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『太陽の画家 フィンセント・ファン・ゴッホ』
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太陽の画家ゴッホについて、もう少し迫りたいと思います。ゴッホは、その生涯に数多くの自画像を描きました。そのなかでも、耳を繃帯した自画像は、痛々しく・・・・、その眼差しは、どこか虚ろに見えます。
「タンギー親父」や「郵便配達夫ルーラン」「子守歌」などの優しい眼差しの肖像画とは、別世界に思えます。共通しているのは、対象に忠実な画家ゴッホがいたということでしょうか。そして、画家ゴッホは、自らの精神異常をも超えてあったということでしょうか。
私は画家ゴッホが描いた穏やかな世界が好きです・・・・。
1888年2月。ゴッホは希望に満ちあふれてアルルの地を踏んだのですが、それが一年後、なんとみじめな心持ちになっていたのだろう。その一年に、人の10年20年に相当する絵を描いたゴッホです・・・・。その後、サン・レミの病院で、「糸杉」「オリーブ畑」などの絵を描き、一大傑作「糸杉と星の道」を描いたのです。
ゴッホにとって自画像とは、そのときどきの自分を描くことによって、かろうじて正気を取り戻そうということだったのだろうか。ゴッホの自画像の眼差しから目を逸らしたくなってしまうのは、私だけだろうか。
しかし、それら狂気とは裏腹に、描かれた絵は、存在することの確かさを、生きることの誠実さを訴えているようです
さかのぼって、アルル時代の、自然を相手にした、「花咲く果樹園」「アルルのはね橋」などの絵は、みずみずしい自然の生命が感じられ、うれしくなってしまう私です。
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・続きは次回に・・・・。