苦楽園周辺ではありませんが、Googleマップを眺めて見つけたお家レストラン。阪神打出駅から東に5分ほど歩いたところにあります。
一喜(いっき)https://tabelog.com/hyogo/A2803/A280302/28000011/dtlrvwlst/B113934600/?lid=unpickup_review
住宅街にある一軒家を改造したレストラン。ドアを開けると普通の玄関。そこで靴をスリッパに履き替えて通された部屋は、おそらくリビングだった部屋で、そこに四人がけのテーブルが5席ほど。奥には個室もあるようで、小さなパーティーも開けるそうです。
いただいたお料理は、日替わりランチ(ライスグラタン)とミックスフライランチ。昔ながらのと謳っては今したが、とても上品な味付けで、ホタテのフライはとても上がり具合がよくおいしかったです。最後に出てきたデザートにあったミニフレンチトーストはおいしかったなぁ。
日替わりランチのメニューの予定がお知らせされていましたが、どの献立もおいしそうで、また週末に来てしまいそうです。職場からも近いから、誰か誘って来てみようかなぁ…。
その後、打出周辺を散歩しましたが、とても落ち着いた街で、苦楽園と比べるとお店はそんなに多くはありませんが、所々に気の利いたお店があって、週末も楽しめそうな街でありました。
その散歩の中、打出駅近くには打出の小槌町という地名があり、近くに芦屋川や夙川が流れていることもあって、
「ここは一寸法師が下った川があるんだよ。」
とほら話を始めると、最初は疑い深い目で見ていた妻も、最後は「へー。」と感心したようにうなずいていました。でも、車の中でiPhoneで調べると、打出の小槌の由来が民話として残っていることがわかり、すぐに嘘だとばれてしまいました。
(うちでのこづち)
とんとむかし、あしやの海に竜神がすんでおった。
竜神は、大そう大事にしている小槌という宝物を持っておった。
その小づちをふると、ねがいごとが、すべてかなうという宝物であった。
しかし、この小槌には一つこまったことがあった。
小槌をつかっているときに、かねの音がきこえてくると、それまでうちだしたものが、きえてなくなるというのである。
竜神は、そんなめんどうなものを持っているのがいやになった。
そこで、いろいろと考えたすえ、都にいき、朝廷にさし上げることにした。竜神は、人の姿になって、朝廷にいき、あつかい方をおしえて、海に帰っていった。
めずらしい小槌という宝物をもらって、朝廷は大喜びした。
だが、よくよく考えると、この小槌は、使いにくい。第一に、かねの音が聞こえるとなんでもきえるというのは、まことに困る。都は、寺や神社が多く、一日中、かねの音などなりひびいておる。
それに一度失敗すると、小槌は役に立たないというではないか。
「これは、困ったものをもらったものじゃ。」
そう、朝廷の人はつぶやいたそうな。
ちょうど、その時、あしやの長者が、手がらをたて、都にきておった。
小槌は、長者にほうびとしてわたされた。なんでもねがいごとがかなうという小槌をもらった長者は、喜びいさんで、国元あしやへ帰っていった。
長者が、大そうめずらしい宝物を持ち帰った話は、その日のうちに打出の村に知れわたった。
しまいには、打出村だけでなく、あしやの村人にも、小槌の話はつたわり、人々は長者の家をおとづれ、小槌を見たがった。
長者は、りっぱな、大きな屋敷にすんでいて、もともと大金持ちであった。だから、とくにほしいものもなく、もらった小槌を床の間のかざりにして、毎日ながめておった。
村人も、また小槌を見るだけでまんぞくしておったが、
「長者さまや。見せていただいた小槌は、りっぱじゃが、これをふってみせてくださらんことには、話にもなりますまいが。」
と、いいだした。
長者も、そうたのまれると、なんとのう、小槌を、ふってみたくなった。
そこで、村人にいうた。
「この小槌は、むずかしい小槌で、ふってみてもええが、かねの音が聞こえると、何もかもがきえてしまい、二度と小槌もつかえなくなってしまうそうじゃ。
それだけのかくごがいるのじゃ」
そういって、長者は小槌をふることにした。
その日、大人も子どもも、村じゅうの人が大ぜい、長者の家にあつまってきた。
どの人も、どの人も、むねをわくわくさせて、小槌がふられるのを待った。
とくいまんめんで、長者は、床の間の小槌をとり、人びとの前にさし出し、小槌に深く例をした。
見ていた人たちも、あわてて地面にすわり頭を下げた。
「今から、この小づちをふる。何がほしいかいうてみよ。」
長者の声はあたりにひびきわたった。
「黄金(こがね)のこばん。」
村人は、こえを合わせたかのように、そういうた。
「ようし、では、みんなに、黄金のこばんがあたるように、おねがいしてみよう。」
長者は、小鎚を、高くふり上げた。
「ここにおりますものたちに、黄金のこばんをあたえてくだされ。」
その声とともに、小槌は大きくふりおろされた。
出るわ出るわ。あっというまに、黄金のこばんは山のように積まれだした。
たくさんたくさんでてくる黄金のこばんは
「ちゃりん ちゃりん ちゃりん」と、にぎやかな音をたてはじめた。
そのとき、どこかの寺のかねが、あたりになりひびいた。
あっと、おどろき、寺のかねの音に気がついた長者は、小槌をふる手をあわててとめたが、すでにおそく、またもや、ちゃりんちゃりんと音をたてて、黄金のこばんは、きえていった。
人びとは、ぼうぜんと、それをみていた。かねの音がきこえると、ねがいごとがきえていく、わすれたわけではなかったが、と、気がついたのがおそかった。
さいごの一枚がきえたとき、
長者も村人も、小鎚を見て、
「いい夢を、みさせてもらった。」
と、いったそうな。
この小鎚は「打出の小槌」とよばれ、打出小槌町という町名として、今に残されている。
めでたい、えんぎのよい町名は、これからも長く残るだろう。
三好美佐子著
「あしやの民話」より
なんとも、お金が増えそうな郵便局