ることによって、カリ長石KAlSi3O8、曹長石NaAlSi3O8、灰長石CaAl2Si2O8となり、これらの割合が異なった個溶体を成している。曹長石から灰長石の間が斜長石群で、青白い虹色を呈するラブラドライトがある。カリ長石から曹長石の間がアルカリ長石と呼ばれ、結晶ができた温度により、性質が異なる。


蛍石の成長変異面での虹

2021-01-16 | 虹の結晶

蛍石 Fluorite CaF2 ハロゲン化鉱物 等軸晶系

Dongwuqi Mine, Inner Mongolia Autonomous Region, China

初期段階で八面体に成長していた蛍石が、環境の違いで途中から六面体に変化した結晶である。つまり、八面体の蛍石を六面体の蛍石が包んでいる結晶だ。その結晶の相間で反射と干渉が起きている。結晶内の割れとは異なる、自然のままの虹の発生である。

蛍石そのものは冴えない標本だが、点在するいくつかの蛍石に、そして一つの結晶の2~3面に虹が現れている。


神岡鉱山の虹水晶

2021-01-15 | 虹の結晶

 

水晶内部の結晶のr面・z面 Quartz SiO2 上岡鉱山 岐阜県

水晶の成長が途中でいったん停止し、再度成長が始まると、そこにごくわずかの隙間を生じることがある。また、微細な別の鉱物が降り積もった場合に、その隙間で干渉が起こることがある。虹が生ずる隙間は、ミクロン程度のオーダーである。多くはr面やz面など斜面に現れる。時に層状に複数の虹が生じていることもある。


水晶中の細い針状板チタン石

2021-01-14 | 虹の結晶

 

水晶 Quartz SiO2・板チタン石 Brookite TiO2 Corinto, Minas Gerais, Brazil

 素晴らしい干渉色を呈する水晶である。隣り合う水晶の間の、柱面に生じた酸化物の皮膜による虹である。水晶に取り込まれた細い毛状の板チタン石もまた魅力。毛状板チタン石と水晶の間に薄い層があり、しかも毛状結晶が密集しているため、その近接した部分でも反射したり屈折した光が干渉している。金属の酸化被膜は、ごくごく薄ければ知覚できないにもかかわらず、光の反射の方向によっては虹色を呈するほどに強く見えてくることがある。

下の写真は水晶の中に濃密に板チタン石の細い針状結晶が成長している。

水晶 Quartz SiO2・板チタン石 Brookite TiO2 Pakistan


方鉛鉱など複数の鉱物を含む蛍石

2021-01-13 | インクルージョン

方鉛鉱 Galena PdS 硫化鉱物 等軸晶系 

Dal’Negorsk, Far-Eastern Region, Russia

ユーラシア大陸の東端には、わが国を含めて南北に連なる火山活動が起源の鉱床が連なっている。その北部、ロシアの東端部にあるのが、Dal’Negorsk areaである。スカルン環境にあり、比較的クリアな蛍石が多産している。また、他の産出鉱物も種類が豊富である。

写真は、玩具箱をひっくり返したように賑やかな包有物標本。Dal’Negorsk地域での方鉛鉱の産出は比較的多いが、蛍石に内包されている標本は少ない。蛍石の成長は前後二期以上あり、その後期のいずれかの時期に方鉛鉱が結晶し、再び蛍石の成長があって閉じ込められることとなった。蛍石は頗るクリアであるため、小さな八面体の方鉛鉱が浮かんでいるように見える。方鉛鉱の結晶が整っているために存在感が強いが、その前後にも他の包有物がある。

順を追って眺めると、最初の蛍石は六面体と八面体の集形で、その表面を覆うように微細な針状のブーランジェ鉱が晶出し、その後に蛍石の成長を経て方鉛鉱(六面体と八面体の集形)が結晶、再び蛍石の成長とほぼ同時に黄銅鉱と白い菱面体の苦灰石が姿を現わし、さらに蛍石が成長して十二面体と六面体の集形結晶となり、総ての鉱物を層状にとじ込めてしまった。もちろん鉱液と気泡も空隙と共に包有されており、子細に観察すると、方鉛鉱に接して気泡が見える。薄い隙間に浸み込んで筋状に見える部分も方鉛鉱であろう。


ブーランジェ鉱 蛍石

2021-01-12 | インクルージョン

ブーランジェ鉱 Boulangerite Pb5Sb4S11 硫塩鉱物 直方晶系・単斜晶系

Yaogangxian Mine, Chenzhou Prefecture, Hunan Province, China

 細い針状結晶を成すブーランジェ鉱を包有する蛍石は、多くが青味の強い独特の紫色を呈している。ブーランジェ鉱の量が少ない場合には色味も感じられないのだが、濃密に含む場合には透明度も低く色合いの暗い結晶となる。多くが蛍石の外にまで針状結晶が延びており結晶内外で景色を成している。特に結晶外部に残されている細い針状結晶は、水晶に伴うブーランジェ鉱と同様に脆く、危うい感じが魅力でもある。

 Yaogangxian鉱山は多様な金属鉱物を産出して有名で、特に蛍石とブーランジェ鉱の組み合わせは素敵だ。直線的針状だけでなく、髪の毛のように曲線を成している結晶、また比較的太い結晶を成す場合もある。小さな丸みのある白から淡い褐色を帯びた部分は雲母。熱水性の鉱床、スカルン、一部に高温環境の気成鉱床もあり、比較的濃密に水晶や蛍石の周囲に雲母が生じており、これらを母結晶として、ブーランジェ鉱と共に閉じ込められている標本も多い。


虹入り方解石

2021-01-11 | 虹の結晶

方解石 Calcite CaCO3 炭酸塩鉱物 三方晶系

Las Choyas, Mun. de Aldama, Chihuahua, Mexico

ジオードの内部に結晶した方解石から見つけた虹彩である。一つのジオード内に生じている数個の方解石の結晶に虹彩がみられ。結晶成長の過程で層状構造となったのであろう、光の反射と干渉を起こしている。この産地のジオードには、空隙に小さな水晶や針状の赤鉄鉱、方解石などが結晶していることがある。


虹入り柘榴石

2021-01-11 | 虹の結晶

灰鉄柘榴石 Andradite  Ca3Fe32(SiO4)3 珪酸塩鉱物 等軸晶系 

奈良県吉野郡天川村

柘榴石の結晶は、含まれているカルシウムと鉄の量が微妙に変化しながら成長するため、累帯構造を成すことがある。累帯構造の薄い層がミクロンオーダーであると、入射した光が干渉を起こして虹色を呈することになる。研磨によって結晶端部に薄い層状の虹色が鮮明に表れることがある。


虹入り水晶

2021-01-11 | 虹の結晶

水晶 Quartz SiO2 Nepal

 水晶内部には様々な他の鉱物が閉じ込められることがあり、インクルージョン、あるいは包有鉱物と呼ばれている。水晶の場合、インクルージョン鉱物の表面から写真のような自然のひずみによる虹彩が観察されることが多い。自然のひずみは、高温で成長した結晶が冷える際に、結晶内部の包有物に端を発して生じ、母結晶内に広がることがあり、時にはミクロン単位の隙間が生じ、反射と干渉で虹を呈する。