第四十首
しのぶれど 色に出でにけり わが恋は
物や思ふと 人の問ふまで
平兼盛
(?-990) 光孝天皇の玄孫。『袋草紙』には赤染衛門の父とあるが真偽は不明。三十六歌仙の一人。
部位 恋 出典 拾遺集
主題
隠せば隠すほど表情に表れてしまう悩ましい恋心
歌意
私の恋心は、誰にも知られまいと心に決め、耐え忍んできたが、とうとうこらえきれず顔に出てしまったのか。何か物思いがあるのですかと人が尋ねてくるほどに。
「誰かを恋していらっしゃるのですか」と 人があやしみたずねるほどまでに。
この歌は、村上天皇御代の『天徳歌合』の忍恋の題でよまれ、次の忠見の歌とつがえられた歌。ともに優れた歌で、勝負が決しがたく、判者実朝は天皇の御気色をうかがったところ、天皇も判を下すことなく、ひそかに兼盛 の歌を口ずさまれたので、勝とした旨、実朝の消息に見える。
『拾遺集』に三十八首。以後の勅撰集に八十三首。家集に『兼盛集』がある。
村上天皇(926年7月14日―967年7月5日)の御代は、平安文化の開花期ともいえる時期で、歌壇の庇護者としても有名です。