吉田伸夫『時間はどこから来て、なぜ流れるのか? 最新物理学が解く時空・宇宙・意識の「謎」』 ←講談社HP内の著書紹介ページ。試し読みもあります。
一体どういう本なのかというと、リンク先の「内容紹介」がまとまっていてそれ以上のことを付け足す必要を感じないので、ぜひそちらを見ていただきたいが、あえてそこから適当に組み立てるとこんな感じ。
人の感じている「時間の流れ」というものを相対性理論、宇宙論、熱力学、量子論という物理学的見地、さらには神経科学という生物学的見地を駆使して自然科学の視座からその正体に迫る本、です。
この手の本を今まで全く読んだことがなかったわけではないのに、この本はすとんと腑に落ちた。
この本には数式が出てこない。直感にうったえる図は沢山あります。そして、なるほど、へえ、と読み進められる筋道がすっきり通っていて大変読みやすい。
例えば第1章44p
「アインシュタインは、重力源の周りで時間・空間の尺度が場所ごとに異なることが、ほかの物体を引き寄せる重力の元だと考えたのである。(中略)重力源が動いたとき、(中略)重力が一瞬で空間を飛び越えるといった不合理が解消される。
(中略)場所によって時間の尺度が異なるのだから、宇宙全域に単一の時間が流れるのではなく、あらゆる場所に個別の時間が存在すると考えなければならない。」
こうなのだからそう考えなければならない、という論じ方に、カッコイイ!と思ってしまったのだよ。
第4章、エントロピーは増大するのに局所的に減少しているように見える現象が起きる理由、その現象の一例である生物の活動は、この宇宙のビッグバンの整然とした状態が崩れていく過程の一部であり、「ビッグバンから遠ざかる向き」に進行する不可逆変化なのである、とか。
そして最終章で人の意識の話に及ぶ。物理学が哲学に転じるのかと思いきやむしろ生物学の話になるのが面白かった。
この本の終わり方が実に潔いのだが、さすがにそのネタバレは止めておこう。すごく気持ちよかった!
ところで上掲の写真のマグカップは、ブルーバックスコーヒーなのだよ。ブルーバックスのエイプリルフールネタが
クラウドファンディングで実現してしまったマグカップだ。
モチーフは火星人だそうで、ブルーバックスシリーズの背表紙の一番上に描かれているお馴染みのものだ。1963年創刊以来、名前はまだない、んだそうだ。今後この名前が公募されるとすれば、人類が火星に降り立つときかそれともブルーバックスが傾くときか