第五十一章 養徳(徳を養う)
道は之を 生 じ、徳は之を蓄う。
物は之を 形 し、勢は之を成す。
是を以て、万物は道を 尊 びて徳を 貴 ばずということ莫し。
道の 尊 きは徳の 貴 きなり。
夫れ、之に命ずること莫(な)くして、常に自ずから然り。
故に、道は之を 生 じ、徳は之を 畜(やしな) う。
之を長じ、之を育す。之を成し、之を熟す。之を養い、之
を覆う。
生じて有(たも)たず、為して恃(たの)まず、 長 じて宰せず。
是を玄徳と謂う。
万物は、道によって生じたものであり、徳によって生育せしめられたものである。万物が成長を遂げるには、種々の物質が加わらなければならないし、また、四囲の情勢によって、種々の影響を受けるものである。
風の吹くことも、雲の動くことも、河水の流れることも、日が照り、雨や、雪の降ることがあるのも、鳥や、虫の飛ぶことも、獣類の走ることも、草木の繁茂することも、いつまで変らずに行われるのは、道が、常に変らない徳をもって万物を護っているからである。
以上のように、万物にその所を得させている徳は幽玄であり、玄徳というべきである。