第四十四章 立戒(長久となるための立戒)
名と身と孰(いず)れか親しき。
身と貨と孰れか多なる。
得ると 亡 うと孰れか病(やま)しき。
甚だ愛すれば 必 ず大いに費やす。
多く蔵(おさ)むれば 必 ず厚く 亡(うしな) う。
足ることを知れば 辱 しめられず。
止まることを知れば殆(あや)うからず。
以て 長久 なるべし。
人は、皆強い競争心をもっておるために、人に負けたり、或は、人より劣っていたりすることには、心の平静を保っていることが難しいのである。
そのために無理な努力をして、健康を害うようなことがあっても、直ぐに止めるということができず、大病になって、身動きも自由にならないようになると、はじめて、自分の身命が、何よりも大切なことが解るのである。
いかなる名誉も、それは、他人が思ってくれることであって、他人の心に起こる現象に過ぎないのである。したがって、名誉は、自分の身にはなにもついていない。はなはだ不確かなものであって、真に我身に益があるとは言えないものである。
名誉や、財貨や、その他のことにしても、必要以外のものは望まずに満足をするということを知っていれば、失敗することなく、従って、辱めを受けるようなことはないのである。
要は、自分の偉いことを示そうという心を離れなければ、自分の本質はあり得ず、真の価値ある仕事も成し難いことをいうのである。